著者の所属・活動拠点の国は、イランです。

掲載誌:Scientific Reports

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

母乳育児には母子双方に多くの利点があると報告されていますが、世界的に見ると生後6か月まで母乳だけで育てられている乳児の割合は高くありません。母親が母乳育児を選び続けるかどうかには、年齢や教育、就労状況などさまざまな要因が関わり、その中でも「授乳の自己効力感」が重要で、働きかけによって変えうる要因として注目されています。授乳の自己効力感とは、母親が「自分は授乳をうまくやれる」と感じている度合いのことです。

これまでの研究では、授乳に関する知識、授乳への態度、産後の母親の機能状態が、それぞれ自己効力感と関連することが示されてきました。ここでいう母親の機能状態とは、乳児の世話、自分自身のケア、子どもとの絆、気持ちの安定、周囲からの支え、母親としての役割への適応などを含む、産後の生活をどれだけうまく営めているかを指します。ただし、これらの要因は多くの場合ばらばらに調べられてきました。研究チームは、この三つを一つの分析モデルに同時に入れ、どれが自己効力感とより強く結びついているのかを明らかにすることを目指しました。

調査の方法

研究チームはイランのサブゼバール市で、生後6か月未満の乳児に授乳している母親を対象に、ある一時点の状態を調べる横断研究を行いました。2024年7月から12月にかけて、無作為に選ばれた3か所の保健センターで、定期の母子保健サービスに訪れた母親に協力を依頼し、最終的に245人が回答しました。対象は単胎で正期産の母親で、診療記録上で産後うつと診断されている人や、授乳に支障のある乳房の問題を抱える人などは除外されました。

母親たちは、背景情報に加え、授乳への態度、授乳に関する知識、母親の機能状態、授乳の自己効力感をそれぞれ測る質問票に自分で記入しました。研究チームは、各要因と自己効力感の関係を一つずつ調べたうえで、複数の要因を同時に考慮する分析を行い、さらに過去の授乳経験の有無も考慮に入れた最終モデルで検討しました。

主な結果

参加した母親の授乳に関する知識、授乳への態度、授乳の自己効力感はおおむね中程度で、母親の機能状態は比較的良好でした。また、約7割の母親が母乳のみで育てていると回答しました。

要因を一つずつ見た分析では、知識、態度、機能状態のいずれも自己効力感と正の関連を示し、それぞれ単独で自己効力感の得点のばらつきの17%、30.5%、9.5%を説明していました。しかし三つを同時に分析すると、合わせて説明できる割合は31.5%で、知識の影響が最も強く表れました。

過去の授乳経験も考慮した最終モデルでは、説明できる割合は32.4%となり、自己効力感と統計的に有意な関連を保っていたのは知識と過去の授乳経験でした。知識は引き続き最も強い要因でした。一方、授乳への態度と母親の機能状態は、単独では自己効力感と関連していたものの、最終モデルではその関連が統計的に有意ではなくなったと著者らは報告しています。

研究が示すこと

この研究は、授乳への自信と結びつく複数の要因を同時に比べたとき、授乳に関する知識と、過去に授乳した経験が特に目立つことを示しました。著者らは、知識を深める支援や、経験を通じて母親が自信を育めるよう支えることが、授乳の自己効力感を高めるうえで意味を持ちうると述べています。

ただし、一時点の調査であるため、これらは関連を示したもので、原因と結果の関係までは確かめられていません。また、各センター内では来所した母親を順に募集しており、対象も一つの地域の比較的似通った母親に限られていることから、結果の一般化には注意が必要だと著者らは指摘しています。

原著論文の著者・所属:Azita Fathnezhad-Kazemi(Department of Midwifery, Islamic Azad University, TaMS.C., Tabriz, Iran)、Anvar-Sadat Nayebinia(Department of Midwifery, Islamic Azad University, Ka.C., Karaj, Iran)、Fatemeh-Sadat Nayebinia(Heshmatieh Hospital, Sabzevar University of Medical Sciences, Sabzevar, Iran)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Azita Fathnezhad-Kazemi, Anvar-Sadat Nayebinia, Fatemeh-Sadat Nayebinia. Breastfeeding self-efficacy in mothers and its association with maternal functioning, maternal knowledge, and attitudes toward breastfeeding: a cross-sectional study. Scientific Reports 2026-10-11. DOI: 10.1038/s41598-026-75156-1. 原著ライセンス:CC BY.