著者の所属・活動拠点の国は、イランです。
掲載誌:JAND Global Reports
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
食事内容を記録してたんぱく質などの摂取量を確かめるために、スマートフォンの健康管理アプリを使う人が増えています。研究チームは背景として、植物性中心の食事では食事から得られるたんぱく質の量と質が低下するため、健康的な植物性の食事を組み立てるには正確な食品情報が必要だと述べています。
たんぱく質は、食品に含まれる量がそのまま体で利用されるわけではありません。食品の組織構造(食品マトリックス)や加熱・発酵などの加工によって、消化・吸収されて体が利用できる割合が変わります。著者らは、こうした利用されやすさ(生体利用性)を市販アプリがどの程度正確に反映しているかは分かっていないとして、植物性たんぱく質に関するアプリの表示を検証しました。
何を調べたか
調査対象は、広く使われている市販の食事記録アプリ5種(MyFitnessPal、Cronometer、FatSecret、Lose It!、Lifesum)です。研究チームは、構造や加工の違いを代表する植物性食品6品目について、各アプリのデータベースに登録された情報を一時点で比較する「横断的なデジタル監査」を行いました。
主な評価項目は、アプリが示すたんぱく質の量と、体が実際に利用できるたんぱく質の量との差を百分率で表した誤差です。後者は、既存の文献にある「DIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)」を用いて算出されました。DIAASは、体内で合成できず食事から取る必要がある必須アミノ酸が、どれだけ消化・吸収されるかをもとにたんぱく質の質を評価する指標です。アプリ間の誤差は、平均値と標準偏差によって整理されました。
主な結果
論文によると、調べたアプリはいずれも、食品の構造や加工がたんぱく質の利用されやすさに与える影響を考慮していませんでした。
具体的には、利用可能なたんぱく質を、ゆでたレンズ豆では25.0%、ローストしたピスタチオでは4.2%多く見積もっていました。反対に、発酵食品のテンペについては、たんぱく質の質を3.36%低く見積もっていたと報告されています。
また、豆から特定の成分を分けて取り出す処理(分画)の違いも反映されていませんでした。生のグリーンピースでは38.9%の過大評価が見られた一方、エンドウ豆たんぱく質を抽出・濃縮した「ピープロテインアイソレート」については、たんぱく質の質が生物学的に優れている点が示されていなかったとされています。
研究が示すこと
著者らは、市販の食事記録アプリのデータベースには系統的なずれがあり、意図せず利用者に植物性たんぱく質の実際の利用されやすさについて誤った印象を与えていると結論づけています。そのうえで、栄養指導の現場で食事記録を安全に活用するには、生体利用性を考慮した計算方法で食品成分データベースを刷新することが欠かせないと述べています。
この研究は、アプリに表示されるたんぱく質の「量」が、体が利用できる「質」を伴った量と必ずしも一致しないことを、植物性食品を例に示したものといえます。
原著論文の著者・所属:Parsa Moghri(Department of Nanobiotechnology and Biomimetics, School of Life Science Engineering, College of Interdisciplinary Science and Technologies, University of Tehran, North Karegar Ave, Tehran, 14399-57131, Iran)、Ayda Fayazi(Health Information Management and Medical Informatics Department, School of Allied Medical Sciences, Tehran University of Medical Sciences, Tehran, Iran)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Parsa Moghri, Ayda Fayazi. A Cross-Sectional Audit of Commercial Mobile Health Application Databases for Plant-Based Protein Quality. JAND Global Reports 2026-08-23. DOI: 10.1016/j.jaglob.2026.100028. 原著ライセンス:CC BY.