著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:DISTILAT JURNAL TEKNOLOGI SEPARASI
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
サトウキビ汁を温める装置の性能を確かめる
砂糖づくりでは、サトウキビを搾って得た汁(ニラ)から不純物を取り除き、煮詰めて結晶にします。不純物を取り除く「精製」の工程は、品質のよい砂糖をつくるうえで特に重要な段階とされています。この工程の入り口で使われるのが「ジュースヒーター」と呼ばれる加熱装置です。搾ったばかりの汁を温めることで、化学反応を進みやすくし、微生物の増殖を抑えます。温められた汁は、その後、不純物を沈殿させる亜硫酸処理(スルフィテーション)へ送られます。
論文によると、こうした熱交換器は、長く使ううちに内部に汚れや垢(スケール)が付着したり、腐食が起きたりして、性能が落ちることがあります。研究チームは、インドネシア・東ジャワ州マランにある製糖工場PGクレベット・バルIの精製工程で使われている「ジュースヒーターI」を対象に、現在もどれだけ効率よく働いているかを分析しました。
何をどのように調べたか
対象の装置は「シェル・アンド・チューブ型」と呼ばれる熱交換器です。円筒形の外殻(シェル)の中に多数の細い管(チューブ)が通っており、論文のデータでは、シェル側を加熱用の蒸気が、チューブ側をサトウキビの汁が流れます。蒸気の熱が管の壁を通して汁へ移ることで、汁が温まります。
研究チームは工場での直接観察によりデータを集め、2024年9月19日の操業データを使いました。汁の入口・出口温度、蒸気と凝縮水(蒸気が冷えてできた水)の温度、流量などの実測値と、装置の設計仕様を組み合わせ、熱交換器の評価に広く使われる教科書的な計算手順に沿って性能を求めました。この日の記録では、汁は華氏約108度から158度へ温められていました。
評価の柱は三つです。一つ目は「汚れ係数(ファウリングファクター)」で、管の表面に付いた汚れがどれだけ熱の伝わりを妨げているかを表す値です。二つ目は「圧力損失」で、流体が装置を通り抜ける間にどれだけ圧力が下がるかを示します。三つ目は「熱効率」で、論文では、蒸気側から渡された熱のうち汁側が実際に受け取った熱の割合として計算されています。
主な結果
汚れ係数の実測値は0.000210(h・ft²・°F/BTU)で、設計値の0.001を下回っていました。研究チームはこれを、熱交換面が比較的きれいな状態にあることを示すものと解釈しています。
圧力損失は、シェル側が1.1バール、チューブ側が1.322バールで、合計2.422バールでした。許容される上限は2.5バールで、実測値はわずかに下回っていました。
熱効率は93.284%と算出され、著者らは加熱性能がかなり良好な状態にあると評価しています。また、汚れのない理想状態での熱の伝わりやすさを示す値が、汚れを含む実際の状態での値より大きいという、理論どおりの関係も確認されたと報告しています。
この研究が示すこと
これらの結果から、著者らは、ジュースヒーターIは調査時点で効率よく機能していると結論づけています。一方で、汚れの蓄積は時間とともに少しずつ熱の伝わりを低下させる主な要因であり、圧力損失も上限に近い水準であったことから、安定した性能を保つには定期的な監視と清掃・保守が必要だとしています。
この研究は、実際の工場の操業データをもとに、汚れ・圧力損失・熱効率という複数の指標で一台の加熱装置の状態を点検した事例です。製糖工場の精製工程で使われる設備の性能を評価する際の、技術的な参考例として位置づけられています。
原著論文の著者・所属:Hafizhah Rizqia Putri(Jurusan Teknik Kimia, Politeknik Negeri Malang, Jalan Soekarno Hatta No. 9, Malang 65141, Indonesia)、Heny Dewajani(Jurusan Teknik Kimia, Politeknik Negeri Malang, Jl. Soekarno Hatta No. 9, Malang 65141, Indonesia)、Novan Cipta Prihanto(Pabrikasi KB I, PG. Krebet Baru I Malang, Jl. Raya Krebet No.10, Krebet, Kec. Bululawang, Kabupaten Malang, Jawa Timur 65172, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hafizhah Rizqia Putri, Heny Dewajani, Novan Cipta Prihanto. ANALISIS EFISIENSI KINERJA JUICE HEATER I TIPE SHELL DAN TUBE PADA STASIUN PEMURNIAN PG KREBET BARU I MALANG. DISTILAT JURNAL TEKNOLOGI SEPARASI 2026-09-30. DOI: 10.33795/distilat.v12i3.7343. 原著ライセンス:CC BY.