著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Journal of Medical Genetics and Clinical Biology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

発育阻害(スタンティング)とは、長期的な栄養不足などにより、子どもの身長が年齢に対して著しく低い状態を指します。世界保健機関(WHO)の基準では、同年齢の子どもの標準的な身長の分布から大きく下回る(年齢別身長のzスコアがマイナス2未満)場合を発育阻害と判定します。論文によると、発育阻害は身体の成長だけでなく、認知の発達や将来の生産性にも影響しうる問題とされ、インドネシアでも国家的な優先課題に位置づけられています。

研究チームは、インドネシア・アチェ州アチェ・ブサール県のイギン・ジャヤ保健センターの管轄地域にあるムキム・パガル・エア地区で、5歳未満の子どもの発育阻害に、たんぱく質の摂取、炭水化物の摂取、感染症にかかった経歴がどう関連しているかを調べました。さらに、これら三つの要因のうち、どれが最も強く発育阻害と関連しているかを明らかにすることも目的としています。著者らは、発育阻害の要因は地域ごとの食習慣や生活環境によって異なりうるため、地域に即した根拠が必要だと説明しています。

どのように調べたか

研究は2024年4月から9月にかけて行われ、ある一時点で複数の項目を同時に測る「横断研究」という方法がとられました。対象は0〜59か月の子ども115人で、地区内の各村の人数の割合に応じて無作為に選ばれました。

食事については、母親や主な養育者に前日24時間に食べたものを思い出してもらう聞き取り調査を、連続しない2日間(平日と週末)に実施し、たんぱく質と炭水化物の1日平均摂取量を算出しました。この量を年齢ごとの推奨摂取量と比べ、その80%以上を「十分」、80%未満を「不足」としています。感染症歴は、過去3か月間に下痢、急性呼吸器感染症、発熱のいずれかがあったかどうかを質問票で尋ねました。身長は訓練を受けた調査員が測定し、WHOの基準に基づいて発育阻害かどうかを判定しました。

主な結果

調査した115人のうち26人(22.6%)が発育阻害と判定されました。論文は、この割合がWHOが公衆衛生上の問題とみなす目安の20%を上回っていると指摘しています。また、炭水化物の摂取が不足していた子どもは72.2%、過去3か月に感染症にかかっていた子どもは87.0%にのぼりました。一方、たんぱく質の摂取は多くの子どもで十分な水準でした。

要因を一つずつ調べた分析では、炭水化物の摂取と感染症歴は発育阻害と統計的に意味のある関連を示しましたが、たんぱく質の摂取には意味のある関連が見られませんでした。

次に、炭水化物の摂取と感染症歴を同時に考慮した分析を行ったところ、感染症歴が発育阻害と最も強く関連する要因でした。感染症歴のある子どもが発育阻害である見込み(オッズ)は、感染症歴のない子どもの約8.3倍と報告されています。一方、この分析では炭水化物の摂取不足は統計的に意味のある関連を示さなくなりました。著者らは、炭水化物の影響は感染症などほかの要因と重なり合っている可能性があると考察しています。

研究が示すこと

この研究は、調査対象の地域では、特定の栄養素の摂取量よりも感染症にかかった経歴の方が、発育阻害とより強く結びついていたことを示しています。著者らは、発育阻害を減らす取り組みには栄養面の改善だけでなく、衛生環境の改善や予防接種などによる感染症対策を組み合わせることが重要だと結論づけています。

ただし、一時点の調査であるため因果関係までは確かめられないこと、また食事や病気の経歴を記憶に頼って聞き取っているため思い出しの誤差が生じうることを、著者ら自身が限界として挙げています。

原著論文の著者・所属:Dara Chintya Dewi Kusvita(Muhammadiyah University of Aceh, Indonesia)、Ramadhaniah(Muhammadiyah University of Aceh, Indonesia)、Basri Aramico(Muhammadiyah University of Aceh, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Dara Chintya Dewi Kusvita, Ramadhaniah, Basri Aramico. THE RELATIONSHIP OF PROTEIN INTAKE, CARBOHYDRATE INTAKE, AND INFECTIONAL DISEASES WITH THE INCIDENCE OF STUNTING IN TODDLERS IN THE WORKING AREA OF THE INGIN JAYA PUSKESMAS ACEH BESAR DISTRICT. Journal of Medical Genetics and Clinical Biology 2026-07-31. DOI: 10.61796/jmgcb.v3i8.1857. 原著ライセンス:CC BY.