著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Journal of Law Politic and Humanities

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

食べ残しなどの食品ロスは、環境や食料安全保障、経済効率に影響する世界的な課題です。論文によると、インドネシアでは食品廃棄物が家庭ごみの最大の構成要素で、観光地の飲食部門も主要な発生源の一つとされています。

研究チームが注目したのは、SNSの普及で広がった「FOMO(フィアー・オブ・ミッシング・アウト)」です。流行や話題から取り残されることへの不安を指します。話題の料理を必要以上に注文するなど、衝動的な消費につながる可能性が指摘されてきました。一方で、料理の味や量といった食事体験も、食べ残しを減らそうとする気持ちに関わると考えられます。

ただ、これまでの研究はこうした要因を個別に扱うことが多く、一つのモデルで同時に検討した例は限られていました。そこで著者らは、インドネシアのバタム島で食の観光を楽しむ人々を対象に、FOMO、味、料理の量が「食品ロスを減らそうとする意図」とどう関係するかを調べました。あわせて、環境に配慮した日頃の消費行動(持続可能な消費行動)が、その間を仲立ちしているかどうかも検討しています。

調査の方法

調査の対象は、18歳以上でバタム島の飲食観光地を訪れたことがあり、SNSで食に関するコンテンツを日常的に見ている人です。研究チームは条件に合う300人からアンケートの回答を集めました。回答者は21〜30歳が過半数を占め、女性がやや多い構成でした。

質問票では、各項目に「まったくそう思わない」から「とてもそう思う」までの5段階で答えてもらいました。分析には構造方程式モデリング(SEM)を使っています。複数の要因の関係を一つのモデルにまとめ、それぞれのつながりの強さや向きを同時に推定する統計手法です。データは一時点の調査で得たもので、実際に捨てた食品の量ではなく、ロスを減らそうとする「意図」を測っています。

主な結果

著者らはもともと、FOMOが強い人ほど食品ロスを減らす意図は弱いと予想していました。ところが分析では逆で、FOMOが強い人ほど削減の意図も高いという正の関係が報告されました。

最も強い関係を示したのは料理の量でした。量が自分に合っているかを重視する傾向は、削減の意図と強く結びついていました。一方、味に関する評価は、削減の意図と直接には意味のある関係を示しませんでした。モデル全体では、削減の意図のばらつきの57.4%を説明できたと報告されています。

持続可能な消費行動の役割は、予想とは異なる複雑な結果になりました。FOMOや味の評価が高い人ほど持続可能な消費行動の得点も高い傾向がありました。ところが、その持続可能な消費行動は、削減の意図と負の関係にありました。そのためこの経路を通じた部分では、FOMOや味が削減の意図を押し下げる方向に働いていたと論文は報告しています。料理の量については、この経路は統計的に意味のある結果になりませんでした。著者らは、量は日頃の消費姿勢を介さず、直接に意図と結びついていると解釈しています。

結果が示すこと

著者らは、FOMOが正の関係を示した理由の一つとして、SNSをよく使う人ほど食品ロス反対のキャンペーンや啓発コンテンツに触れる機会も多い可能性を挙げています。また、持続可能な消費行動が負の関係を示した点については、二つの見方を示しています。一つは、態度と実際の行動が一致しない「態度と行動のギャップ」です。もう一つは「モラル・ライセンシング」で、自分はすでに十分責任ある行動をとっていると感じ、かえって具体的な行動がおろそかになる現象を指します。

この研究は、環境に配慮する姿勢が、そのまま食品ロス削減の意図を後押しするとは限らない可能性を示しています。そのうえで研究チームは、観光地の飲食店などでは、料理の量を選べるようにする取り組みを優先すべきだと提言しています。

原著論文の著者・所属:Rezki Alhamdi(Politeknik Pariwisata Batam, Batam, Kepulauan Riau, Indonesia)、Abd Rahman Yusuf(Politeknik Pariwisata Batam, Batam, Kepulauan Riau, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Rezki Alhamdi, Abd Rahman Yusuf. The Influence of Fear of Missing Out and Culinary Experience on the Intention to Reduce Food Waste with the Mediation of Sustainable Consumption Behavior in Batam Culinary Tourism. Journal of Law Politic and Humanities 2026-09-22. DOI: 10.38035/jlph.v6i6.3831. 原著ライセンス:CC BY.