著者の所属・活動拠点の国は、フランスです。
掲載誌:Cahiers de Nutrition et de Diététique
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
魚などに含まれるEPAやDHAは、オメガ3系多価不飽和脂肪酸(n-3系脂肪酸)と呼ばれる脂質の一種です。著者らは、これらの脂肪酸が乳がんとどう関わるかについて、これまでの知見を新たに整理し直すことを目的としました。
この論文は、フランスの食品・環境・労働衛生安全庁(ANSES)が2010年にまとめた専門家報告を引き継ぐ位置づけの総説です。抄録によると、乳がんの発症を防ぐ「一次予防」、がんの治療中、そして治療後の経過を対象とする「三次予防」という三つの段階に分けて、臨床研究やメタ解析(複数の研究結果を統合して分析する手法)の結果を検討しています。
発症予防と治療中についての報告
一次予防について、著者らは、臨床研究やメタ解析からはn-3系脂肪酸に乳がんを防ぐ効果があると結論づけることはできないと報告しています。最近の研究では発症リスクが下がる傾向が示唆されているものの、その差は統計的に有意ではなかったとされています。
治療中の患者については、乳がんの重症度とn-3系脂肪酸との間に関連を示唆する臨床研究があると述べられています。一方で、サプリメントなどで補給することによって抗がん剤治療(化学療法)の副作用を受けにくくなるという効果を支持する研究はなかったとしています。
また論文は、根拠の水準は低いものの、栄養状態が悪化した治療中の患者にはn-3系脂肪酸を補給するのが慣例になっている、という臨床現場の実情にも触れています。
生存との関連
生存については、n-3系脂肪酸は全体的な生存(死因を問わない生存)の改善と関連していた一方、乳がんによる死亡に限った死亡率には影響が見られなかったと報告されています。ここで示されているのは関連であり、n-3系脂肪酸が生存を改善させると証明されたわけではありません。
この総説が示すこと
著者らは、この分野では利用できる科学的データがまだ不足していることを強調しています。そのうえで、食事からの摂取量の分析に加えて、血液中の指標、とくに赤血球に含まれる脂肪酸の量といった生体指標も用いた、しっかりした方法による臨床研究が必要だと結論づけています。
オメガ3脂肪酸と乳がんの関係は、期待される面がある一方で、現時点では確かなことが言える段階にはない。この総説は、そうした知見の現状を段階ごとに整理して示したものといえます。
原著論文の著者・所属:Christine Bobin-Dubigeon(Centre de recherche en nutrition humaine Ouest CRNH, Nantes université CNRS, UMR6286, US2B, ICO René-Gauducheau, boulevard J.-Monod, 44805 Nantes Saint-Herblain cedex, France)、Jean-Marie Bard(UFR des sciences pharmaceutiques et biologiques, ISOMer UE 2160, Nantes université, Nantes, France)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Christine Bobin-Dubigeon, Jean-Marie Bard. Acides gras polyinsaturés oméga 3 EPA/DHA et cancer du sein – Du nouveau en clinique ?. Cahiers de Nutrition et de Diététique 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.cnd.2026.08.110. 原著ライセンス:CC BY.