著者の所属・活動拠点の国は、コロンビアです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

料理用バナナの一種であるプランテンと、サツマイモは、熱帯で広く栽培されている作物です。しかし、どちらも傷みやすいという課題があります。プランテンは収穫後も熟成が進む果実で、サツマイモは約70%と水分が多いため、保管や輸送の途中で大きな損失が出やすいとされています。乾燥させて粉にすれば日持ちが良くなり、食品原料としての使い道も広がります。どちらも本来グルテンを含まないため、小麦粉の代わりとなる原料としても関心を集めています。

研究チームは、蒸してから冷ます工程に着目しました。デンプンは加熱されると糊状になり(糊化)、冷えると一部が再び規則正しく並び直します(老化)。この変化によって、小腸で消化されにくい「レジスタントスターチ」が増え、粉の加工特性も変わるのではないかという仮説を立てました。そのうえで、蒸してから粉にした未熟プランテン粉(品種Hartón)とオレンジ果肉のサツマイモ粉(品種Agrosavia Aurora)について、成分、加工に関わる性質、熱に対するふるまい、デンプンの消化されやすさを詳しく調べました。蒸した粉についての情報はこれまで限られていた、と著者らは述べています。

粉の作り方と調べた項目

原料は洗浄して皮をむき、厚さ1cmの輪切りにしました。変色を防ぐためアスコルビン酸溶液に浸したあと、4分間蒸し、室温で約1時間かけて冷ましました。その後、60℃の乾燥機で約6時間乾燥し、粒の大きさが150マイクロメートル未満になるまで粉砕してふるいにかけました。

この二つの粉について、研究チームは幅広い項目を測定しました。タンパク質・脂質・繊維・灰分(ミネラル分の目安)・炭水化物の量、ミネラルとアミノ酸の構成、色、総フェノール含量、抗酸化活性、β-カロテンの量を調べました。総フェノール含量とは、ポリフェノールなどを含む「フェノール化合物」と呼ばれる植物成分の総量を、試薬との発色反応を使って没食子酸という物質に換算して表したものです。加工に関わる性質としては、水や油を吸う力、加熱したときの膨らみやすさ、粉の流れやすさを測りました。さらに、水と一緒に加熱・冷却したときの粘り方の変化(糊化特性)や熱的性質、赤外分光による分子構造も分析しました。デンプンの消化性は、試験管内で消化酵素を作用させ、すぐ消化されるデンプン、ゆっくり消化されるデンプン、消化されにくいレジスタントスターチの割合として評価しました。

主な結果:対照的な二つの粉

サツマイモ粉は、プランテン粉に比べてタンパク質(3.82%)、脂質(0.22%)、粗繊維(2.92%)、灰分(3.40%)が多い結果でした。総フェノール含量はサツマイモ粉が100gあたり180.45mg(没食子酸換算)、プランテン粉が33.60mgでした。抗酸化活性の指標であるDPPHラジカル消去率も、サツマイモ粉58.22%、プランテン粉14.37%と大きな差がありました。β-カロテンはサツマイモ粉が100gあたり3.85mgで、プランテン粉の0.97mgを上回りました。これはサツマイモ粉のはっきりしたオレンジ色とも対応しています。水や油を吸う力もサツマイモ粉のほうが高い結果でした。

一方、プランテン粉は炭水化物(94.30%)とデンプン(76%)が多いのが特徴でした。高い温度でよく膨らみ、加熱時に示す最大の粘りや、冷却後の最終的な粘りもサツマイモ粉より高くなりました。著者らは、蒸す工程によって、どちらの粉でも未加工の粉と比べて糊化が始まる温度が下がり、粘りの出方も変わったと報告しています。粉の扱いやすさについては、サツマイモ粉のほうが粒同士がくっつきやすく、流れにくい性質を示しました。

デンプンの消化性では、両方の粉でレジスタントスターチが最も多い区分でした。その割合はプランテン粉で47.05%、サツマイモ粉で42.07%です。プランテン粉はすぐ消化されるデンプンも37.18%と多く、サツマイモ粉はゆっくり消化されるデンプンが32.85%と、プランテン粉の15.76%の約2倍でした。著者らは、加熱処理を受けた粉についての既存の報告と比べて、今回の粉のレジスタントスターチが多かった点に注目しています。その理由として、蒸したあとに冷ます工程で老化が進んだ可能性を挙げています。ただし、この仕組みを確かめるにはさらに構造を調べる必要があるとも述べています。

このほか、両方の粉とも水分は9%未満で、微生物の増えやすさに関わる水分活性は約0.43〜0.50と低い値でした。pHは5.6〜5.9の弱酸性でした。

研究が示すこと

この研究は、同じ蒸す工程で作った粉でも、原料によって性質が大きく異なることを示しました。サツマイモ粉は栄養成分や抗酸化に関わる成分が多く、プランテン粉はデンプンが豊富で粘りを出しやすいという特徴があります。著者らは、二つの粉が栄養面と機能面で互いを補い合う性質を持つと結論づけています。そして、グルテンを含まない食品原料として使える可能性や、傷みやすい熱帯作物を有効に活用する道を示すものと位置づけています。

原著論文の著者・所属:Carmen Elena Pérez-Cervera(Agro-Industrial Engineering Program, Pontificia Bolivariana University, Monteria 230002, Colombia)、Claudia Denise De Paula(Department of Food Engineering, University of Córdoba, Monteria 230002, Colombia)、Ricardo David Andrade-Pizarro(Department of Food Engineering, University of Córdoba, Monteria 230002, Colombia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Carmen Elena Pérez-Cervera, Claudia Denise De Paula, Ricardo David Andrade-Pizarro. Physicochemical, Functional, Pasting, and Thermal Properties and Digestibility of Precooked Unripe Plantain (Musa paradisiaca L.) and Sweet Potato (Ipomoea batatas) Flours. Foods 2026-10-10. DOI: 10.3390/foods15203593. 原著ライセンス:CC BY.