著者の所属・活動拠点の国は、サウジアラビア、イタリアです。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:二つの「マグネシウムの指標」を比べる

マグネシウムは体内で300以上の酵素反応に関わる必須ミネラルで、糖や脂質の代謝、心臓や血管の働きに関係することが知られています。医療現場では血液(血清)中のマグネシウム濃度を測ることが一般的ですが、血清中にあるのは体全体のマグネシウムのおよそ0.3%にすぎません。体は血中濃度を一定に保とうと強く調節しているため、組織の蓄えが減っていても血液の値は正常範囲にとどまることがあり、血清値が体全体の状態を正確に映すとは限らないと考えられています。

サウジアラビアでは10代の肥満の割合が20〜35%と報告されており、思春期は成長に伴ってマグネシウムの必要量も増える時期です。一方で、10代を対象に血清マグネシウムと食事からのマグネシウム摂取量を同じ集団で同時に調べた研究は多くありませんでした。研究チームは、サウジアラビアの10代における低マグネシウム血症と摂取不足の割合を明らかにし、二つの指標が肥満、血圧、血糖、脂質といった心血管・代謝に関わる指標(以下、心代謝指標)とどう関連するかを調べることを目的としました。

何をどう調べたか

対象はリヤドの学校健康調査の一環として集められた12〜18歳の234人(女子166人、男子68人、平均年齢14.8歳)です。ある一時点のデータを集めて関係を見る横断研究で、身長・体重・腹囲・血圧の測定、空腹時の採血による血糖や脂質、血清マグネシウムの測定、そしてサウジアラビア向けに調整された食物摂取頻度質問票による食事調査が行われました。血清マグネシウムが0.75 mmol/L未満の場合を低マグネシウム血症とし、食事からの摂取量は年齢・性別ごとの基準を下回る場合を摂取不足としました。

食事の量が多い人ほど、あらゆる栄養素の摂取量も多くなりがちです。そこで著者らは、食事全体のエネルギー量の影響を差し引くため、摂取エネルギー1000 kcalあたりのマグネシウム量(密度法)と、エネルギー量では説明できない分だけを取り出す方法(残差法)の二通りでも摂取量を評価しました。参加者を各指標の値で三等分したグループに分けて比べ、肥満、高血圧、高血糖、HDLコレステロール低値、中性脂肪高値などの起こりやすさをオッズ比で比較しています。多くの比較を行うと偶然の「有意差」が出やすくなるため、その補正(偽発見率補正)も加えました。

主な結果

低マグネシウム血症は87人(37.2%)にみられ、男子では50%と女子の31.9%より多い結果でした。食事からの摂取不足は全体の58.5%に当たり、男子(70.6%)が女子(53.6%)より、過体重・肥満の人(67%)が標準体重の人(53.1%)より多く該当しました。一方、血清マグネシウムの値と食事からの摂取量の間には、ほとんど相関がみられませんでした。

血清マグネシウムの値で三つに分けたグループの間では、BMI、血圧、血糖、コレステロール、中性脂肪などの心代謝指標に有意な差は認められませんでした。低マグネシウム血症の人ではHDLコレステロールがやや低いという差が見られたものの、全体として血清値と心代謝指標の関連は限られていました。

食事からのマグネシウム摂取量は、総エネルギー量やたんぱく質、炭水化物、食物繊維などの摂取量と強く連動しており、摂取量が多いほどBMIが低いという弱い逆の相関がありました。しかし、エネルギー量の影響を差し引くと、BMIとのこの関連は弱まり、統計的に有意ではなくなりました。中性脂肪については、残差法で求めた摂取量が最も多いグループで、最も少ないグループに比べ中性脂肪高値のオッズが約0.40倍と低い関連が示されました。ただし、多重比較の補正後には傾向の有意性は保たれず、食事の申告の妥当性で参加者を絞った追加解析でも安定した結果は得られませんでした。著者らはこの関連を探索的なものとして扱うべきだとしています。

この研究が示すこと

この研究は、血液中のマグネシウムと食事からのマグネシウムが、同じ10代の集団の中でも異なる情報を示しうることを報告しています。血清値は心代謝指標とあまり結びつかず、食事からの摂取量に見られた関連は、食事全体の量をどう考慮するかや統計的な補正によって大きく変わりました。横断研究であるため、マグネシウムが心代謝指標の原因になっているかどうかは判断できません。著者らは、マグネシウムの状態を評価する際に指標の違いを意識すること、そして食事からの摂取量を調べる際には総エネルギー摂取量を考慮することが重要だと結論づけています。

原著論文の著者・所属:Sobhy M. Yakout(Biochemistry Department, College of Science, King Saud University, Riyadh 11451, Saudi Arabia)、Malak Nawaz K. Khattak(Biochemistry Department, College of Science, King Saud University, Riyadh 11451, Saudi Arabia)、Abdullah M. Alnaami(Biochemistry Department, College of Science, King Saud University, Riyadh 11451, Saudi Arabia)、Shaun Sabico(Biochemistry Department, College of Science, King Saud University, Riyadh 11451, Saudi Arabia)、Nicola Veronese(Biochemistry Department, College of Science, King Saud University, Riyadh 11451, Saudi Arabia; Geriatric Unit, Department of Internal Medicine and Geriatrics, Faculty of Medicine, Saint Camillus International University of Health Sciences, 00131 Rome, Italy; Geriatric Unit, Department of Internal Medicine and Geriatrics, University of Palermo, 90100 Palermo, Italy)、Mario Barbagallo(Geriatric Unit, Department of Internal Medicine and Geriatrics, University of Palermo, 90100 Palermo, Italy)、Nasser M. Al-Daghri(Biochemistry Department, College of Science, King Saud University, Riyadh 11451, Saudi Arabia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sobhy M. Yakout, Malak Nawaz K. Khattak, Abdullah M. Alnaami, et al. Serum vs. Dietary Magnesium and Cardiometabolic Outcomes in Saudi Adolescents. Nutrients 2026-10-08. DOI: 10.3390/nu18193302. 原著ライセンス:CC BY.