この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:JURNAL BIOLOGI TROPIS
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
「発育阻害(スタンティング)」とは、長期にわたる栄養不足などにより、子どもの身長(乳児では寝かせて測る身長)が年齢に比べて大きく下回る状態を指します。世界保健機関(WHO)の成長基準では、同じ年齢の子どもの標準値から標準偏差2つ分以上低い場合に発育阻害とされます。妊娠から2歳までのいわゆる「最初の1000日」に起こりやすく、身体の成長だけでなく、認知発達や学習能力などへの影響とも関連づけられています。
生後6〜24か月は、母乳だけの時期から離乳食へ移る時期にあたり、必要なエネルギーや栄養素が増えるため、成長の妨げが起こりやすいとされます。インドネシアの研究チームは、この時期の子どもの食事の内容と発育阻害との関係について、地域レベルの知見がまだ限られていると指摘しています。そこで著者らは、インドネシア・西ヌサトゥンガラ州の中部ロンボク県にある地域保健センターの管轄地域を対象に、食事の多様性と発育阻害の関係を調べました。
どのように調べたか
調査は2025年7月から11月にかけて行われました。対象は、この地域に住み、発育阻害と判定された生後6〜24か月の子どもとその母親です。当初の名簿には107人の子どもが含まれていましたが、調査時点ですでに24か月を超えていた子どもを除くと58人となり、先天性の病気がある子どもや、低出生体重・早産で生まれた子どもなどを除いた結果、条件を満たした43人全員が調査対象となりました。
食事の多様性は「食事多様性スコア(DDS)」で評価しました。国連食糧農業機関(FAO)の基準をもとにした9つの食品グループ(主食、動物性たんぱく質源、植物性たんぱく質源、野菜、果物、乳・乳製品、間食、魚、飲み物)について、過去24時間に子どもが食べたかどうかを母親や養育者への聞き取りで確認し、5グループ以上を食べていれば「多様な食事」、それ未満なら「多様でない食事」と分類しました。
発育阻害の程度は、母子健康手帳に記録された身長と年齢の測定データから判定し、インドネシア保健省の基準にもとづいて「発育阻害」と、より程度の重い「重度の発育阻害」に分けました。つまりこの研究は、発育阻害のある子とない子を比べたのではなく、すでに発育阻害のある子どもの中で、その重さと食事の多様性との関係を調べたものです。
主な結果
43人のうち、27人(62.8%)が発育阻害、16人(37.2%)が重度の発育阻害に分類されました。食事については、半数を超える25人(58.1%)が多様でない食事、18人(41.9%)が多様な食事でした。
統計的な検定(カイ二乗検定)の結果、食事の多様性と発育阻害の重さとの間に、統計的に有意な関連は認められませんでした(p値=0.655。一般にこの値が0.05未満のとき「偶然とは考えにくい差」とみなされます)。
一方で、多様な食事をとっている子どもが重度の発育阻害に当てはまる割合は、多様でない食事の子どもより低めでした。両グループの起こりやすさの比を示すオッズ比は0.750で、著者らはこれを、多様な食事では重度の発育阻害が少ない傾向がうかがえる結果として述べています。ただし、その幅を示す95%信頼区間は0.212〜2.656と広く、関連の有無を判断できる「差がない」とされる値1をまたいでいます。
研究が示すこと
著者らは、有意な関連が見られなかった理由として、対象者全員がすでに発育阻害の子どもであったこと、対象が43人と少なかったこと、そして一時点の食事しか調べていないのに対し、身長は長期間の栄養状態の積み重ねを反映することを挙げています。
それでも、発育阻害の子どもの半数以上が多様でない食事をとっていたという実態は、この地域の離乳期の食事に課題があることを示しています。研究チームは、地域で手に入る食材を活用して子どもの食事の多様性を高めることの必要性を訴えています。
著者:Baiq Nur Lathifatuzzahrah(Universitas Mataram)、Lina Nurbaiti(Universitas Mataram)、Wiwin Lastyana(Universitas Mataram)、Zikrul Haikal(Universitas Mataram)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Baiq Nur Lathifatuzzahrah, Lina Nurbaiti, Wiwin Lastyana, et al. Association Between Dietary Patterns and Severity of Stunting Among Children Aged 6– 24 Months in Bagi Community Health Center Catchment Area, Central Lombok Regency. JURNAL BIOLOGI TROPIS 2026-09-30. DOI: 10.29303/jbt.v26i4.13287. 原著ライセンス:CC BY.