著者の所属・活動拠点の国は、カナダ、フランスです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ソルガム(モロコシ)は、世界で広く栽培される穀物の一つです。グルテンを含まない穀物として、また植物由来の機能性成分を含む穀物として関心を集めています。ただし、温帯地域での利用はまだ限られています。この研究で研究チームが扱ったのは、オランダの育種計画で寒い気候向けに開発された4つの遺伝的系統(HD7、HD19、HD100、HD101)です。HD100とHD101は黒い粒、HD7は茶色の粒、HD19は白い粒をもちます。

ソルガムは生で食べることがほとんどありません。そのため、調理によって成分がどう変わるかを知ることが大切だと著者らは述べています。ところが、これらの寒冷地向け系統について、加熱調理がポリフェノール類や色素成分、抗酸化の働きにどう影響するかは、ほとんど分かっていませんでした。研究チームはこの点を明らかにすることを目的としました。

何を調べたか

研究チームは、各系統の穀粒を3種類に分けて調べました。粒をそのまま使う「全粒」、外側の層を削り取った「搗精粒(とうせいりゅう)」、そして削り取った外皮部分である「ふすま」です。ふすまは粒の重さのおよそ15%にあたります。

それぞれを100℃の湯で30分間加熱し、加熱前と比べました。測定した項目は次のとおりです。植物に含まれる抗酸化成分の総称であるフェノール化合物の総量。赤や黒の色素であるアントシアニン類の総量。試験管内の化学反応で測る抗酸化力(ABTS法とDPPH法)。加熱後の試料については、ヒト腸由来の培養細胞を使い、細胞の中で酸化をどの程度抑えるか(細胞内抗酸化活性)も調べました。さらに、色素の種類を分析装置(HPLC)で推定しました。

主な結果

黒い粒のHD100とHD101は、フェノール化合物とアントシアニン類の量がもっとも多い結果でした。とくに加熱前のHD100のふすまでは、フェノール化合物の総量が乾燥重量1グラムあたりフェルラ酸換算で39.49ミリグラムに達しました。どの系統でも、搗精粒の含有量は低い値でした。このことから、こうした成分は主に粒の外側の層に集まっていると著者らは考察しています。

加熱の影響は、系統と部位によって異なりました。白い粒のHD19のふすまでは、加熱後に取り出せるフェノール化合物の量が約64%増えました。一方、搗精粒ではどの系統でも減少し、減り方は最大で約70%に及びました。アントシアニン類の総量は、多くの試料で加熱後に減少しました。減少幅はHD100のふすまで最大39%、全粒で最大30%でした。ただし、加熱でほとんど変化しなかった試料や、搗精粒で増加した試料もありました。

抗酸化力は測定法によって結果が分かれました。DPPH法では、加熱の前後でほとんど変わりませんでした。ABTS法では多くの試料で低下し、HD100のふすまでは約28%下がりました。色素の分析では、主なものがルテオリニジンとアピゲニニジンと推定されました。これらは、ソルガムに特徴的な、比較的熱に強いとされる色素です。量はふすまでもっとも多く、加熱後はおおむね減少しました。

細胞を使った試験では、加熱後のHD19の搗精粒を高い濃度で与えたときに、もっとも高い値が得られました。もっとも低かったのは、HD100の搗精粒を低い濃度で与えたときです。著者らは、フェノール化合物を多く含む試料ほど細胞内での抗酸化活性が高いとは限らないと述べています。細胞内での働きには、成分の量だけでなく、細胞への取り込まれやすさなども関わると考えられるためです。

研究が示すこと

この研究は、寒冷地向けソルガムの成分が、加熱調理によって一様に減るわけでも増えるわけでもないことを示しました。変化の方向や大きさは、系統と粒のどの部位を使うかによって変わります。研究チームは、生の状態だけで評価せず、実際に食べる形に近い調理後の状態で評価することが重要だと指摘しています。

なお、この研究は試験管内と培養細胞での評価にとどまっています。体内での吸収や、健康への直接の効果は調べていないことを、著者らは限界として明記しています。そのうえで研究チームは、系統と加工方法の選び方が成分の残り方を大きく左右することを示し、温帯地域向けのソルガム食品づくりに役立つ基礎情報になるとしています。

著者:Francis Ala Adjetey(Department of Food and Human Nutritional Sciences, University of Manitoba, Winnipeg, MB R3T 2N2, Canada)、Daniela D. Herrera‐Balandrano(Department of Food and Human Nutritional Sciences, University of Manitoba, Winnipeg, MB R3T 2N2, Canada)、Daniel Zogona(Department of Food and Human Nutritional Sciences, University of Manitoba, Winnipeg, MB R3T 2N2, Canada)、Hamza Mameri(Ingénierie des Agropolymères et Technologies Émergentes (IATE), Université de Montpellier, INRAE, L’Institut Agro Montpellier, F-34060 Montpellier, France)、Trust Beta(Department of Food and Human Nutritional Sciences, University of Manitoba, Winnipeg, MB R3T 2N2, Canada)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Francis Ala Adjetey, Daniela D. Herrera‐Balandrano, Daniel Zogona, et al. Impact of Cooking on the Antioxidant and Functional Properties of Milling Fractions from Cold-Adapted Dutch Sorghum. Foods 2026-10-16. DOI: 10.3390/foods15203672. 原著ライセンス:CC BY.