「スタンティング(stunting)」とは、慢性的な栄養不足などが原因で、年齢に対して身長の伸びが十分でない状態を指す言葉です。特に発展途上国では公衆衛生上の重要な課題とされていますが、スタンティングのある子どもが実際にどのような食事をとっているのか、特にビタミンやミネラルといった微量栄養素の摂取状況については、まだ十分に調べられていないといいます。今回紹介する研究は、インドネシア・ボゴール県で、スタンティングのある幼児とそうでない幼児の食事内容を比較したものです。
この研究は、インドネシアのプルワサリおよびカンプンマンギスという2つの地域保健センターで、2025年8月1日から26日にかけて行われた横断研究です。スタンティングのある幼児60名と、身長が正常範囲の幼児60名を対象に、食事の質や栄養素の摂取量が比較されました。食事の質の評価には、インドネシア向けに調整された「健康的な食事指数(Healthy Eating Index、2〜5歳向け)」という指標が使われています。
研究でわかったこと
まず背景となる家庭環境について、スタンティングのある幼児のグループとそうでないグループの間には、いくつかの点で統計的に有意な差が見られました。具体的には、母親の学歴(p=0.001)、父親の学歴(p=0.043)、父親の職業(p=0.045)、出産回数(p=0.028)、世帯の一人当たり収入(p=0.006)、出生時体重(p=0.003)、そして感染症の既往歴(p=0.019)といった項目です。これらの結果から、スタンティングは社会経済的な条件とも関連している可能性が示唆されています。
食事の質については、「野菜・緑黄色野菜」(p=0.031)、「果物・果汁」(p=0.009)、「食事の多様性」(p=0.003)といった項目で有意な差があり、いずれも正常な幼児のほうが高いスコアを示していました。また、正常な幼児は炭水化物・たんぱく質・脂質といった主要栄養素、そしてビタミンやミネラルなどの微量栄養素についても、摂取の充足度が有意に高いという結果が報告されています(p<0.05)。
特に注目されるのは、鉄と亜鉛の「推定される吸収量」についての結果です。スタンティングのある幼児では、鉄(p=0.019)・亜鉛(p=0.010)ともに、体内に吸収されると推定される量が有意に少ないことが示されました。ただし、鉄・亜鉛の「生体利用率」を大まかなカテゴリーで比較した場合には、両グループの間に有意な差は見られなかったとされています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、ボゴール県の2つの地域保健センターで行われた、横断的な比較研究です。ある一時点での状況を比較したものであるため、食事の内容がスタンティングの「原因」であるのか、あるいはスタンティングに伴う何らかの結果として食事の状況に差が生じているのか、といった因果関係を明確に示すものではありません。また、対象となった地域や人数も限られているため、この結果がインドネシアの他地域や、他の国々の状況にそのまま当てはまるとは限らない点にも注意が必要です。一つの研究として得られた知見であり、これのみで結論が確定したわけではないと理解しておくとよいでしょう。
まとめ
この研究では、インドネシアのスタンティングのある幼児について、正常な幼児と比べて社会経済的な条件が厳しい傾向にあること、野菜や果物の摂取、食事の多様性が少ない傾向にあること、そして鉄・亜鉛の推定吸収量が少ない傾向にあることが報告されました。研究では、食事の質の改善や、鉄の吸収を助けるとされるビタミンCの摂取を増やすこと、また鉄の吸収を妨げるとされるお茶などの摂取を控えることに加え、世帯の社会経済的な要因や子どもの健康全般に対応する、より広い視点での取り組みが必要だと述べられています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:インドネシア・ボゴール県における発育阻害幼児と正常幼児の食事の質、栄養素摂取量、および鉄・亜鉛の推定生体利用率の比較研究(ジャーナル・オブ・ヘルス・アンド・ニュートリション・リサーチ・2026年08月)