この研究は、インド、イランの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Chemical and Biological Technologies in Agriculture
ライセンス: CC BY-NC-ND 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
牛乳や乳製品は、豊富な栄養素と多様な生理活性成分を持つことから、古くから人間の食生活の中心的な存在とされてきました。しかし近年、乳糖不耐症や牛乳アレルギー、さらには環境の持続可能性への関心の高まりを背景に、動物由来のミルクから、大豆やアーモンド、オーツ、米などの植物・穀物由来の代替ミルクへと関心が広がっているといいます。今回紹介する総説論文は、こうした動物性ミルクと植物性ミルクの特徴を整理しつつ、特に「雑穀ミルク」に注目してその可能性を検討したものです。
研究でわかったこと
この総説では、牛・水牛・ヤギ・ラクダといった動物種由来のミルクと、大豆ミルク、アーモンドミルク、オーツミルク、米ミルク、ココナッツミルク、そして雑穀ミルクといった植物由来のミルクを対象に、それぞれの成分構成、発酵させた場合の可能性、健康への関わり、想定されるリスクについて既存の知見を横断的に整理しています。
その中で雑穀ミルクは、グルテンを含まない高品質なたんぱく質や食物繊維、ゆっくりと消化される炭水化物を含む、新しい持続可能なミルク源として位置づけられています。論文では、こうした特徴が血糖値やコレステロール値の調整に役立つ可能性が示唆されているとしつつ、雑穀のアミノ酸組成は動物性たんぱく質と比べて偏りがあるため、他の食品で補う必要がある場合があるとも指摘されています。
さらにこの総説は、ミルクや発酵乳製品が持つとされる健康関連の働きについて、脂質代謝への関与、カルシウム吸収、腸内細菌叢への影響、抗酸化作用といった仕組みの面からも整理しています。一方で、ミルクたんぱく質に対する免疫反応であるカゼインアレルギー、乳糖分解酵素の働きが低下することによる乳糖不耐症、一部の植物性ミルクに含まれる植物エストロゲンによるホルモンへの影響の可能性など、留意すべき点についても触れられています。また発酵の過程は、抗栄養成分を減らして消化しやすくし、プロバイオティクスを増やすなど、動物性・植物性いずれのミルクにおいても機能性を高める重要な工程として位置づけられています。加えて、心血管疾患や骨粗鬆症、がんといった疾患の発症・予防に関わりうるミルク成分についても、メカニズムの観点から検討が加えられています。最後に、ミルク生産に伴う環境面での課題が取り上げられ、雑穀ミルクが新たな再生可能なミルク源の一つとして紹介されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この論文は、実験によって新しい結果を得たものではなく、既存の研究知見を集めて整理した「総説(レビュー)」です。そのため、雑穀ミルクをはじめとする植物性ミルクの健康への関わりについては、あくまでこれまでの報告に基づく整理・考察であり、この論文自体が特定の効果を証明したわけではない点に注意が必要です。また要旨では、雑穀ミルクのアミノ酸組成が動物性たんぱく質を完全に代替するには課題が残ることや、アレルギーやホルモンへの影響といった懸念点にも触れられており、良い面とリスクの両方が扱われています。
まとめ
この総説は、動物性ミルクと植物性ミルクの栄養特性や健康との関わり、発酵による変化、そして環境面での持続可能性を横断的に見渡し、その中で雑穀ミルクを新しい選択肢の一つとして紹介しています。乳糖不耐症やアレルギー、環境負荷といった課題に対して植物性ミルクがどのような可能性と限界を持つのか、今後の研究の広がりを考えるうえで参考になる内容といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):栄養、健康、持続可能性に焦点を当てた植物性ミルク代替品:雑穀ミルクを中心に(ケミカル・アンド・バイオロジカル・テクノロジーズ・イン・アグリカルチャー・2026年05月)
著者:Vishavjeet Rathee(Department of Life Sciences, School of Biosciences and Technology, Galgotias University)、Dravin Pratap Singh(Department of Biomedical Sciences, School of Biosciences and Technology, Galgotias University)、Ila Singh(Animal Biotechnology Centre, National Dairy Research Institute)、Ekta Chauhan(Hemvati Nandan Bhauguna Garhwal University)、Sonali Kumar(Department of Biotechnology, Lingayas Vidyapeeth)、Yogesh K. Ahlawat(Allied Health Sciences, Datta Meghe Institute of Higher Education and Research)、Avni Vij(Department of Biotechnology, School of Allied and Health Sciences, CGC University)、Fatemeh Shahdadi(Department of Food Science and Technology, Faculty of Agriculture, University of Jiroft)、Jitender Kumar Bhardwaj(Reproductive Physiology Laboratory, Department of Zoology, Kurukshetra University)、Sachin Gupta(Department of Robotics and Control, School of Electronics and Electrical Engineering, Lovely Professional University)