著者の所属・活動拠点の国は、バングラデシュ、オーストラリアです。

掲載誌:Plant and Soil

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

生育初期のコムギを飛散被害から守れるか

除草剤グリホサートは、散布時に周囲へ飛散すると、除草対象ではない作物にも被害を与えることがあります。研究チームは、生育初期のコムギにフルボ酸を葉から散布することで、この被害を軽減できるかを調べました。特に、フルボ酸の濃度や散布のタイミングによって、生育や微量栄養素の蓄積がどう変わるかに着目しました。

実験は温室内の鉢植えで行い、低用量のグリホサート散布によって飛散による曝露を模擬しました。フルボ酸だけを散布する試験に加え、グリホサートとは別に散布する場合と、両者を混ぜて散布する場合を比較しました。茎葉や根を乾燥させた重量、根の長さ、葉の葉緑素量の指標、茎葉に含まれる鉄、銅、マンガン、亜鉛などを測定しました。

濃度だけでなく、散布のタイミングが影響

フルボ酸だけを散布した試験では、1~5グラム毎リットルの処理で、無処理のコムギより茎葉の乾燥重量が有意に増えました。一方、濃度をさらに高くしても同じような増加は見られず、多く散布するほど生育がよくなるわけではありませんでした。グリホサートによる被害の軽減についても、効果はフルボ酸の濃度や測定項目、散布時期によって異なりました。

研究チームはさらに、コムギの「Scepter」と「Magenta」の2品種を用い、フルボ酸5グラム毎リットルの処理を比較しました。グリホサート散布の3日前にフルボ酸を散布すると、両品種の茎葉の乾燥重量はグリホサートだけを散布した場合より有意に高くなり、無処理と同程度になりました。しかし、同じ日にグリホサートの直前に散布しても、茎葉や根の乾燥重量に対する被害軽減効果は認められませんでした。

フルボ酸をグリホサートと混ぜて散布した場合も、両品種で茎葉と根の乾燥重量がグリホサート単独より有意に高くなりました。別の混合散布試験では、葉緑素量の指標や茎葉のマンガン、亜鉛濃度も改善しました。ただし、品種によって反応には違いがあり、著者らはMagentaの方がScepterよりグリホサートへの耐性が高かったと報告しています。

被害軽減の可能性と、結果が示す範囲

著者らは、フルボ酸の葉面散布が、生育初期のコムギでグリホサートによる生育低下や微量栄養素の蓄積低下を和らげたと結論づけています。ただし、どのような仕組みで保護効果が生じたかは、この研究では直接確かめられていません。

混合散布で保護効果が見られたことも、そのまま雑草防除への利用を意味するわけではありません。著者らは、混合によってグリホサートの除草効果も失われる可能性を指摘しています。また、今回の結果は管理された温室条件で得られたものです。この研究が示すのは、フルボ酸による被害軽減の可能性と、その効果を左右する散布時期や品種の重要性です。

原著論文の著者・所属:Bablu Hira Mandal(Department of Chemistry, Jashore University of Science and Technology (JUST), Jashore, 7408, Bangladesh; UWA School of Agriculture and Environment, The University of Western Australia (UWA), Perth, 6009, Australia)、Md Hosenuzzaman(Department of Soil Science, Bangladesh Agricultural University (BAU), Mymensingh, 2202, Bangladesh; UWA School of Agriculture and Environment, The University of Western Australia (UWA), Perth, 6009, Australia)、Zakaria M. Solaiman(The UWA Institute of Agriculture, The University of Western Australia (UWA), Perth, 6009, Australia; UWA School of Agriculture and Environment, The University of Western Australia (UWA), Perth, 6009, Australia)、Zed Rengel(The UWA Institute of Agriculture, The University of Western Australia (UWA), Perth, 6009, Australia; UWA School of Agriculture and Environment, The University of Western Australia (UWA), Perth, 6009, Australia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Bablu Hira Mandal, Md Hosenuzzaman, Zakaria M. Solaiman, et al. Foliar application of fulvic acid minimises the damage of glyphosate drift to wheat (Triticum aestivum L.) during early growth. Plant and Soil 2026-09-24. DOI: 10.1007/s11104-026-09119-w. 原著ライセンス:CC BY.