著者の所属・活動拠点の国は、オーストラリアです。

掲載誌:Food Chemistry

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

オーツ麦、アーモンド、大豆などから作る植物性ミルクは利用が広がっています。製品のたんぱく質量を正しく測ることは、栄養成分表示や品質管理に欠かせません。しかし、たんぱく質の測定法はそれぞれ異なる性質を手がかりにしているため、同じ試料でも方法によって値が変わることがあります。特に、たんぱく質以外の窒素化合物や測定を妨げる成分を含む複雑な食品では、その差が大きくなる可能性があります。

研究チームは、牛乳と植物性ミルクについて代表的な測定法を同じ条件で比べ、それぞれの長所と弱点を明らかにすることを目指しました。

何をどう調べたか

対象は、オーストラリア・シドニーのスーパーで購入した常温保存可能なロングライフ(超高温殺菌)のオーツ麦、アーモンド、大豆、牛乳の4種類で、いずれも1ブランドの製品です。著者らは、この研究の目的は製品を広く調査することではなく、成分の異なる飲料で各測定法がどう働くかを確かめることだと説明しています。4種類は脂肪、たんぱく質、糖の量が異なり、たんぱく質は100mLあたり0.6〜3.4gの範囲にわたります。

比較した主な方法は次のとおりです。たんぱく質を分解してアミノ酸の量から総量を求める液体クロマトグラフィーによるアミノ酸分析、試料中の窒素量に換算係数を掛けて推定する元素分析、たんぱく質に結合する色素の発色を測るブラッドフォード法、たんぱく質の分子振動を光で捉えるラマン分光法とATR-FTIR(赤外分光法の一種)です。あわせて、紫外線280nmでの吸収を測る方法も試しました。さらに、ブラッドフォード法の色素がたんぱく質の立体構造に影響するかを、円二色性(CD)という測定で調べています。

主な結果

アミノ酸分析は再現性のよい結果を示しました。推定たんぱく質量は1mLあたり、牛乳27.7mg、大豆26.70mg、オーツ麦6.11mg、アーモンド6.03mgで、いずれも製品の表示値より低い値でした。詳しい情報が得られる一方、試料の前処理に手間がかかり、分解に最大24時間を要する点が課題とされています。

元素分析は速く安定した推定ができましたが、たんぱく質由来の窒素とそれ以外の窒素を区別できません。結果はどの換算係数を使うかに大きく左右されました。紫外線280nmの吸収を測る方法は、純粋なたんぱく質ではうまく働くものの、光を散乱させるミルクには向かないと報告されています。

ブラッドフォード法では、基準に使うたんぱく質によって結果が変わりました。一般的な牛血清アルブミン(BSA)を基準にすると、牛乳は1mLあたり42.9mgとなり、表示値やアミノ酸分析の値を大きく上回りました。牛乳のカゼインなどを基準にすると表示値に近づき、基準物質の選び方が重要であることが示されました。CD測定では、色素を加えるとたんぱく質ごとに異なる構造変化が見られ、これが基準物質による反応の違いを裏付ける結果となりました。

785nmのレーザーを使うラマン分光法は、複雑なミルク成分が発する蛍光に妨げられ、測定が制限されました。

ATR-FTIRは、少量の試料をそのまま載せて測れる簡便さに加え、検量線が高い直線性(R²=0.997)を示しました。著者らは、水の信号を差し引く処理と検量の工夫によって精度を確保しています。牛乳35mg、大豆30mg、アーモンド7.7mg(いずれも1mLあたり)という値が得られ、ミルクに既知量のたんぱく質を加える試験でも、アーモンド、大豆、牛乳でおおむね妥当な回収率でした。一方、たんぱく質の少ないオーツ麦は定量できる下限を下回り、その値は目安程度にとどまるとされています。

研究が示すこと

この研究は、同じミルクでも測定法によってたんぱく質量の値が異なり、方法ごとに得意・不得意があることを具体的に示しました。著者らは、目的や試料の性質、作業上の制約に合わせて測定法を選ぶことが重要だとし、その中でATR-FTIRを、速く簡便な方法として有望だと評価しています。

ただし、調べたのは各種類1ブランドの製品だけです。著者らは、報告した数値を植物性ミルク全般に当てはめるには、より多くの製品やブランド、ロットでの確認が必要だと述べています。

原著論文の著者・所属:Nima Shadmehri(Australian Research Council Training Centre for Facilitated Advancement of Australia's Bioactives (FAAB), Sydney, NSW 2109, Australia; School of Natural Sciences, Macquarie University, Sydney, NSW 2109, Australia)、Tina Nduaya Kayeye(Australian Research Council Training Centre for Facilitated Advancement of Australia's Bioactives (FAAB), Sydney, NSW 2109, Australia; School of Natural Sciences, Macquarie University, Sydney, NSW 2109, Australia. Electronic address: [email protected])、Yuling Wang(Australian Research Council Training Centre for Facilitated Advancement of Australia's Bioactives (FAAB), Sydney, NSW 2109, Australia; School of Natural Sciences, Macquarie University, Sydney, NSW 2109, Australia)、Alison Rodger(Australian Research Council Training Centre for Facilitated Advancement of Australia's Bioactives (FAAB), Sydney, NSW 2109, Australia; Research School of Chemistry, The Australian National University, Canberra, ACT 2601, Australia)、Koushik Venkatesan(School of Natural Sciences, Macquarie University, Sydney, NSW 2109, Australia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nima Shadmehri, Tina Nduaya Kayeye, Yuling Wang, et al. Evaluating protein quantification methods in long-life dairy and plant-based milk alternatives. Food Chemistry 2026-10-08. DOI: 10.1016/j.foodchem.2026.151513. 原著ライセンス:CC BY.