著者の所属・活動拠点の国は、フランス、オランダ、ドイツです。
掲載誌:Ecological Indicators
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
アグロエコロジーとは、生態系の仕組みを生かしながら、農業や食料システムをより持続可能にしていこうとする考え方や実践のことです。著者らは、アグロエコロジーを、より持続可能な食料システムを築くうえで重要なものと位置づけています。一方で、公共政策がアグロエコロジーの拡大をどの程度支えられるのかは、まだはっきりしていないといいます。
著者らはその理由の一つとして、政策のこうした力を評価するには、アグロエコロジーのさまざまな側面を十分にとらえる複数の指標が必要になる点を挙げています。そこで研究チームは、欧州連合(EU)の政策で使われている指標と、アグロエコロジーの実践者が重視する指標を、テーマごとに比べました。
何を比べたのか
研究チームは、アグロエコロジーの側面として、生物多様性、気候変動の緩和、気候変動への適応、農場の社会経済的な成果の四つに注目しました。まず、アグロエコロジーの指標に関する科学文献をもとに、それぞれの側面に含まれる関連テーマを洗い出しました。
次に、テーマごとに二種類の指標を比べました。一つは、EUの主要な農業政策や環境政策の監視に使われている指標です。もう一つは、欧州の11か所のリビングラボで、アグロエコロジーの実践者が最も重要だと考えた指標です。リビングラボとは、現場の関係者が参加し、実際の環境の中で協働して取り組みを進める拠点のことです。
主な結果
論文によると、全28テーマのうち8テーマで「テーマの不一致」が確認されました。政策の指標は25テーマを、実践者の指標は21テーマを扱っており、両方が扱っていたのは20テーマでした。
両方が扱っていた20テーマについても、さらに食い違いが報告されています。18テーマでは、政策と実践者が異なる指標を使っていました(指標の不一致)。15テーマでは、似た指標を使っていても定義が異なっていました(定義の不一致)。17テーマでは、似た指標でも測定する規模(スケール)が異なっていました(規模の不一致)。
著者らはこれらの結果から、現在EUの政策で使われている指標は、アグロエコロジーの多面的な側面を十分にとらえていないと結論づけています。そのうえで、利用できるデータや手法にもとづき、政策の指標を16項目新たに加え、既存の5項目を見直すことを提言しています。
研究が示すこと
この研究は、政策が測っているものと、現場の実践者が大切だと考えているものの間に、扱うテーマ、指標の選び方、定義、測る規模といった複数の点でずれがあることを示しています。著者らは、指標の追加や見直しを、EUの政策がアグロエコロジーの拡大を支える力を高めるための手段として提案しています。
原著論文の著者・所属:Cian Blaix(INRAE, Université Clermont Auvergne, VetAgro Sup, UMR Herbivores, Saint-Genès-Champanelle, France; Université de Toulouse, INRAE, UMR DYNAFOR, Castanet-Tolosan, France)、Cecilia Zagaria(Farming Systems Ecology Group, Wageningen University and Research, P.O. Box 430, 6700, AK, Wageningen, the Netherlands)、Elizabeth A. Finch(Department of Biodiversity and People, Helmholtz-Centre for Environmental Research – UFZ, Leipzig, Germany; German Centre for Integrative Biodiversity Research (iDiv) Halle-Jena-Leipzig, 04103 Leipzig, Germany; Institute of Biodiversity, Ecology and Evolution (IBEE), Friedrich Schiller University Jena, Jena, Germany)、Guy Pe’er(Department of Biodiversity and People, Helmholtz-Centre for Environmental Research – UFZ, Leipzig, Germany; German Centre for Integrative Biodiversity Research (iDiv) Halle-Jena-Leipzig, 04103 Leipzig, Germany)、Bertrand Dumont(INRAE, Université Clermont Auvergne, VetAgro Sup, UMR Herbivores, Saint-Genès-Champanelle, France)、Clelia Sirami(Université de Toulouse, INRAE, UMR DYNAFOR, Castanet-Tolosan, France)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Cian Blaix, Cecilia Zagaria, Elizabeth A. Finch, et al. Indicators used by EU policies do not sufficiently match those needed to expand agroecology. Ecological Indicators 2026-09-22. DOI: 10.1016/j.ecolind.2026.115529. 原著ライセンス:CC BY.