著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。

掲載誌:PLoS ONE

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ホウレンソウなどの濃い緑色の葉物野菜には、ポリフェノール(フェノール類)やフラボノイドといった植物由来の成分が多く含まれています。ただ、野菜の多くは加熱して食べられます。調理によってこれらの成分がどれだけ残り、どれだけ減るのかについて、これまでの研究結果は野菜の種類や実験条件によってまちまちでした。

研究チームは、トルコでよく食べられるイラクサ、ホウレンソウ、スイバ(ソレル)、フダンソウ(スイスチャード)、スベリヒユの5種類に注目しました。家庭で一般的な4つの加熱調理法を同じ条件で比べ、フェノール類の量と抗酸化能がどう変わるかを調べています。

何をどのように調べたか

野菜はイスタンブールの地元市場で購入し、すぐに洗浄して100gずつに分けました。調理法は4種類です。蒸し調理は5分間、電子レンジ調理は少量の水を加えて600Wで3分間としました。ゆで調理は2通りで、野菜100gに対し50mLの少量の水でゆでる方法と、250mLの多量の水でゆでる方法を、いずれも5分間行いました。

調理後の試料は乾燥させ、乾燥重量あたりで成分を比べました。測定したのは、フェノール類の総量、フェノール酸、フラボノイド、タンニンに関連するフェノール化合物です。抗酸化能は、反応の仕組みが異なる3種類の試験(DPPH、ABTS、CUPRAC)で評価しました。著者らは、これらの比色法による測定値が厳密に分離された化合物群ではなく、測定法ごとに定義された「目安となる分画」であると断っています。

主な結果

生の状態では、フェノール類の総量と抗酸化能はスイバが最も高く、フラボノイドはホウレンソウが最も多い結果でした。全体として加熱はフェノール類を減らす傾向にありましたが、統計的に意味のある差が確認されたのはスイバだけでした。数値上の減少が最も大きかったのは多量の水でゆでた場合で、野菜によって0.7%から74.1%の幅がありました。

フラボノイドへの影響も野菜によって異なりました。フダンソウではどの調理法でも34〜38%の有意な減少が見られた一方、スベリヒユではおおむね保たれていました。ホウレンソウでは蒸し調理と多量の水でのゆで調理で18〜19%減りましたが、電子レンジ調理では生と有意な差がありませんでした。

抗酸化能の反応も一様ではありませんでした。スベリヒユでは蒸し調理によってDPPH試験の値が60.2%有意に増えています。ABTS試験では加熱でおおむね値が下がり、イラクサ、ホウレンソウ、フダンソウで有意な低下が見られました。数値上の損失は多量の水でゆでた場合に最も大きく(46〜77%)、蒸し調理と電子レンジ調理では低下が比較的小さくなりました。

CUPRAC試験でも、イラクサ、ホウレンソウ、フダンソウでは多くの調理法で有意な低下が見られました。ただし、どの調理法で損失が最大になるかは野菜によって異なりました。スイバ(−59.2%)とホウレンソウ(−54.9%)では多量の水でゆでた場合が最大だった一方、イラクサ(−62%)とフダンソウ(−57%)では電子レンジ調理での損失が最も大きく、これらは統計的に有意でした。

生の野菜では、フェノール類の総量と3種類の抗酸化試験の値の間に非常に強い相関(相関係数0.911〜0.920)が見られましたが、多量の水でゆでた場合にはこの相関が弱まりました。

なお、数値上は大きな増減でも、ばらつきが大きく統計的には有意でなかった項目も多くあります。また著者らは、ゆで汁を分析していないため、ゆでたときの減少が熱による分解なのか、成分が水に溶け出しただけなのかは区別できないと述べています。ゆで汁ごと食べるスープや煮込み料理では、成分は失われたのではなく汁に移っている可能性があるとしています。

研究が示すこと

著者らは、評価した調理法の中では蒸し調理と電子レンジ調理がフェノール類と抗酸化能をおおむねよく保ち、多量の水でゆでる方法では多くの指標で減少が大きかったとまとめています。一方で、電子レンジ調理で抗酸化能の低下が最も大きかった野菜もあるなど、加熱の影響は野菜の種類によって大きく異なりました。どの調理法が適しているかは、野菜ごと、そして水の量のような調理条件ごとに考える必要があることを示す研究といえます。

著者:Bahar Yalçın(Fenerbahçe University)、Muazzez Garıpağaoğlu(Fenerbahçe University)、Şeyda Karaman Ersoy(Fenerbahçe University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Bahar Yalçın, Muazzez Garıpağaoğlu, Şeyda Karaman Ersoy. Impact of traditional cooking methods on total phenolics, flavonoids, and antioxidant capacities of dark green leafy vegetables. PLoS ONE 2026-09-17. DOI: 10.1371/journal.pone.0358478. 原著ライセンス:CC BY.