この研究は、サウジアラビアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
食事に関する習慣のうち、塩や砂糖を自分で加えること、そして超加工食品(UPF)をよく食べることは、生活習慣によって変えられる心血管代謝リスク要因として知られています。心血管代謝とは、心臓や血管の働きと、血糖・血圧・血中脂質といった体内の代謝の状態をまとめて指す言葉です。また超加工食品とは、工業的な加工を多く経て作られた食品を指す分類(NOVA分類)の一区分です。
著者らは、サウジアラビアの大学生において、超加工食品の摂取がもたらす食事面での負担の重なりや、それらと体格指数(BMI)や心血管代謝疾患との関連がこれまで検討されていないと述べています。そこで本研究では、複数地域の大学生を対象に、これらの食習慣とBMI、および自己申告による心血管代謝関連の健康状態との関連を調べることを目的としました。
調べ方
研究チームは、2023年3月から5月にかけて、サウジアラビアの4つの地域の大学生564人を対象に横断研究を行いました。横断研究とは、ある一時点の状態をまとめて調べる方法で、時間の前後関係をたどるものではありません。
食事の内容は、妥当性が確認された半定量食物摂取頻度調査票を用いて評価し、NOVA分類に基づく6項目から超加工食品の指標(複合スコア)を作成しました。食習慣とBMIの関連は多変量線形回帰で検討し、年齢、性別、学年、所属学部の種別、地域、婚姻状況、身体活動レベル(低・中・高)、座位での画面視聴時間の指標を調整しています。
一方、心血管代謝関連の健康状態については、該当者が14人(2.5%)と少数だったため、あらかじめ予定していたFirth罰則付きロジスティック回帰では安定した推定値が得られなかったと報告されています。そのため、疾患との関連として報告されているのは、他の要因を調整していないFisherの正確検定の結果です。
報告された主な結果
参加者の平均BMIは22.22±4.04 kg/m²で、64.0%が標準体重の範囲にありました。習慣的に塩を加えると回答した人は87.1%にのぼり、1日あたり小さじ1杯以上という多めの塩の追加を報告した人は19.0%、1日あたり小さじ3杯以上の砂糖の追加を報告した人は16.0%でした。
BMIとの関連については、調整後にはいずれの食事要因も関連が認められませんでした(いずれもp>0.05)。一方、多めの塩の追加は、自己申告による心血管代謝関連の健康状態を現に持っていることと有意に関連していました(オッズ比3.29、95%信頼区間1.04〜10.42、p=0.043)。砂糖の追加と超加工食品スコアの三分位では、こうした関連はみられませんでした。ナトリウムと喫煙の交互作用がBMIに及ぼす影響は、完全に調整したモデルでは有意ではなく(尤度比検定 p=0.053)、著者らは探索的な結果として扱っています。
この結果が示すこと
著者らは本研究について、サウジアラビアの大学生では標準体重の人が多数を占めるにもかかわらず、多めの塩の追加が自己申告による心血管代謝関連の健康状態と有意に関連していたことを示した、複数地域にわたる初めての知見だとしています。
同時に、該当者が14人と少なく、横断研究であることから、これらの結果はあくまで探索的なものであり、因果関係を示すものではないと明記しています。その上で、この集団における非感染性疾患の予防策として、ナトリウム(塩分)の摂取を減らすことや、塩についての知識を高める取り組みに目を向ける価値があるかもしれないと述べ、因果関係を確かめるには客観的な指標を用いた前向き研究が必要だとしています。
日常のささやかな習慣である「食卓で塩を足す」という行為に目を向けたこの研究は、体重が標準の範囲にある若い世代であっても、食習慣と健康状態の関わりを見落とさない視点の必要性を示しています。
著者:Abdulrahman I. Alaqil(Department of Physical Education, College of Education, King Faisal University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Abdulrahman I. Alaqil. Habitual salt addition and self-reported cardiometabolic conditions among Saudi university students: a multi-region cross-sectional study. Frontiers in Nutrition 2026-09-22. DOI: 10.3389/fnut.2026.1942220. 原著ライセンス:CC BY.