著者の所属・活動拠点の国は、スロバキア、ポーランドです。

掲載誌:Metabolites

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

心血管疾患や2型糖尿病などの慢性疾患は、世界的に大きな健康課題です。論文の著者らによると、閉経に伴うエストロゲンの低下は脂質代謝の変化や心血管リスクの上昇と関連し、閉経期は女性の代謝の健康にとって重要な時期とされています。

亜麻仁(フラックスシード)は、植物性のオメガ3脂肪酸であるα-リノレン酸、リグナン、食物繊維などを多く含む食品です。体組成、血糖、脂質などへの影響がこれまでにも調べられてきましたが、著者らは、体格の指標、代謝の指標、コレステロールを運ぶ粒子の細かな内訳をまとめて調べた研究は少ないと指摘しています。そこで研究チームは、閉経期の女性が8週間にわたり亜麻仁をとったとき、代謝の健康に関わる指標がどう変わるかを調べました。

何をどのように調べたか

対象は、一般から募集した45〜55歳の女性34人です。他に明らかな原因がなく12か月連続で月経がない状態を閉経の基準とし、健康状態が良好で、結果に影響しうる薬物治療を受けていない人が参加しました。参加者は普段の食事や運動、生活習慣を変えずに、挽きたての亜麻仁を1日40グラム、8週間とりました。亜麻仁は特定の食品の代わりではなく、普段の食事に加える形でとりました。

研究チームは介入の前後で、空腹時の血液と体の測定値を比べました。血液では総コレステロール、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)、HDLコレステロール、中性脂肪、空腹時血糖、肝臓に関わる酵素(ALT、AST)を測りました。さらに電気泳動という方法で、コレステロールを運ぶリポタンパク質の粒子を種類ごとに分けて調べました。ここには、中性脂肪を多く含む粒子であるVLDLやIDL(中間比重リポタンパク)、また心血管リスクの高さと関連づけられている小さく密度の高いLDL粒子が含まれます。

体については、BMI、体脂肪率、内臓脂肪面積などを測定しました。これらの値と血液検査の値から、腹部の肥満度を表す指標、肝臓への脂肪蓄積を推定する指標(HSI)、内臓への脂質蓄積の目安となる指標(LAP)、インスリンの効きにくさ(インスリン抵抗性)の代わりの目安とされる中性脂肪・血糖指数(TyG指数)とその派生指標を計算しました。同じ人の前後の値を比べる統計手法を使い、多くの項目を同時に比べることによる偶然の差を抑える補正もかけています。

主な結果

8週間後、LDLコレステロールの中央値は1リットルあたり3.34ミリモルから2.89ミリモルに下がり、統計的に有意な変化として報告されました。一方で、総コレステロールは5.51ミリモルから6.18ミリモルへと有意に上がりました。肝臓の酵素ASTはわずかに下がりました。HDLコレステロールと中性脂肪にはわずかな増加、血糖とALTにはわずかな低下の傾向が見られましたが、補正後は有意ではありませんでした。

リポタンパク質の内訳では、VLDLと2種類のIDL(IDL-A、IDL-B)が有意に増えました。著者らは、LDLコレステロールが下がったのに総コレステロールが上がったのは、これらの別の粒子が運ぶコレステロールの変化を反映している可能性があると考えています。小さく密度の高いLDL粒子は減る傾向、LDL粒子の平均サイズは大きくなる傾向を示しましたが、いずれも有意ではありませんでした。

体重やBMI、内臓脂肪面積などの体の測定値、肝臓の脂肪や内臓脂肪、インスリン抵抗性を推定する各種指標には、補正後に有意な変化は見られませんでした。著者らは、これらの間接的な指標に測定可能な変化がなかったことを示すにとどまり、インスリン抵抗性などが存在しない、あるいは影響を受けなかった証拠と解釈すべきではないと述べています。また、参加者の指標はインスリン抵抗性やメタボリックシンドロームを示す値ではなかったものの、多くが境界域やリスク域に近かったと報告しています。

研究が示すこと

著者らは、亜麻仁の摂取に伴う脂質の変化は一様ではなく、LDLコレステロールの低下と同時に総コレステロールや中性脂肪の多い粒子の増加が見られたことから、一律に好ましい変化とはいえないとまとめています。この研究は対照群を置かず、同じ人の前後を比べる探索的な設計で、参加者も34人と少数です。そのため著者らは、観察された変化を亜麻仁だけによるものとは断定できず、仮説を生む段階の結果として慎重に解釈する必要があるとしています。

それでもこの研究は、閉経期の女性で、食品をとった前後にLDLコレステロールだけでなくリポタンパク質の内訳まで追うと、ひとつの数値だけでは見えない複雑な変化が現れることを示しています。また、参加者の多くの指標が境界域に近かったことから、著者らは、この時期の女性の代謝の健康に早めに目を向けることの大切さも指摘しています。

原著論文の著者・所属:Petra Lenártová(Institute of Nutrition and Genomics, Faculty of Agrobiology and Food Resources, Slovak University of Agriculture in Nitra, Trieda Andreja Hlinku 2, 949 76 Nitra, Slovakia)、Martina Gažarová(Institute of Nutrition and Genomics, Faculty of Agrobiology and Food Resources, Slovak University of Agriculture in Nitra, Trieda Andreja Hlinku 2, 949 76 Nitra, Slovakia)、Piotr Ponichtera(Department of Agronomy, Modern Technologies and Informatics, International Academy of Applied Sciences in Łomża, Studencka 19, 18-402 Łomża, Poland)、Katarína Ražná(Institute of Plant and Environmental Sciences, Faculty of Agrobiology and Food Resources, Slovak University of Agriculture in Nitra, Trieda Andreja Hlinku 2, 949 76 Nitra, Slovakia)、Janka Nôžková(Institute of Plant and Environmental Sciences, Faculty of Agrobiology and Food Resources, Slovak University of Agriculture in Nitra, Trieda Andreja Hlinku 2, 949 76 Nitra, Slovakia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Petra Lenártová, Martina Gažarová, Piotr Ponichtera, et al. Linking Flaxseed Intake to Lipid and Metabolic Health: Associations with Metabolic Dysfunction Indices and LDL-Subfractions in Slovak Menopausal Women. Metabolites 2026-10-01. DOI: 10.3390/metabo16100739. 原著ライセンス:CC BY.