著者の所属・活動拠点の国は、ポーランドです。

掲載誌:International Journal of Molecular Sciences

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

男性の精巣のホルモン機能は、年齢とともにゆるやかに低下します。論文によると、低下は40歳前後から始まることが多いとされます。40〜70歳の男性の30〜40%では低下がより目立ち、「加齢男性性腺機能低下症(LOH、いわゆる男性更年期障害)」に至ると推定されています。LOHでは、性機能の低下や筋肉量の減少、内臓脂肪の増加、インスリンの効きにくさなどがみられます。また、テストステロンが低いことは、血管の働きの低下や慢性的な弱い炎症、動脈硬化の進行と関連すると報告されています。

一方、ビタミンEには抗酸化作用などがあり、動脈硬化を防ぐ方向に働く可能性が指摘されています。ただし、サプリメントによる補給を調べた臨床試験の結果は一致していません。著者らによると、米国の男性の多くはビタミンEの摂取量が推定平均必要量に届いていないと推定されています。その一方で、高用量のサプリメントを使う人もいます。そのため、テストステロン補充療法を受ける男性のなかには、ビタミンE摂取が少ない人も多い人もいると考えられます。研究チームは、ビタミンEの摂取量によって、テストステロン補充療法中の心血管・代謝の指標の変化が異なるかを調べました。

どのように調べたか

研究は、参加者を一定期間追跡する前向きコホート研究として行われました。対象は、LOHと診断された40〜75歳の男性です。診断の条件は二つありました。一つは、日を変えて2回以上測った朝のテストステロン値が低いこと、もう一つは朝の勃起の減少などの典型的な症状があることです。精巣や脳下垂体の病気など、はっきりした原因による性腺機能低下は除外されました。

LOHの男性は、研究開始時のビタミンE摂取量によって「少ない」「適切」「多い」の3群に分けられました。この摂取量には、食事からの分に加え、サプリメントを使っている人ではその分も含まれます。論文の結論部分では、「多い」群は1日400 IUを超えて摂取していた人たちとされています。3群の男性は、6か月間テストステロンの筋肉注射を受けました。比較のために、LOHではない男性の対照群も設けられました。研究を最後まで終えたのは、治療を始めた87人のLOHの男性のうち80人、対照群では29人のうち27人です。

研究開始時には、ビタミンEの総摂取量に加えて、ビタミンEサプリメントを使っている人の割合も群によって異なっていました。サプリメントを使っていた参加者は、研究期間中も研究前と同じ使い方を続けるよう求められました。また、参加者は決められた時期ごとに7日間の食事記録をつけ、ビタミンEやほかの栄養素の摂取量が確認されました。

治療前と6か月後には、多くの指標が測られました。主なものは次のとおりです。コレステロール。インスリン抵抗性(インスリンの効きにくさ)の指標であるHOMA-IR。炎症の目安である高感度CRP。血中のホモシステインやフィブリノゲン。尿中にアルブミンがどれだけ出ているかを示す指標(UACR)。首の動脈の壁の厚さ(CIMT)。心血管病のリスクを点数化したフラミンガム・リスクスコア。

主な結果

治療前の時点では、ビタミンE摂取量にかかわらず、LOHの男性の3群はいずれも対照群に比べて不利な状態でした。LDLコレステロール、インスリン抵抗性、炎症の指標、動脈の壁の厚さ、推定される心血管リスクなどで、対照群との違いがみられました。さらにLOHの男性のなかでも、摂取量が「適切」な群と「少ない」「多い」群とでは、ホモシステイン、高感度CRP、UACRに差がありました。結論部分では、摂取量が少ない場合も多い場合も、これらの指標の上昇がより目立ったとまとめられています。

テストステロン値の上がり方は、3群のあいだで差がありませんでした。それでも、治療中の指標の変化は群ごとに異なっていました。摂取量が「適切」な群では、LDLコレステロール、インスリン抵抗性、尿酸、フィブリノゲン、ホモシステイン、高感度CRP、UACR、フラミンガム・リスクスコアの低下がみられました。研究終了時には、この群の首の動脈の壁の厚さが「少ない」「多い」群より小さくなっていました。さらに、対照群との差もなくなっていました。

これに対して、「少ない」群でみられた変化はインスリン抵抗性の低下に限られました。「多い」群では目立った改善はみられず、HDL(いわゆる善玉)コレステロールの低下だけが観察されました。著者らは、ビタミンEの摂取量と、テストステロン補充療法中の心血管・代謝の変化との関係を「逆U字型」と表現しています。

研究が示すこと

この研究は、LOHの男性がテストステロン補充療法を受けているあいだの心血管・代謝の変化が、ビタミンEの摂取量によって異なる可能性を示しました。摂取量が少なすぎる場合だけでなく、多すぎる場合にも、良好な変化が乏しかったと報告されています。このことから著者らは、高用量のビタミンEを含む市販品を管理なしに使うことへの懸念も示しています。

一方で著者らは、この研究が観察研究であり、規模の小さい予備的な研究であることを強調しています。テストステロンを使わないLOHの群はなく、血液中のビタミンE濃度も測っていません。そのため、得られた結果は「関連」を示すにとどまります。ビタミンEの摂取量がテストステロンの効果を左右するという因果関係を示すものではありません。論文は、より大規模で長期の臨床試験による確認が必要だとしています。

原著論文の著者・所属:Robert Krysiak(Department of Internal Medicine and Clinical Pharmacology, Medical University of Silesia, Medyków 18, 40-752 Katowice, Poland)、Witold Szkróbka(Department of Internal Medicine and Clinical Pharmacology, Medical University of Silesia, Medyków 18, 40-752 Katowice, Poland)、Karolina Kowalcze(Department of Pathophysiology, Faculty of Medicine, Academy of Silesia, Rolna 43, 40-555 Katowice, Poland; Department of Pediatrics in Bytom, Faculty of Health Sciences in Katowice, Medical University of Silesia, Stefana Batorego 15, 41-902 Bytom, Poland)、Grzegorz Machnik(Department of Molecular Biology, Medical University of Silesia, 40-752 Katowice, Poland)、Karolina Zapletal-Pudełko(Department of Molecular Biology, Medical University of Silesia, 40-752 Katowice, Poland)、Bogusław Okopień(Department of Internal Medicine and Clinical Pharmacology, Medical University of Silesia, Medyków 18, 40-752 Katowice, Poland)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Robert Krysiak, Witold Szkróbka, Karolina Kowalcze, et al. The Impact of Vitamin E Intake on Cardiometabolic Outcomes of Testosterone Replacement Therapy in Men with Late-Onset Hypogonadism. International Journal of Molecular Sciences 2026-10-09. DOI: 10.3390/ijms27208953. 原著ライセンス:CC BY.