著者の所属・活動拠点の国は、オランダ、カナダです。
掲載誌:Meat and Muscle Biology
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的:天然腸と人工ケーシングの差を埋める
ソーセージの皮(ケーシング)には、羊や豚の腸をそのまま使う「天然ケーシング」が広く使われています。弾力や柔らかさ、かんだときの「パリッ」とした歯切れが好まれる一方、太さや長さがそろいにくく、洗浄・選別・塩漬けに手間がかかり、費用も高いという課題があります。
これに代わる方法として、牛の皮から取ったコラーゲンを使う「共押出し」があります。肉生地を押し出すのと同時に、その表面へ薄いコラーゲンの層をかぶせ、塩水などで固めて皮にする連続生産の技術です。ただし著者らによると、この方式の皮は、かみ応えや焼き直したときの状態で天然ケーシングに及ばない点が残っていました。
そこで研究チームは、あまり活用されていない豚の膀胱と腸に着目し、これらから作ったコラーゲンが共押出しケーシングの原料になりうるかを、概念実証(実現可能性を確かめる初期段階の検討)として調べました。
何を比べたか
比較したのは4種類の皮です。豚の膀胱だけから作ったコラーゲン、膀胱と腸を90対10で混ぜたコラーゲン、市販の牛皮コラーゲン、そして基準としての羊の天然ケーシングです。豚由来のコラーゲンは、膀胱や腸を細かく切り、アルカリと酸で膨潤させてから粉砕し、流動性のある分散液に仕上げました。著者らは、この工程は市販の牛皮コラーゲンの作り方とおおむね似ていると説明しています。
すべてのソーセージには同じ配合の豚肉生地を使いました。共押出しのソーセージは業務用設備で製造し、加熱調理後に冷蔵保存しました。試験は段階的に3つのフェーズで、別々の製造日に行われ、製造ごとの試行を一つの単位として扱っています。
評価は主に2点です。一つは、刃でソーセージを切断するときに必要な最大の力(せん断力)で、かみ切るときの硬さや歯ごたえの目安になります。もう一つは、家庭での調理を想定してフライパンで焼き直したときに、皮に水ぶくれ状のふくらみ(ブリスター)や破れがどの程度生じるかで、これは目視による定性的な評価です。
主な結果
せん断力には皮の種類による有意な差が認められました。統計モデルで調整した平均値は、羊の天然ケーシングが56.9ニュートンで最も高く、豚の膀胱コラーゲンが42.6ニュートン、膀胱と腸の混合コラーゲンが38.2ニュートン、牛皮コラーゲンが31.2ニュートンの順でした。
ただし、組み合わせごとに比べて統計的に有意だったのは、天然ケーシングが牛皮コラーゲンより高いという差だけでした。豚由来の2種類は数値としては両者の中間にありましたが、天然ケーシングとも牛皮コラーゲンとも有意な差はありませんでした。著者らは、豚由来の皮が天然ケーシングと市販の共押出しケーシングの範囲内のせん断力を示したと述べています。
焼き直しの観察では、牛皮コラーゲンの皮は表面の半分以上にふくらみが広がり、破れも多く見られました。一方、豚由来の2種類はふくらみが表面の25%未満にとどまり、破れも小さく局所的でした。これは目視による分類で統計解析は行われていませんが、豚由来の皮では焼き直し時のふくらみが少ない傾向がうかがえたと報告されています。
また、腸だけで作ったコラーゲン分散液は繊維質が強く、今回の条件では実用的に扱えませんでした。著者らは、膀胱は弾性繊維が比較的少ないため流動性のある分散液にしやすい可能性があると、既存の文献をもとに考察しています。ただし、こうした構造面の説明は今回の研究で直接調べたものではないとしています。
この研究が示すこと
この研究は、豚の膀胱コラーゲンを単独で、あるいは腸のコラーゲンと組み合わせて、共押出しケーシング用のゲルに加工できることを示しました。歯ごたえの指標では天然ケーシングと牛皮コラーゲンの中間に位置し、焼き直し時のふくらみも牛皮コラーゲンより少ない様子が観察されています。
一方で、これは試行回数の限られた初期段階の検討であり、評価はせん断力と目視観察が中心です。著者らは、配合の最適化に加え、より多くの物性測定や官能評価による検証が必要だとしています。それでも、利用が進んでいない豚の副産物を食品素材として生かす可能性を示した点に、この研究の意味があります。
原著論文の著者・所属:Patricia Suurs(Marel Further Processing B.V)、Henry van der Brand(Adaptation Physiology Group, Wageningen University and Research)、Shai Barbut(Department of Food Science, University of Guelph)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Patricia Suurs, Henry van der Brand, Shai Barbut. Collagen From Porcine Bladder and Intestine as Raw Materials for Next-Generation Coextruded Sausage Casings. Meat and Muscle Biology 2026-09-18. DOI: 10.22175/mmb.25625. 原著ライセンス:CC BY.