著者の所属・活動拠点の国は、フランスです。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

なぜ新しい全国食事調査が必要だったのか

人々が何をどれだけ食べ、どのような栄養状態にあるかを知ることは、栄養の推奨や病気の予防策を考えるうえでの土台になります。フランスでは、1998年から2015年にかけて実施されたINCA調査や、調理や食行動を扱ったCCAF調査などが、国民の食生活について詳しい情報を提供してきました。これらの調査からは、食習慣が時代とともに大きく変わってきたことが示されており、データを定期的に更新する必要性が指摘されていました。

海外には、英国の全国食事栄養調査のように食事を継続的に監視する仕組みがあります。メキシコの全国保健栄養調査は2020年から毎年データを集める方式に移り、身体計測や血液検査も組み合わせています。こうした流れを踏まえ、研究チームは、フランスの人々が食べている食品や飲み物、栄養素の摂取量と推奨量との比較、体格指数(BMI)、身体活動や座りがちな生活などについて、最新で継続的な全国データを得るための調査「Nutrimetry」を設計しました。論文では、その調査方法と参加状況を説明し、初年度に集まった食事データの質を初めて評価しています。

どのように調査したのか

Nutrimetryは、2024年2月からフランス本土で続けられている調査です。毎回異なる人々を対象に、その時点の状態を調べます。対象は3〜17歳の子どもと18〜79歳の大人です。本調査の前に、2024年1月に756人を対象とした試験調査が行われました。その結果、謝礼を20ユーロにしても40ユーロにしても、回答を最後まで終える割合に統計的に意味のある差は見られませんでした。一方、記録する日を指定しない方が、大人では完了率が高くなりました。この結果から、本調査では謝礼を20ユーロとし、記録日を指定しない方式が採用されました。

参加者はFacebookとInstagramの広告で募集されました。性別、年齢、職業区分、世帯の形態、地域、居住地の都市規模などについて、国勢調査の構成に近づくよう人数の枠(割当)を設けて集めています。子どもについては、親または法定後見人が代わりに回答しました。参加者はオンラインで3日間の食事日記をつけました。1日を朝食・昼食・夕食と7回の間食の機会に分け、食べた量は標準的な分量写真を参考に入力します。そのほか、身長と体重の自己申告、国際的な身体活動質問票、睡眠時間、食料不安などについても尋ねました。

集めたデータは、性別や年齢などの構成が全国の人口と一致するように重み付けで補正されました。料理は原材料にまで分解し、54種類の栄養素について摂取量を計算できる体制を整えています。

食事データの質を確かめるため、研究チームは「過少申告」の多さに注目しました。過少申告とは、実際より少なく食事を記録してしまうことです。ここでは、申告されたエネルギー摂取量を、基礎代謝量(安静時に消費するエネルギー)の推定値と比べました。基礎代謝量は、年齢・性別ごとに用意された計算式を使い、参加者が自己申告した身長・体重から算出されています。そのうえで、身体活動の水準を考えると、その人の申告量が生活を維持するのに少なすぎるかどうかを判定しています。

主な結果

大人の募集では、広告が約78万人に届き、そのうち2万9,593人が回答を始め、3,281人が最後まで終えました。条件の確認や割当の調整を経て、最終的な大人の参加者は2,193人です。これは回答を始めた人の約7%にあたります。子どもについては、募集用の質問票に答えた親2,228人のうち、最終的に1,008人の子どもが調査に含まれました。

重み付けをする前の大人の参加者は、女性が62.6%を占めていました。全国の女性の割合は51.3%です。また、小さな自治体の住民や一般従業員の職業区分の人が多く、男性、高齢者、大都市の住民は少なめでした。重み付け後は、全国人口の構成に沿う形になったと報告されています。

食事日記は、子どもで3,024日分、大人で6,579日分が集まりました。記録は曜日にも季節にも広く分散していましたが、試験調査に充てた1月があるため、冬の記録は少なくなっています。平均エネルギー摂取量は、子どもで1日1,693キロカロリー、大人で1,852キロカロリーでした。

過少申告と判定された人の割合は、子どもで22.6%、大人で33.8%でした。子どもでは年齢が上がるほど増え、3〜5歳では17.6%でしたが、15〜17歳では36.8%に達しました。特に高いのは、35〜49歳の男性の42.1%と、15〜17歳の男子の40.0%です。大人での分析では、BMIが高い人ほど過少申告が多く、年齢が高い人ほど少ないという関連が見られました。また、申告量が妥当と判定された人は、過少申告と判定された人より、菓子パン・焼き菓子、アイスクリーム、菓子・チョコレートなどの記録量が多くなっていました。たとえば菓子パン・焼き菓子は、1日平均60.3グラムに対して35.2グラムです。著者らは、エネルギーの多い間食が選択的に少なく申告されている可能性を示唆しています。

この研究が示すこと

著者らは、この調査によって、オンラインで全国の食事を継続的に監視することがフランスで実現可能だと示されたとしています。一方で、回答を始めた大人のうち最終的に残ったのは約7%にとどまり、参加者の継続が大きな課題であることも明らかになりました。

研究チームは、いくつかの限界も挙げています。SNSで募集したため、高齢の参加者はデジタル機器に慣れた人や健康への関心が高い人に偏っている可能性があり、重み付けでは十分に補正できないこと。身長と体重が自己申告で、基礎代謝量もその値から計算されているため、BMIと過少申告の関連の一部は測定誤差によるものかもしれないこと。生体指標による検証が行われておらず、サプリメントの使用も記録されていないことなどです。

過少申告は無作為に起きるのではなく、特定の集団や食品に偏って生じるようです。そのため、食事調査から得られる摂取量の数値は、こうした報告のずれを考慮して読み取る必要があります。この研究は、新しい継続調査の仕組みを示すとともに、自己申告による食事データを扱う際の注意点を具体的な数字で示しています。

原著論文の著者・所属:Elena Sauvage(Trend & People, C-ways, Paris, France)、Jean-Michel Lecerf(Nutrition Department, Institut Pasteur de Lille)、Victoria Dupuis(Trend & People, C-ways, Paris, France)、Coralie Berthier(Nutrition Department, Institut Pasteur de Lille)、Pascale Hébel(Trend & People, C-ways, Paris, France)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Elena Sauvage, Jean-Michel Lecerf, Victoria Dupuis, et al. Design and methodology of a continuous national dietary and nutrition survey in France: the Nutrimetry study. Frontiers in Nutrition 2026-08-24. DOI: 10.3389/fnut.2026.1909933. 原著ライセンス:CC BY.