この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Waluya The International Science And Health Journal
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の背景と目的
スタンティングとは、栄養不足や感染症の繰り返しなどによって、子どもの身長が年齢に比べて低くなる発育の障害です。世界保健機関(WHO)の基準では、同じ年齢・性別の標準と比べて身長が大きく下回る(標準偏差でマイナス2未満)場合をスタンティングとしています。長期間の栄養不足を反映しており、母親のおなかの中にいる時期から始まることもあるとされます。
インドネシアでは全国のスタンティングの割合が2022年に21.6%まで下がったものの、政府目標には届いていません。研究チームが対象とした東南スラウェシ州の北ブトン県は31.1%と、全国や州の値を上回っていました。
論文は、スタンティングの要因の一つとして、妊娠中の母親が長期間エネルギー不足の状態にある「慢性エネルギー欠乏(CED)」を挙げています。母親の栄養不足は出生体重2500グラム未満の赤ちゃんにつながり、その後の成長にも影響しうると説明されています。研究チームは、幼児の動物性たんぱく質の摂取と、妊娠中の母親のCEDが、北ブトン県の幼児のスタンティングと関連しているかを調べることを目的としました。
調べ方
研究は2024年8月から9月にかけて、生後6〜59か月の子どもを対象に行われました。方法は「症例対照研究」と呼ばれるもので、スタンティングのある子ども102人(症例群)と、ない子ども102人(対照群)の計204人を選び、両群の間で過去の栄養状況などを比べます。2つの群は年齢と性別がそろうように選ばれており、実際に両群の年齢・性別の分布は同じでした。
調べた要因は、子どもの動物性たんぱく質(魚、卵、鶏肉、肉など)の摂取が足りているかどうかと、母親が妊娠中にCEDだったかどうかの2つです。データは聞き取り調査、身体計測、観察、母子の健康記録の確認によって集められました。妊娠中のCEDは、上腕の周囲の長さで判定されるものと論文では説明されています。
関連の強さは「オッズ比」という指標で示されました。オッズ比が1より大きいほど、その要因がある場合にスタンティングとの結びつきが強いことを意味します。あわせて、偶然による差かどうかを確かめる統計検定も行われています。
主な結果
動物性たんぱく質の摂取が不足していた子ども107人のうち、スタンティングの群に入っていたのは63人(58.9%)でした。一方、摂取が足りていた子ども97人では39人(40.2%)でした。オッズ比は2.129で、推定の幅(95%信頼区間)の下限も1.217と1を上回っていました。著者らは、動物性たんぱく質の摂取不足がスタンティングと関連し、そのオッズがおよそ2倍になると報告しています。
妊娠中の母親がCEDだった子ども122人では、72人(59.0%)がスタンティングの群に入っていました。母親が正常だった子ども82人では30人(36.6%)でした。オッズ比は2.496、95%信頼区間は1.403〜4.441で、こちらもスタンティングとの関連が認められたと報告されています。
論文の考察では、子どもの動物性たんぱく質が不足しがちな理由について、著者らの見方として、手軽に用意できる既製の食品が選ばれやすいことや、経済的な事情で動物性の食品を毎日そろえられないことが挙げられています。また、CEDのあった母親への聞き取りでは、妊娠初期の食欲不振やインスタント麺を食べる機会が多かったことが語られていました。
研究が示すこと
この研究は、スタンティングの割合が高い北ブトン県で、幼児の動物性たんぱく質の摂取不足と、妊娠中の母親の慢性的なエネルギー不足が、いずれもスタンティングと結びついていることを示しました。これは2つの群を比べて関連を見たもので、子どもの食事と、生まれる前の母親の栄養状態の両方に目を向ける必要があることを示しています。著者らは、保健当局や地域の保健センターが、母子に対して栄養や健康に関する指導を続けることを提言しています。
著者:Astrit Jelina(Lambale Community Health Center, Ereke, Southeast Sulawesi, Indonesia)、Sunarsih Sunarsih(Master of Public Health Study Program, Faculty of Health Sciences, Mandala Waluya University, Indonesia)、Rahmawati Rahmawati(Master of Public Health Study Program, Faculty of Health Sciences, Mandala Waluya University, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Astrit Jelina, Sunarsih Sunarsih, Rahmawati Rahmawati. Animal Protein Intake and Maternal Chronic Energy Deficiency during Pregnancy as Factors Associated with Stunting among Toddlers in North Buton Regency. Waluya The International Science And Health Journal 2026-09-30. DOI: 10.54883/tcbrny70. 原著ライセンス:CC BY.