著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。
掲載誌:Toxicology Mechanisms and Methods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ネオニコチノイド系殺虫剤は1990年代に、有機リン系やカーバメート系、塩素系炭化水素といった毒性の強い従来型殺虫剤に代わるものとして登場し、現在では世界で最も広く使われている殺虫剤のグループになっています。一方で、ミツバチなどの花粉を運ぶ昆虫や、害虫を食べる益虫、さらには昆虫を食べる鳥にも強い毒性を示すことが問題とされています。
研究チームは、こうした殺虫剤の影響を調べる研究を進めるために、ネオニコチノイドとその代謝物(体内や環境中で元の物質が変化してできる物質)を測定する分析法を開発しました。本稿は論文の抄録に基づいて紹介します。
どのように測定法をつくったか
著者らが用いたのは、液体クロマトグラフィーで試料中の成分を分離し、エレクトロスプレーイオン化で電気を帯びた状態にしたうえで、二段階の質量分析(タンデム質量分析)で検出する手法です。最初の対象はイミダクロプリド、クロチアニジン、ニテンピラムの3種類でした。標準物質を使って、それぞれの物質に特有の壊れ方(断片化)を狙って検出する条件を最適化し、超高速液体クロマトグラフィーで成分を分離しました。
ところが、抗体を使った簡易検査(ELISA)でネオニコチノイド陽性とされた哺乳類の試料を、この方法で調べたところ、元の3種類の物質はいずれも検出されませんでした。そこで、研究者からの要望を受けて、6-ヒドロキシニコチン酸、イミダクロプリド尿素体、イミダクロプリドオレフィン体、デスニトロイミダクロプリド、5-ヒドロキシイミダクロプリドなど、8種類の代謝物も測定対象に加えられました。
論文によると、この方法は、濃度に比例した応答が得られるか、どこまで低い濃度を検出・定量できるか、測定の再現性や正確さ、他の成分と区別できるかなど、多くの項目で検証されました。定量できる最低濃度は、大半の物質で0.1ppb(10億分の0.1)でしたが、デスニトロイミダクロプリドと5-ヒドロキシイミダクロプリドは1ppbを上回りました。
食品を使った試験的な測定の結果
方法の有用性を確かめるため、著者らは試験的な研究として、抽出処理した食品の試料にこの方法を適用しました。その結果、赤ブドウからはイミダクロプリドが、ピクルスからはイミダクロプリドとクロチアニジンが検出されたと報告されています。
また、はちみつ4試料のうち2試料から、イミダクロプリドの代謝物である6-ヒドロキシニコチン酸が5ppbを超える濃度で検出されました。著者らは、この結果をミツバチの群れの崩壊を研究する研究者にとって懸念される点として挙げています。
この研究が示すこと
この研究は、殺虫剤そのものだけでなく、その代謝物まで含めて低い濃度で測定できる方法を示したものです。簡易検査で陽性とされた試料から元の物質が見つからなかったという経験が、代謝物を測定対象に加えるきっかけになった点も特徴です。ネオニコチノイドの影響を調べる研究において、元の物質と代謝物の両方を把握する手段の一つとなることが、研究チームの報告から読み取れます。
原著論文の著者・所属:Andreas F. Lehner(Section of Toxicology, Michigan State University Veterinary Diagnostic Laboratory)、Julia Dickie(Section of Toxicology, Michigan State University Veterinary Diagnostic Laboratory)、Justin Zyskowski(Section of Toxicology, Michigan State University Veterinary Diagnostic Laboratory)、John Buchweitz(Department of Pathobiology & Diagnostic Investigation, College of Veterinary Medicine, Michigan State University; Section of Toxicology, Michigan State University Veterinary Diagnostic Laboratory)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Andreas F. Lehner, Julia Dickie, Justin Zyskowski, et al. Analysis of neonicotinoid pesticides and their metabolites by liquid chromatography–electrospray ionization–tandem mass spectrometry. Toxicology Mechanisms and Methods 2026-09-22. DOI: 10.1080/15376516.2026.2736531. 原著ライセンス:CC BY.