この研究は、イラクの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Exploration of Foods and Foodomics
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ヨーグルトの香りや味わいは、乳を発酵させる乳酸菌が作り出す乳酸や、揮発性の香気成分によって生まれます。著者らによれば、その中でもアセトアルデヒドはヨーグルトらしい風味を決める重要な成分で、量が足りないと風味がぼやけた印象になるとされています。
一方で、ビフィズス菌などの整腸作用を期待して加えられる菌(プロバイオティクス)を使って作った「バイオヨーグルト」は、従来の乳酸菌だけで作ったヨーグルトに比べて風味が穏やかになりやすいと論文は説明しています。そこで研究チームは、アセトアルデヒドのもとになるアミノ酸であるスレオニン(トレオニン)を牛乳に加えることで風味を高められるかを調べ、あわせて製品の性状や菌の生存数、官能評価への影響を確かめることを目的としました。
調べ方
著者らは牛乳を用い、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bb-12)、ラクトバチルス・アシドフィルス(La-5)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(ST)を等量混ぜたスターター(発酵の種菌)でバイオヨーグルトを作りました。牛乳100 mLあたりスレオニンを1、5、10 mg加えた3種類と、加えない対照区を用意し、pHが4.6前後になるまで発酵させたうえで、5℃前後の冷蔵で21日間保存しました。
保存中の1日目、7日目、14日目、21日目に、pHと酸度、ホエイ(乳清)の分離しやすさ、水分を保つ力を測定し、3種の菌それぞれの生菌数を培地上で数えています。香気成分や代謝産物は高速液体クロマトグラフィーで定量し、さらに18〜50歳の一般消費者60人に、味・香り・風味・食感・外観・総合的な好ましさを9段階で評価してもらいました。
報告された主な結果
論文の報告では、スレオニンの添加はpHや酸度、ホエイの分離、保水性といった理化学的な性質に統計的に意味のある違いをもたらしませんでした。pHは保存1日目の4.47〜4.51から21日目に4.00〜4.04へ下がり、添加区と対照区で同じような推移を示したとされています。
菌の生存数についても、添加の有無による有意な差はみられなかったと報告されています。1日目の生菌数はBb-12が8.55〜8.58、La-5が8.33〜8.34、STが8.53〜8.57 log CFU/gで、21日目にはそれぞれ7.01〜7.03、7.52〜7.56、7.82〜7.89 log CFU/gまで減少しましたが、著者らはこれをプロバイオティクス製品に推奨される水準の範囲内だと述べています。
はっきりした差が出たのは香気成分でした。保存1日目のアセトアルデヒドは、スレオニンを加えない対照区が38.23 µg/kgだったのに対し、添加区は42.12〜49.40 µg/kgとなり、最も高い値は100 mLあたり10 mg加えた区で得られています。同様にアセトイン(対照区22.50 µg/kg)は25.11〜29.02 µg/kg、ジアセチル(対照区2.55 µg/kg)は3.09〜3.97 µg/kgへと増え、添加量が多いほど差が大きくなったと報告されています。官能評価では、10 mgを加えた試料が味と風味で最も高い評点を得た一方、食感と外観の評点には差がみられなかったとされています。
この報告が示すこと
著者らの結論は、バイオヨーグルトにスレオニンを加えても理化学的な性質やプロバイオティクス菌の生残には悪影響を与えず、風味に関わる揮発性成分が増えて消費者の受容性が高まった、というものです。風味が穏やかになりやすいプロバイオティクス菌を使う場合に、原料の一部を工夫するだけで味わいを整えられる可能性を示した報告といえます。
著者:Alaa Kareem Niamah(Department of Food Science, College of Agriculture, University of Basrah, Basra City 61004, Iraq)、Shayma Thyab Gddoa Al‐Sahlany(Department of Food Science, College of Agriculture, University of Basrah, Basra City 61004, Iraq)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Alaa Kareem Niamah, Shayma Thyab Gddoa Al‐Sahlany. Enhancing the flavour of bio-yogurt by supplementation with various concentrations of threonine. Exploration of Foods and Foodomics 2026-09-24. DOI: 10.37349/eff.2026.1010191. 原著ライセンス:CC BY.