著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:Plant Science Today

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

雑草対策と散布作業の課題

稲の収量は、田んぼに生える雑草との競合によって大きく左右されます。とくに、苗を植えずに種を直接田んぼにまく「直播(ちょくはん)栽培」や、水を張り続けずに育てる栽培方式では、稲と雑草がほぼ同時に芽を出すため、雑草対策が重要になります。

雑草対策では今も除草剤が重要な役割を担っています。しかし、背負い式の噴霧器や、横に長い散布ブームを備えた機械による従来の散布には課題があります。人手不足、水を張った田んぼに機械が入りにくいこと、薬剤のかかり方のむら、薬剤を薄めて運ぶための大量の水、作業者が薬剤を浴びるおそれなどです。

この論文の著者らは、こうした課題を背景に、無人航空機(ドローン)を使った稲作での除草剤散布について、2010年から2026年までに発表された研究を批判的に検討しながらまとめる総説を行いました。

何を調べたのか

総説が扱った範囲は、水田雑草の生態、散布した薬剤が作物や雑草にどれだけ付着するか、薬剤が風などで目的外の場所へ流れる「ドリフト」、稲への薬害の有無、田んぼでの除草効果、経済性、環境への影響、そして普及を妨げる要因です。散布の技術的な側面から、現場で導入する際の条件まで、幅広い観点から既存の研究が整理されています。

報告された主な結果

論文によると、実際の水田で得られた知見からは、生育初期の条件を整えた場合、ドローンによる除草剤散布で約81.8〜95.6%の除草効率が得られることが示されています。

直播栽培の例では、2種類の除草剤(プレチラクロールに続いてビスピリバックナトリウム)を、1ヘクタールあたり30〜40リットルの散布液量でドローン散布しました。その結果、種まきから30日後の除草効率は89.2〜91.9%でした。これは、1ヘクタールあたり500リットルを使う背負い式噴霧器での散布と同程度だったと報告されています。

稲作で好ましいとされた運用条件の幅も示されています。散布液量は1ヘクタールあたり30〜45リットル、薬剤の粒の大きさは約150〜250マイクロメートル、飛行高度は1.5〜2.5メートル、飛行速度は毎秒2〜5メートルです。ただし著者らは、これらの値は除草剤の種類、雑草の生育段階、稲の茂り方、天候によって変わると注意しています。

一方で課題も挙げられています。少ない液量で散布する方式では、風、薬液の蒸発、葉や茎に遮られて薬剤が届きにくくなること、ドリフト、機器の設定(校正)の誤差などの影響を受けやすくなります。

この総説が示すこと

著者らは、ドローンの導入が最も理にかなうのは、水が張られている田んぼ、小さく分散した田んぼ、人手が足りない地域など、適切な時期に除草剤をまくことが難しい場面だとしています。

そのうえで、ドローンによる除草剤散布は従来の雑草防除をそのまま置き換えるものではないと述べています。正しく設定して使う精密な道具として、複数の手段を組み合わせる総合的な雑草管理の中に位置づけるべきだというのが、この総説の結論です。少ない水で従来の方法に近い効果が報告される一方、条件次第で効果が左右されることもはっきり示されました。

原著論文の著者・所属:M Gnanaguru(Department of Agronomy, V. O. Chidambaranar Agricultural College and Research Institute, Tamil Nadu Agricultural University (TNAU), Killikulam 628 252, Tamil Nadu, India)、M Hemalatha(Department of Agronomy, V. O. Chidambaranar Agricultural College and Research Institute, Tamil Nadu Agricultural University (TNAU), Killikulam 628 252, Tamil Nadu, India)、T Ragavan(Department of Agronomy, Agricultural College and Research Institute, Tamil Nadu Agricultural University (TNAU), Madurai 625 104, Tamil Nadu, India)、S Sriramajayam(Department of Renewable Energy Engineering, Agricultural Engineering College and Research Institute, Tamil Nadu Agricultural University (TNAU), Coimbatore 641 003, Tamil Nadu, India)、K Manikandan(Department of Soil Science and Agricultural Chemistry, V. O. Chidambaranar Agricultural College and Research Institute, Tamil Nadu Agricultural University (TNAU), Killikulam 628 252, Tamil Nadu, India)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):M Gnanaguru, M Hemalatha, T Ragavan, et al. Drone-based herbicide application in rice: Current status, field performance and future prospects. Plant Science Today 2026-09-21. DOI: 10.14719/pst.15559. 原著ライセンス:CC BY.