著者の所属・活動拠点の国は、サウジアラビアです。

掲載誌:Frontiers in Sustainable Food Systems

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ソルガム(モロコシ)はグルテンを含まない穀物です。乾燥に強く、気候の厳しい地域でも育てやすいため、持続可能な食料源として注目されています。一方で、ソルガム粉は生地にまとまりにくく、タンニンのような「抗栄養因子」も含みます。抗栄養因子とは、ミネラルなどの栄養素の利用を妨げる成分のことです。こうした性質が、食品への利用を広げるうえで課題になってきました。

この研究で著者らは、穀粒を短時間マイクロ波で加熱し、その後に伝統的な発酵と加熱調理を組み合わせると、ソルガム粉の栄養面と加工面の性質がどう変わるかを調べました。論文によると、マイクロ波と発酵の組み合わせはこれまで主に液状の発酵食品で調べられており、粉製品での知見は不足していました。

何をどう調べたか

研究チームは、ソルガムの穀粒を家庭用電子レンジで500ワット、15秒・30秒・45秒の3条件で加熱しました。加熱直後の穀粒表面の温度は、もとの26.4℃から、それぞれ約46℃、61℃、73℃に上がったと報告されています。

加熱した穀粒と加熱していない穀粒は、どちらも粉にしました。その一部を、前回の発酵生地を種にして37℃で12時間、pHが4.0に下がるまで自然発酵させました。さらに沸騰水浴で20分かき混ぜながら加熱し、かゆ状にしました。論文ではこの発酵と加熱調理をまとめて「加工」として扱っています。

測定した項目は次のとおりです。栄養面では、抗栄養因子として扱ったタンニンとポリフェノールの量を測りました。また、試験管内でタンパク質消化酵素ペプシンを作用させ、どれだけのタンパク質が消化されるかの割合(試験管内タンパク質消化率)を調べました。亜鉛と鉄については、薄い塩酸に溶け出す割合を「利用されやすさ」の目安としました。これは体内での吸収そのものではなく、試験管内での指標です。加工面では、粉を水と加熱したときの粘りの変化、冷えて固まったゲルの硬さなどの食感、水を吸ってふくらむ力(膨潤力)を測りました。最後に、多くの測定結果をまとめて比較する多変量解析を行いました。

主な結果

タンニンは、加工前の生のソルガムで1グラムあたり12.8ミリグラムでした。マイクロ波加熱だけでも、15秒で5.4、30秒と45秒で3.1ミリグラムに減りました。マイクロ波なしで加工した場合は8.4ミリグラムでした。45秒のマイクロ波加熱と加工を組み合わせた場合は1.7ミリグラムまで下がりました。ポリフェノールも、生の9.64ミリグラムから、加熱時間が長いほど段階的に減りました。30秒または45秒の加熱後に加工した試料が最も低い値でした。

試験管内タンパク質消化率は、生の試料で16.7%でした。マイクロ波加熱のみの条件では30秒の17.7%が最も高く、マイクロ波なしで加工すると20.1%でした。45秒のマイクロ波加熱の後に加工した試料は20.2%でした。一方、15秒・30秒の加熱後に加工した試料は、マイクロ波なしで加工した試料より低い値でした。

亜鉛が溶け出す割合は、生の19.7%から、15秒のマイクロ波加熱だけで21.6%に上がりました。ただし、より長い加熱や、マイクロ波加熱と加工の組み合わせではかえって下がる場合がありました。鉄(生で55.6%)は、どの処理でも有意な変化が見られませんでした。

加工面では、マイクロ波加熱によって、粉を加熱したときの最大の粘りや最終的な粘りなどが、加工の有無にかかわらず高くなりました。ゲルの硬さなどの食感や膨潤力も処理によって変わりました。膨潤力は、45秒の加熱後に加工した試料で最も高くなりました。多変量解析の結果から、著者らは「45秒のマイクロ波加熱の後に発酵・加熱調理を行う条件」が、栄養面と機能面の両方を改善するうえで最も有望だと結論づけています。

この研究が示すこと

この研究は、家庭用電子レンジによる数十秒の加熱という身近な前処理を発酵・加熱調理と組み合わせることで、ソルガム粉の抗栄養因子を減らし、試験管内でのタンパク質の消化されやすさや粉の性質を変えられる可能性を示しました。ただし、効果は成分によって異なりました。亜鉛では処理条件によって割合が下がる場合があり、鉄では変化が見られませんでした。著者らは、この組み合わせが家庭での食品加工法として検討に値すると述べる一方、フィチン酸などほかの抗栄養因子や、最終製品の風味・食味への影響は今後の評価が必要だとしています。

原著論文の著者・所属:Mohammed Saeed Alkaltham(Department of Food Science and Nutrition, College of Food and Agricultural Sciences, King Saud University)、Mohamed A. Ibraheem(Department of Food Science and Nutrition, College of Food and Agricultural Sciences, King Saud University)、Akram A. Qasem(Department of Food Science and Nutrition, College of Food and Agricultural Sciences, King Saud University)、Amro B. Hassan(Department of Food Science and Nutrition, College of Food and Agricultural Sciences, King Saud University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mohammed Saeed Alkaltham, Mohamed A. Ibraheem, Akram A. Qasem, et al. Effects of microwave pretreatment combined with fermentation and cooking on protein digestibility, mineral bioavailability, and functional properties of sorghum flour. Frontiers in Sustainable Food Systems 2026-08-20. DOI: 10.3389/fsufs.2026.1911549. 原著ライセンス:CC BY.