この研究は、スペインの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
大学に入学する頃の若者は、食品の購入や食事の準備を自分で決めるようになり、住まいや人間関係、学業、経済状況も大きく変わります。著者らは、この「成人形成期」に身についた食習慣が、のちの体重や体脂肪にかかわる可能性に注目しています。
食事の研究では、特定の食品や栄養素を一つずつ調べることが多くあります。しかし、実際の食品は組み合わせて食べられています。そこで、日ごろの食事全体の傾向を「食事パターン」としてとらえる方法があります。一方で、こうした食事パターンと、体格や体脂肪のさまざまな指標との関係を、年齢幅の狭い大学生集団で調べた研究は多くありません。
研究チームは、英国レスターのデ・モントフォート大学に通う、出身地域の多様な18〜22歳の学生を対象に、3つの食事パターンと、BMI、体脂肪率、内臓脂肪の目安となる指標との関連を調べました。
何をどのように調べたか
対象は、2015/2016学年度の2016年に評価を受けた学生111人です。約10年前に集められたデータを用いた横断研究で、ある一時点での食事と体の状態の関係を見ています。著者らは、現在の英国の大学生の実態を推定することではなく、この集団の中での関係を調べることを目的としています。
日ごろの食事は、英国の研究で使われてきた食物摂取頻度質問票を改変したもので調べました。この質問票には130を超える食品・飲料の項目があり、過去およそ4週間に何をどのくらいの頻度と量で食べたかを尋ねます。回答は15の食品グループにまとめられました。そのうえで主成分分析という統計手法を使い、同じ人がよく一緒に食べている食品の組み合わせから、3つの食事パターンを取り出しました。
1つ目の「植物性食品が多いパターン」は、豆類、ナッツ・種子類、野菜、穀類、果物が中心です。2つ目の「動物性食品のパターン」は、赤身肉・加工肉、鶏肉、魚介類、卵が中心で、乳製品も関わっています。3つ目の「高エネルギー・嗜好品のパターン」は、油脂、菓子などの嗜好的な食品、清涼飲料・エナジードリンク、アルコール飲料などが特徴です。著者らは、これらの名前はこの集団で一緒に食べられやすい食品を説明するための呼び名であり、食事の健康度を示す指標ではないと注意しています。
体については、看護師が身長を測り、体重と体組成は生体電気インピーダンス法(体に微弱な電流を流して体脂肪などを推定する方法)の機器で測りました。主な評価項目はBMI、体脂肪率、内臓脂肪指数の3つです。内臓脂肪指数は機器が算出する推定値で、CTやMRIで内臓脂肪を直接測った値と同じものではありません。
解析では、年齢、性別、出身地域に加えて総エネルギー摂取量も考慮しました。これは「食べる量の多さ」ではなく「食事の中身の組み合わせ」が体脂肪とどう関係するかを見るためです。3つのパターンと3つの指標の組み合わせによる計9通りの関連を事前に決めておき、多数の検定を行うことで偶然の結果が出やすくなる問題に対する補正も行いました。
主な結果
参加者の平均年齢は20.4歳で、70.3%が女性でした。BMIが25以上の人は全体の33.3%でした。一方、内臓脂肪指数は1から9の範囲に収まっており、機器のメーカーが高値とする13以上の人はいませんでした。
総エネルギー摂取量を考慮する前の段階で、9通りの関連はいずれも統計的に有意ではありませんでした。エネルギー摂取量を加えた主解析でも、多重検定の補正後に意味のある関連として残ったものはありませんでした。エネルギー摂取量を加えたときの推定値の変化も一方向ではなく、大きくなるものも小さくなるものもありました。
9通りのうち最も目立ったのは、動物性食品のパターンと内臓脂肪指数の関係です。このパターンが強い人ほど内臓脂肪指数が低い方向の推定値(標準化係数マイナス0.172)が得られました。ただし、95%信頼区間はゼロをまたいでおり(マイナス0.358〜0.014)、統計的に有意ではありませんでした。植物性食品が多いパターンでは3つの指標すべてで正の方向の推定値でしたが、ばらつきが大きく不確かでした。高エネルギー・嗜好品のパターンでは、推定値はほぼゼロでした。
3つのパターンを同時に解析に含めた場合や、内臓脂肪指数の分布の偏りを補正した場合、出身地域による違いを調べた場合、身体活動量を考慮した場合、影響の大きいデータを除いた場合でも、全体としての解釈は大きく変わりませんでした。
研究が示すこと
著者らは、総エネルギー摂取量を考慮すると、この集団では3つの食事パターンと体脂肪の指標との間に、はっきりした独立の関連は見いだされなかったと結論しています。ただし、今回のデータの精度では、より小さな関連があることまでは否定できないとしています。
また、この結果は、食事パターンと重なる部分の体脂肪の違いを、全体の食事量(エネルギー摂取量)がとらえている可能性と矛盾しないと述べています。一方で、エネルギー摂取量の方が体脂肪のより強い原因であることを示したわけではないとしています。著者らは、20歳前後の時点で食事と体脂肪の強い関係が見られないからといって、食事がのちの体の状態と無関係だということにはならない、とも指摘しています。
著者:Antonio Peña‐Fernández(Area of Legal and Forensic Medicine, Department of Surgery, Medical and Social Sciences, Faculty of Medicine and Health Sciences, University of Alcalá, Ctra. Madrid-Barcelona, Km. 33.6, 28871 Alcalá de Henares, Spain)、Tomás Cámara Pastor(Scientific Computation Research Institute (SCRIUR), University of La Rioja, 26006 Logroño, Spain)、María de los Ángeles Peña(Department of Biomedical Sciences, Faculty of Pharmacy, University of Alcalá, Crta. Madrid-Barcelona Km. 33.6, 28871 Alcalá de Henares, Spain)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Antonio Peña‐Fernández, Tomás Cámara Pastor, María de los Ángeles Peña. Empirically Derived Whole-Diet Patterns and Multidimensional Adiposity in Emerging Adulthood: A Cross-Sectional Study of Geographically Diverse Students at a UK University. Nutrients 2026-10-10. DOI: 10.3390/nu18203320. 原著ライセンス:CC BY.