日本関連:この研究は海外機関を中心とする国際共同研究で、日本の研究機関に所属する共著者が参加しています。参加国はベトナム、日本です。
掲載誌:Current Research in Nutrition and Food Science Journal
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
魚のすり身を成形して揚げたフィッシュケーキは、多くの地域で親しまれている加工食品です。この研究で著者らは、原料に食物繊維を加えたときに、製品の性質がどう変わるのかを調べました。
著者らが注目したのは、食物繊維の「種類(由来)」によって結果が違うのかという点です。食物繊維は植物由来の成分ですが、大豆由来のものと果物由来のものでは性質が異なる可能性があります。研究では、揚げた紅ティラピアのフィッシュケーキを対象に、物理化学的な性質、分子どうしの結びつき方、そして全体的な品質への影響が検討されました。
何をどう調べたか
著者らは5種類の食物繊維を用意しました。大豆繊維、市販のシトラス(柑橘)繊維、市販のオレンジ繊維、小麦繊維、そしてサン(Sanh)オレンジ繊維です。これらをそれぞれフィッシュケーキの配合に加え、食物繊維を加えていない対照サンプルと比較しました。
調べた項目には、総脂質量、保水性(食品が水分を保持する力)、白色度、ゲル強度(すり身が固まってできた組織の強さ)が含まれます。さらに分子レベルの変化を見るために、FTIR分析(赤外線でタンパク質などの分子構造を調べる手法)、分子間に働く力の解析、SDS-PAGE(タンパク質を大きさごとに分けて調べる手法)が行われました。得られたデータは主成分分析(PCA)とピアソン相関のヒートマップという多変量解析の手法でも整理されています。
報告された主な結果
著者らの報告によると、総脂質量には有意な影響が見られませんでした。一方で、保水性、白色度、ゲル強度は繊維の種類によって差が出ました。小麦繊維を加えたものが最も高いゲル強度(1120.26 g・cm)を示し、オレンジ繊維とサンオレンジ繊維を加えたものはゲル強度が低めでした。
分子レベルの分析では、FTIR分析から水素結合(分子どうしを結びつける弱い結合の一種)が強まり、タンパク質の二次構造は安定に保たれていることが示されました。著者らはこれを、食物繊維の添加がタンパク質そのものを変性させたのではなく、主に分子間の相互作用を変えたためだと解釈しています。分子間力の解析でも、食物繊維を加えたサンプルでは疎水性相互作用から水素結合へと重心が移っていることが確認されました。SDS-PAGEではタンパク質の分解は見られず、変化はタンパク質のネットワーク(網目構造)のレベルで起きたと考えられています。多変量解析では、ゲル強度と分子間力、物理化学的性質の間に強い関係があることが示されました。
この研究が示すこと
この研究は、フィッシュケーキに食物繊維を加えたときの変化が、繊維の由来によって異なることを具体的に示しました。特に、脂質量はほとんど変わらない一方で、食感に関わるゲル強度や見た目の白さには違いが出るという点は、繊維の選び方が製品の性質を左右しうることを意味します。
また、その変化の仕組みがタンパク質の壊れ方ではなく、分子どうしの結びつき方の違いにあると分子レベルの分析から示された点も、この研究の内容の中心にあります。著者らは、これらの知見が栄養面と食感の両方の品質を高めた機能性フィッシュケーキ製品の開発を考えるうえでの手がかりになると述べています。
著者:Nguyen Cam Huong(1Department of Food Technology, Can Tho University, Can Tho, Vietnam)、Tran Hong Quan(1Department of Food Technology, Can Tho University, Can Tho, Vietnam)、Dang Thi Huynh Nhu(1Department of Food Technology, Can Tho University, Can Tho, Vietnam)、Nguyen Truong Vinh(1Department of Food Technology, Can Tho University, Can Tho, Vietnam)、Phạm Trần Thuỷ Tiên(1Department of Food Technology, Can Tho University, Can Tho, Vietnam)、Le Quynh Anh(1Department of Food Technology, Can Tho University, Can Tho, Vietnam)、Lê Thị Xuân Quỳnh(1Department of Food Technology, Can Tho University, Can Tho, Vietnam)、Atsushi Satô(3School of Biosciences and Biotechnology, Tokyo University of Technology, Hachioji, Tokyo, Japan)、Trần Thanh Trúc(1Department of Food Technology, Can Tho University, Can Tho, Vietnam)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nguyen Cam Huong, Tran Hong Quan, Dang Thi Huynh Nhu, et al. Effects of Dietary Fibers From Different Sources on Physicochemical Properties, Molecular Interactions, and Quality Characteristics of Fried Red Tilapia Fish Cake. Current Research in Nutrition and Food Science Journal 2026-08-31. DOI: 10.12944/crnfsj.14.2.14. 原著ライセンス:CC BY.