著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:BMC Musculoskeletal Disorders
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的
腰椎椎間板ヘルニアは、背骨の骨と骨の間でクッションの役割をする椎間板の一部が飛び出し、神経を圧迫するなどして腰痛を起こす病気です。生活の質を大きく損なうことが知られています。この病気の患者の一部には慢性的な便秘もみられますが、そうした患者に絞って、便秘の特徴と腰痛の強さとの関係を詳しく調べた研究は十分ではありませんでした。
論文によると、腰の下部から仙骨にかけての神経は排便の反射や大腸の動きにも関わっています。ヘルニアが起こりやすい部位はこの神経の通り道に近いため、ヘルニアと便秘の結びつきには生理学的な背景が考えられます。ただし、臨床的な裏付けはまだ限られています。研究チームは、腰椎椎間板ヘルニアと慢性便秘の両方がある患者を対象に、便秘の重さ、便の硬さ、便秘の期間、生活習慣、体格指数(BMI)、オピオイド系鎮痛薬の使用が、腰痛の強さとどう関連するかを数量的に調べることを目的としました。
どのように調べたか
研究は、病院を受診した患者のある時点のデータを分析する横断研究として行われました。CTやMRIで腰椎椎間板ヘルニアと診断され、国際的な診断基準(ローマIV基準)で慢性便秘と判定された18〜70歳の患者200人が分析対象です。
便秘の重さは、排便の回数、いきみの困難さ、残便感などを点数化するウェクスナー便秘スコアで評価しました。合計は0〜30点で、点数が高いほど便秘が重いことを示します。便の硬さは、便の形を7段階に分けるブリストル便形状スケールで評価し、数字が小さいほど硬い便です。腰痛の強さは、10センチの線の上に過去1週間の平均的な痛みを患者自身が印をつける方法(VAS、0〜10点)で測りました。腰痛による日常生活の支障の程度も別の指標で評価しています。
あわせて、1日の飲水量、食物繊維の摂取量、身体活動時間を質問票で尋ね、鎮痛薬の使用状況も記録しました。分析では、各要因と腰痛の強さとの関連をまず個別に調べ、そのうえで便秘スコア、便の硬さ、食物繊維、飲水量、BMI、便秘の期間、オピオイド使用を同時に考慮する統計モデル(重回帰分析)で、それぞれが独立して腰痛の強さと関連しているかを検討しました。
主な結果
対象者の平均年齢は約49歳、腰痛の強さの平均は約6.2点でした。全体の72.5%がウェクスナースコア10点超の中等度から重度の便秘に分類されました。
便秘が中等度から重度のグループは、軽度のグループに比べて腰痛が強く、日常生活の支障も大きい結果でした。また、便秘の期間が長く、BMIが高く、便が硬く、飲水量・食物繊維の摂取量・身体活動量が少ない傾向がありました。個別の分析では、便秘スコアと腰痛の強さとの相関は強く(相関係数0.861)、生活上の支障の程度とも正の相関を示しました。
複数の要因を同時に考慮した分析では、便秘スコアが高いことが腰痛の強さと最も強く関連していました。便が硬いこと、食物繊維の摂取量が少ないこと、飲水量が少ないことも、それぞれ独立して腰痛の強さと関連していました。一方、BMI、便秘の期間、オピオイド使用は、他の要因を考慮すると統計的に意味のある関連を示しませんでした。このモデルは、腰痛の強さのばらつきの約80%を説明していたと報告されています。
オピオイドの使用の有無や、ヘルニアが一か所か複数か所かで分けた分析では、便秘スコアと腰痛との関連の強さにはっきりした違いは認められませんでした。ただし、オピオイド使用者は12人、複数か所のヘルニアの患者は24人と少なく、著者らはこれらを探索的な分析と位置づけています。
この研究が示すこと
この研究は、腰椎椎間板ヘルニアと慢性便秘を併せ持つ患者では、便秘の症状が重いほど腰痛も強いという関連があることを示しました。著者らは、こうした患者の痛みを評価する際に、腸の症状や関連する生活習慣にも目を向けることに臨床的な意味がありうると述べています。
一方で、ある時点のデータを分析した研究のため、便秘が腰痛を悪化させるのか、腰痛のために活動量や食事・水分の摂り方が変わり便秘が悪化するのかといった因果関係や順序は分かりません。腸と背骨を結ぶ仕組みとして炎症や腸内細菌の関与も考えられていますが、今回の研究ではそれらを測定しておらず、推測の段階にとどまります。食事や飲水量は質問票による推定であり、論文は、食物繊維や水分を増やせば腰痛が軽くなる証拠として解釈すべきではないと明記しています。単一施設の研究で対象者数も限られている点も、結果を読む際の前提となります。
原著論文の著者・所属:Shuo Duan(Suzhou Hospital of Traditional Chinese Medicine, Suzhou, China)、Junyi You(Suzhou Hospital of Traditional Chinese Medicine, Suzhou, China)、Siyan Xu(Heilongjiang University of Chinese Medicine, Harbin, China)、Bo Xu(Suzhou Hospital of Traditional Chinese Medicine, Suzhou, China)、Xiaoqing Shi(Suzhou Hospital of Traditional Chinese Medicine, Suzhou, China)、Xiaofeng Shen(Suzhou Hospital of Traditional Chinese Medicine, Suzhou, China)、Yuwei Li(Suzhou Hospital of Traditional Chinese Medicine, Suzhou, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Shuo Duan, Junyi You, Siyan Xu, et al. Association of constipation-related characteristics with low back pain severity in patients with lumbar disc herniation and chronic constipation: a cross-sectional study. BMC Musculoskeletal Disorders 2026-11-03. DOI: 10.1186/s12891-026-10606-5. 原著ライセンス:CC BY.