著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:DISTILAT JURNAL TEKNOLOGI SEPARASI
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:砂糖づくりの「煮詰め工程」を数字で点検する
サトウキビから砂糖をつくる工程には「蒸発工程」があります。搾った汁(ジュース)から水分を飛ばして濃くする工程で、濃縮されたジュースはその後の結晶化工程で砂糖の結晶になります。著者らによると、この工程はエネルギー消費、処理時間、製品の品質に直接関わるため、工場全体の性能を左右します。一方で、エネルギー消費が多いこと、熱が失われること、蒸発効率が十分でないことが課題になりやすいと述べています。
研究チームは、インドネシア・東ジャワ州シドアルジョにある製糖工場PT. PG Candi Baruの蒸発工程を対象にしました。工程に出入りする物質の量(物質収支)と熱の量(エネルギー収支)を計算することで、蒸発の効率を調べ、各蒸発缶の運転状況を評価することを目的としています。
調べた設備と計算の方法
この工場では「五重効用蒸発缶」を使っています。5基の蒸発缶を直列につなぎ、後の缶ほど圧力と温度が下がるように運転する方式です。1基目で発生した水蒸気を2基目の加熱に使い、2基目の水蒸気を3基目に使うというように、蒸気を繰り返し利用します。これにより、外から供給する蒸気の量を抑えられます。蒸発缶は、タービンから出る排気蒸気で間接的に加熱されます。論文によると、1基目に使われるこの蒸気は圧力が約0.7〜0.8 kg/cm²、温度が約110℃です。設備には5基のほかに予備が1基あり、清掃や保守のときに交代で使われます。
各缶の内部は真空に近い減圧状態に保たれています。そのため水は通常より低い約60〜100℃で沸騰し、沸騰する温度は缶によって異なります。減圧の目的は、高温による糖の分解や、焦げて褐色になるカラメル化を防ぐことです。
計算には、工場で実際に測った温度、圧力、ブリックス、流量のデータを使いました。ブリックスとは、液体に溶けている固形分(主に糖)の割合を示す指標です。計算では、運転状態が時間的に安定しているという前提を置いています。物質収支は「入った量と出た量は等しい」という質量保存の考え方で求めました。熱量は二つの熱から計算しています。一つは液体を温めるのに必要な熱、もう一つは水を蒸発させるのに必要な熱(水1 kgあたり2257 kJ)です。
主な結果:ブリックスは60〜65%に上がり、熱損失は各缶で約5%
5基の蒸発缶を通ったジュースは、ブリックスが12〜13%から60〜65%まで上がりました。計算表では、1時間あたり約10万2700 kgの薄いジュースが投入され、最終的に約2万200 kgの濃いジュースとして取り出されています。著者らは、各缶に入る物質と出る物質の量がよく釣り合っており、質量の損失は比較的小さいと報告しています。
エネルギー収支でも、加えた熱の大部分が水の蒸発に使われていました。最も多くのエネルギーを必要としたのは1基目です。1基目ではタービンの排気蒸気を直接使って水を蒸発させるためです。2基目以降は前の缶で出た蒸気を再利用するので、外部から供給する蒸気を大きく減らせるとしています。各缶では、供給した熱のおよそ5%が周囲へ逃げる熱損失として計算されました。著者らは、この程度の損失は五重効用の設備として妥当な範囲だと評価しています。
著者らは、効率が保たれている理由として保守の工夫も挙げています。各缶を順番にアルカリ性の洗浄液で掃除し、熱の伝わりを妨げる湯あか(スケール)や汚れを取り除いていることです。
この研究が示すこと
研究チームは、この工場の蒸発工程が物質とエネルギーの両面で釣り合った状態で運転されていると結論づけました。その理由として、三つの要素の組み合わせを挙げています。排気蒸気の活用、減圧による低温での蒸発、そして蒸気を繰り返し使う多段式の構成です。これらが省エネルギーな運転につながっていると述べています。
著者らは工場への提案も示しています。各蒸発缶に圧力と温度の計測器を追加して缶ごとの効率を把握すること、配管の断熱を強化して熱損失を減らすことの二つです。この研究は、物質と熱の出入りを一つずつ数字で追う方法が、工場の運転状態を点検し、改善点を見つける土台になることを示しています。
原著論文の著者・所属:Devania Augustine Setiawan(Jurusan Teknik Kimia, Politeknik Negeri Malang, Jl. Soekarno Hatta No. 9, Malang 65141, Indonesia)、Izzatul Aulia Azahra(Jurusan Teknik Kimia, Politeknik Negeri Malang, Jl. Soekarno Hatta No. 9, Malang 65141, Indonesia)、Mufid Mufid(Jurusan Teknik Kimia, Politeknik Negeri Malang, Jl. Soekarno Hatta No. 9, Malang 65141, Indonesia)、Muffatah Ryando Kemit(PT. Pabrik Gula Candi Baru, Jl. Raya Candi No.10, Sidoarjo 61271, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Devania Augustine Setiawan, Izzatul Aulia Azahra, Mufid Mufid, et al. PERHITUNGAN NERACA MASSA DAN ENERGI PADA STASIUN PENGUAPAN DI PT. PG CANDI BARU. DISTILAT JURNAL TEKNOLOGI SEPARASI 2026-09-30. DOI: 10.33795/distilat.v12i3.7664. 原著ライセンス:CC BY.