著者の所属・活動拠点の国は、グアテマラ、アメリカです。

掲載誌:Annals of Global Health

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の背景と目的

「発育阻害」とは、子どもが本来到達できるはずの身長まで育たない状態を指し、貧困が広がる国々で多く見られます。研究チームによると、発育阻害の背景にある生物学的な過程は子どもの認知発達に悪影響を与え、成長後の慢性疾患のリスクも高めます。身長そのものが発達不良の原因というわけではなく、栄養状態や生活環境を映す目印です。そのため、根本的な原因に取り組むことが重要だとされています。

グアテマラでは5歳未満の子どもの46.5%に発育阻害が見られ、これは世界でも最も高い水準の一つです。特に、農村部の先住民マヤの人々が多い地域で割合が高くなっています。これまでの研究からは、グアテマラの発育阻害の子どもの食事には、頻繁な授乳、「アトーレ」と呼ばれる穀物ベースの飲み物などの炭水化物が多いこと、食品の種類が少ないことといった特徴があると示唆されていました。

ただし著者らによれば、グアテマラや中南米で発育阻害の子どもの食事を調べた研究は、すべて一時点だけを切り取った調査でした。同じ子どもを時間を追って追跡したデータを使った研究はありませんでした。そこで研究チームは、子ども一人ひとりの成長の経過を追ったデータを用いて、授乳と食事のパターンを描き出すことにしました。あわせて、身長の伸びと良い方向・悪い方向に関連する要因を特定することを目指しました。

どのように調べたか

対象は、グアテマラ農村部で発育阻害の子どもを支援する栄養プログラムに参加した子どもたちです。このプログラムでは、月に一度の家庭訪問で身長・体重を測り、前日24時間に何をどれだけ食べたかを聞き取ります。さらに、家族への食料配給、栄養指導、微量栄養素の補給、病気の対応も行っています。研究チームは、この記録を電子カルテから過去にさかのぼって抽出し、分析しました。

最終的な分析対象は、6か月から5歳までの子ども2,352人分、のべ19,476回の訪問記録です。身長の伸びは、同じ年齢・性別の基準となる中央値の身長と何センチ差があるかで評価しました。食事については、さまざまな食品群をどのくらいの頻度で食べたかを調べました。また、世界保健機関(WHO)が乳幼児向けに定めた指標も用いました。具体的には、一定数以上の種類の食品群をとれているか、必要な回数の食事をとれているか、その両方を満たしているか、といったものです。

主な結果

保護者の多くは先住民でマヤ系の言語を話していました。家庭の約4分の3は、中程度から高度の食料不安を抱えていると分類されました。プログラム参加時点で、WHOの基準のうち必要な食事回数を満たす子どもは多数でした。一方、食品の種類の多さの基準を満たす子どもは少数にとどまりました。

モデルによる推定では、授乳の回数は6か月時点の1日11回強から、24か月で1日4回弱、36か月では1日1回未満へと減っていきました。12か月までに毎日食べられるようになっていた食品群は、アトーレとその他の炭水化物だけでした。卵、豆類、肉や魚といった重要なたんぱく源は、個別の食品群としては、推定上「1日1回」の頻度に一度も達しませんでした。肉や魚が「2日に1回」の頻度に達したのは、およそ20か月になってからでした。

身長の伸びと最も強く関連していた要因は、食料不安、1回の食事量、そして授乳の継続でした。食料不安が強いほど伸びは悪く、食事量が多いほど伸びは良い傾向にありました。12〜23か月の授乳継続は良い伸びと関連していましたが、24か月以降はその関連が弱まり、統計的に意味のある差ではなくなりました。さらに、30か月前後を境に関連はマイナスに転じていました。個々の食品群では、卵と肉・魚が身長の伸びと最も強く関連し、果物や野菜がそれに続きました。WHOの指標を満たすことも、良い伸びと関連していました。

この研究が示すこと

著者らは、ほとんどの食品群が身長の伸びと良い方向に関連し、食事量が最も重要な要因だったことから、摂取エネルギーの総量が大きな役割を果たしていた可能性があると考えています。そのうえで、この集団の子どもへの栄養支援では、次の点に重点を置くべきだとしています。食品の種類を増やすこと、卵・豆類・肉や魚・乳製品をより早くから、より頻繁にとること、年齢に合った食事量を確保すること、2歳までは授乳を続けることです。また、食料不安が身長の伸びの悪さと結びつく重要な要因として示されたことから、政策面での対策が必要だとも述べています。

なお、プログラム参加中の子どもは支援を受けていたため、純粋な観察研究と比べて成長が良くなっていた可能性があります。また、示された結果は関連であり、因果関係を断定するものではありません。著者らは、これらの結果がグアテマラや他地域の発育阻害の子ども全体にどこまで当てはまるかは明らかでないとしています。それでもこの研究は、発育阻害の子どもの食事が炭水化物に偏り、たんぱく源の摂取が遅く少ないという実態を、成長の経過とともに具体的に描き出しています。

原著論文の著者・所属:Stephen Alajajian(Wuqu' Kawoq | Maya Health Alliance, Tecpán, Chimaltenango, Guatemala)、Charis Eirené Gudiel de León(Wuqu' Kawoq | Maya Health Alliance, Tecpán, Chimaltenango, Guatemala)、Lilian Carolina Ajú Batz(Wuqu' Kawoq | Maya Health Alliance, Tecpán, Chimaltenango, Guatemala)、Peter Rohloff(Brigham and Women's Hospital, Boston, MA, USA; Wuqu' Kawoq | Maya Health Alliance, Tecpán, Chimaltenango, Guatemala)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Stephen Alajajian, Charis Eirené Gudiel de León, Lilian Carolina Ajú Batz, et al. Breastfeeding and Complementary Feeding Practices of Children with Stunting in Guatemala. Annals of Global Health 2026-08-06. DOI: 10.5334/aogh.5266. 原著ライセンス:CC BY.