著者の所属・活動拠点の国は、マレーシアです。

掲載誌:F1000Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

食べ物を食べた後に血糖値がどれだけ上がるかを示す指標として「グリセミック指数(GI)」が知られています。これと似た考え方で、食後に血液中のインスリンがどれだけ増えるかを、基準となる食品(パンやブドウ糖)と比べて数値化したものが「インスリン指数(II)」です。著者らは、インスリン抵抗性や高インスリン血症への対策として食事の工夫が注目されるなか、GIと並んでIIが食品の性質を知る手がかりになると位置づけています。

一方、インスリンが膵臓で作られる際には「Cペプチド」という物質も一緒に放出されます。Cペプチドの食後の増え方を同じ方法で数値化したものが「Cペプチド指数(CPI)」です。論文によると、代謝や栄養の研究ではIIとCPIが区別されずに使われることがあり、Cペプチドのほうが安定していて血中に長くとどまるという考え方も広まっています。しかし内分泌学の観点からは、インスリンとCペプチドは肝臓での取り込まれ方や体内での処理のされ方が異なり、ホルモン調節の別々の側面を反映しているとされます。そこで研究チームは、IIとCPIに違いがあるのか、両者を互いに置き換えて使ってよいのかを調べました。

何を調べたか

研究チームは新たに食事試験を行うのではなく、すでに発表された研究のデータを集めて比較する方法をとりました。複数の文献データベースを、発表年や言語の制限なしに検索し、糖尿病や前糖尿病のない18〜75歳の健康な人を対象とし、試験食と基準食(パンまたはブドウ糖)を食べた後に血中のインスリンとCペプチドの両方を少なくとも120分間測定した研究を選びました。

指数の値が論文に直接書かれていればそれを使い、書かれていない場合は、論文中のグラフから画像解析ソフトで数値を読み取り、食後の反応の大きさを表す「曲線下面積の増加分」を計算して指数を求めました。データの抽出は2人の著者がそれぞれ独立に行い、結果を照合しています。そのうえで、同じ食品について得られたIIとCPIの組を統計的に比べ、両者の差に加えて、二つの測定方法がどの程度一致するかを評価する「ブランド・アルトマン分析」も行いました。

主な結果

条件を満たした7本の論文から、29の食品についてIIとCPIの組が得られました。比較の結果、IIとCPIには統計的に有意な差があり、中央値はCPIが54.78、IIが48.53と、CPIのほうが高い値を示しました。

一致度の分析では、CPIとIIの差の平均(偏り)が4.749で、両者の差がおおむね収まる範囲(一致の限界)は下限がマイナス15.133、上限が24.63と広いものでした。著者らはこれを、両者の一致が乏しく、ばらつきも大きいことを示すものと解釈しています。また、対象論文の一つ(Lan-Pidhainyらの研究)に含まれていた高インスリン血症の参加者のデータを除いて分析し直しても、両者に有意な差があるという結果は変わらなかったと報告されています。

ただし、すべての食品でCPIがIIを上回ったわけではなく、29食品のうち7食品(24%)ではIIのほうが高くなっていました。研究チームは、CPIが全体として高くなる理由として、インスリンとCペプチドの血中での持続時間の違いや、インスリンが血液に乗って全身に回る前に肝臓で取り込まれる影響を推測しています。また、インスリンの測定法や単位の違い、ブドウ糖の刺激によってインスリンとCペプチドの放出比率が変わること、たんぱく質や脂質がブドウ糖とは別にインスリン分泌に影響することなども、違いを生む要因として挙げています。

この研究が示すこと

著者らは、健康な人ではインスリンとCペプチドが同じ量ずつ作られるとされるにもかかわらず、食後の反応を指数にした場合、CPIをIIの代わりとして使うべきではないと結論づけています。Cペプチドの値でインスリン反応を代用すると、食品がインスリンをどれだけ増やすかを誤って分類したり、研究同士の比較がしにくくなったりするおそれがある、というのが著者らの指摘です。

なお、この研究は公表済みの研究から集めたデータに基づくもので、グラフから読み取った値を含み、元の研究ごとに試験の条件が異なり、個々の参加者のデータは使われていないという限界があることを、著者ら自身が述べています。そのうえで研究チームは、似た名前で語られがちな二つの指標が異なる情報を示していることを数値で示し、研究目的に合った指標を選ぶことの大切さを訴えています。

原著論文の著者・所属:Sriwathi Angeline Hendricks(Independent Researcher, Johor Bahru, Johor, 81300, Malaysia)、Wen Jun Chan(Newcastle upon Tyne England Newcastle University Faculty of Medical Sciences; Nusajaya Johor 79200 Newcastle University Medicine Malaysia)、Jana Gamil Saleh Abdo Mohammed(Newcastle upon Tyne England Newcastle University Faculty of Medical Sciences; Nusajaya Johor 79200 Newcastle University Medicine Malaysia)、Nayuni Manoddya Perumpuliarachchi(Newcastle upon Tyne England Newcastle University Faculty of Medical Sciences; Nusajaya Johor 79200 Newcastle University Medicine Malaysia)、Roshan Mascarenhas(Newcastle upon Tyne England Newcastle University Faculty of Medical Sciences; Nusajaya Johor 79200 Newcastle University Medicine Malaysia)、Bhuwaneswaran Vijayam(Newcastle upon Tyne England Newcastle University Faculty of Medical Sciences; Nusajaya Johor 79200 Newcastle University Medicine Malaysia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sriwathi Angeline Hendricks, Wen Jun Chan, Jana Gamil Saleh Abdo Mohammed, et al. Clarifying the Confusion: A Secondary Method Comparison Analysis of the Insulin Index and C‑Peptide Index in Endocrinology and Clinical Nutrition.. F1000Research 2026-09-08. DOI: 10.12688/f1000research.188770.1. 原著ライセンス:CC BY.