著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。

掲載誌:Frontiers in Sustainable Food Systems

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

雑草は「抜くべきもの」なのか

ハイトンネルとは、ビニールなどで覆った簡易な温室のような栽培施設です。論文によると、この中ではアブラムシ、アザミウマ、コナジラミ、ハダニといった小さな害虫が大きな問題になります。早期に見つけるのが難しいため、殺虫剤の散布が最も日常的な対策になっているといいます。著者らは、害虫の定着や増加をあらかじめ抑える方法が必要だと述べています。

一方、ハイトンネル内の雑草管理は多くの場合、手間のかかる手取り除草に頼っています。もし残しておく価値のある「役に立つ雑草」を見分けられれば、除草の労力を減らしながら害虫管理にも役立つかもしれません。研究チームはこの点に注目し、雑草がハイトンネル内の昆虫などの小動物(無脊椎動物)の集まりにどう影響するのか、害虫管理にどう関わり得るのかを調べました。対象には、米国のハイトンネルで最も多く栽培されているトマトを選びました。

農場での2年間の観察と、研究圃場での比較試験

研究は二つの部分から成ります。一つ目は、米国インディアナ州の15農場にあるハイトンネルを、2023年と2024年の5月から10月まで毎月訪問した観察調査です。トンネル内に1平方メートルの調査枠を設け、雑草が地面を覆う割合、雑草の種類と数を記録しました。あわせて、雑草の上にいる虫を目視で確認しました。トマトの小葉も採取して、付いている虫を調べました。虫は食べ方によって、植物を食べる「植食者」(多くの害虫を含む)、害虫を捕食したり寄生したりする「天敵」、送粉者、分解者などのグループに分けられました。

二つ目は、パデュー大学の研究圃場での比較試験です。トマトと一緒に雑草を残した「雑草あり」のトンネルと、雑草を毎週取り除いてトマトだけにした「対照」のトンネルを比べました。黄色の粘着トラップ、地面に埋めて歩く虫を捕らえる落とし穴トラップ、色付きの容器で花を訪れる虫を集めるトラップを使って、トンネル全体の虫を調べました。さらに、トマトの花や株、葉を直接観察して虫を数え、収穫量と出荷できる果実の割合も記録しました。

主な結果:雑草が多くてもトマトの害虫は増えていなかった

15農場の調査では、のべ2,043か所の調査枠を観察しました。雑草の覆う割合は農場によって大きく異なっていました。トマトの葉では22,742個体の虫が確認されましたが、雑草の覆う割合は、葉の上の植食者や天敵の密度に統計的に意味のある影響を与えていませんでした。主な害虫はコナジラミ、アブラムシ、ナミハダニで、どれが優勢かは農場ごとに違っていました。また、雑草の種類が多様な農場ほど、トマトの葉にいる虫の多様性も高いという関係が見られました。

雑草は合計8,403本が記録され、50種が確認されました。セイヨウタンポポ、タネツケバナの仲間、メヒシバ、カタバミの仲間は、ほとんどの調査地点で見られました。雑草の種類によって、すみつく植食者や天敵の量には違いがありました。例えば、よく見られる雑草の中では、ノゲシの仲間に植食者が多く、エノコログサの仲間に天敵が多い傾向がありました。雑草の上で見られた植食者の75%以上はアブラムシでした。送粉者は少なすぎて、統計的な分析はできませんでした。

研究圃場の試験では、トラップで集めた虫の全体的な構成に、雑草ありと対照の間で有意な差は見られませんでした。ただし、コナジラミやヨコバイ、ハナアブの成虫など、一部のグループは雑草ありのトンネルで多く捕まりました。トマトの株の上で直接数えた虫の総数は両者で同程度でしたが、虫の種類の構成は雑草の有無で異なっていました。植食者は対照のトンネルのトマトの方が多く、主な要因はアザミウマ、イモムシ類、イトカメムシ類でした。天敵の数には差がなく、アリは雑草ありのトンネルで多く見られました。

トマトの収穫量は1株あたり約9キログラムで、出荷できる果実の割合は約57%でした。どちらも雑草の有無で差はありませんでした。一方、カメムシによる果実の被害は、雑草ありのトンネルで18%、対照で10%でした。ただし、この差は統計的には有意とまでは言えない程度のものと報告されています。

この研究が示すこと

著者らは、ハイトンネル内の雑草はトマトの害虫の「供給源」というより、害虫を引き寄せて作物から遠ざける「吸収先」として働いている可能性があると考察しています。そして、雑草があるからといって、トマトの害虫リスクが必ずしも高まるわけではないと結論づけています。

同時に著者らは、研究圃場での試験が1シーズンのみで、トンネルの数も限られていたことを、重要な限界として挙げています。周囲の景観の影響を測定していないこと、雑草が植物の病原体を宿している可能性が残ることにも触れています。この研究は、雑草を一律に排除すべき存在としてではなく、種類ごとに利点と危険の両面を持つ植物として捉え直す手がかりを示したものといえます。

原著論文の著者・所属:Samantha A. Willden(Department of Entomology, Cornell University)、Laura L. Ingwell(Department of Entomology, Purdue University, West Lafayette, IN, United States)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Samantha A. Willden, Laura L. Ingwell. Weeds as beneficial sources of plant diversity in high tunnel tomato. Frontiers in Sustainable Food Systems 2026-09-18. DOI: 10.3389/fsufs.2026.1904933. 原著ライセンス:CC BY.