著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Indonesian Journal of Innovation Studies
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:結晶化の途中で生まれる糖の「純度」を確かめる
サトウキビから砂糖をつくる工程は、圧搾、精製、蒸発、そして結晶化という段階を経て進みます。著者らによると、どの段階でも糖の一部が搾りかすや廃糖蜜(糖蜜)などに失われてしまうことがあり、工場ではできるだけ多くのショ糖(砂糖の主成分)を結晶として回収するための品質管理が欠かせません。
その管理に使われる指標の一つが、インドネシアの製糖業で「HK(純度値)」と呼ばれる数値です。これは、液に溶けている固形分のうち、どれだけが糖であるかを示すもので、値が高いほど糖が多く含まれていることを意味します。
この研究は、インドネシア東ジャワ州シドアルジョにある製糖工場PGチャンディ・バルで、亜硫酸処理をした濃縮サトウキビ汁を最初に煮詰める工程から得られる中間製品「D2糖」のHKを求め、次の結晶化工程の原料として適しているかどうかを確かめることを目的としています。調査は2023年8月の1か月間、工場の品質保証部門での実習の中で行われました。
何を調べたか:工程の観察と、Brix・Polによる純度の算出
著者らはまず、工場の煮詰め(結晶化)工程を直接観察し、現場の担当者への聞き取りや実務への参加を通じて、工程の流れを整理しています。論文によれば、真空釜で濃縮汁を煮詰めて「D」と呼ばれる結晶を含んだ煮詰め液をつくり、冷却したあと遠心分離機にかけます。1回目の遠心分離でD1糖と糖蜜が、2回目でD2糖と呼ばれる糖と分離液が得られます。このD2糖は、次の段階である「C糖」をつくる煮詰めの主原料として釜に投入されると説明されています。
D2糖の純度を求めるために、著者らは二つの測定を組み合わせました。一つはBrix(ブリックス)で、溶液100グラムあたりに溶けている固形分のグラム数を表します。もう一つはPol(ポール)で、偏光計という光を使った装置で測る、溶液100グラムあたりの糖のグラム数です。HKは、PolをBrixで割って百分率で表したものです。
手順としては、D2糖の試料を水で5倍に薄めて均一にかき混ぜ、Brix計で値と温度を読み取ります。読み取った値には温度による補正を加え、さらに薄めた倍率を掛けて元の濃度に戻します。Polについては、試料に清澄用の液と蒸留水を加えて混ぜ、ろ過した液を偏光計で読み取り、換算表を使って値を求めたうえで、同じく希釈倍率を掛けています。
主な結果:D2糖の純度は90%を超えた
論文で示された試料の計算では、Brixの読み取り値が19.2、温度が28.5℃で、温度補正後の値に希釈倍率を掛けたBrixは96.30%でした。Polは読み取り値68.3から換算・補正した値に希釈倍率を掛けて90.9%となりました。
これらからHKは約94.3%と算出され、著者らはD2糖のHKが90%を上回ったと報告しています。この結果をもとに、論文はD2糖がC糖をつくる煮詰め工程の主原料として使用できる状態にあると結論づけています。
この研究が示すこと
製糖工場では、煮詰めと遠心分離を繰り返しながら、途中で生まれる糖や分離液を別の工程の原料として循環させています。この研究は、そうした流れの中でD2糖が次の工程に回せるだけの純度を持っているかを、温度補正と希釈を考慮したBrixとPolの測定という現場の手順で確かめた報告です。
著者らは、HKを正確に測ることが、糖蜜として失われるショ糖を減らし、品質の高い砂糖の結晶を得ることにつながると述べています。身近な砂糖の裏側で、こうした数値による確認が工程ごとに積み重ねられていることを伝える研究といえます。
原著論文の著者・所属:Muhammad Aji Santoso(Program Studi Teknologi Pangan, Fakultas Sains dan TeknologiUniversitas Muhammadiyah Sidoarjo)、Al Machfudz(Program Studi Teknologi Pangan, Fakultas Sains dan TeknologiUniversitas Muhammadiyah Sidoarjo)、Rahmaniah Akhirunnisa(Program Studi Teknologi Pangan, Fakultas Sains dan TeknologiUniversitas Muhammadiyah Sidoarjo)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Muhammad Aji Santoso, Al Machfudz, Rahmaniah Akhirunnisa. Determination of the HK Value (Purity Value) of D2 Sugar After the First Cooking Process of Sulfurized Thick Nira at PG Candi Baru. Indonesian Journal of Innovation Studies 2026-10-07. DOI: 10.21070/ijins.v25i4.2387. 原著ライセンス:CC BY.