豆乳やオーツミルクといった植物性飲料は、動物性の牛乳と違って自然の状態ではビタミンDをほとんど含みません。そのため多くの製品では、ビタミンDを人工的に添加する『強化』が行われています。ただし、原料となる植物の種類によって栄養成分にどれくらい差があるのか、また消費者が実際にどのような理由でこれらの飲料を選んでいるのかは、これまで体系的にはあまり整理されていませんでした。この研究では、ビタミンDで強化された植物性飲料(FPBB)を対象に、栄養成分の実態と消費者の利用実態を三つの方法で調べています。

どのように調べたのか

研究チームは三段階の手法を組み合わせました。まず、2010年から2025年までの全国的な登録データベースをさかのぼって調べ、ビタミンD強化植物性飲料167件の栄養成分を分析しました。次に、実際に店頭に並ぶ製品111件を対象とした市場調査を行いました。さらに、消費者225人を対象にアンケート調査を実施し、どのような理由でこれらの飲料を飲んでいるか、どのくらいの頻度と量で摂取しているかを尋ねています。

研究でわかったこと

登録データベースの分析では、ココナッツを原料とする飲料のビタミンD含有量が平均0.84μg/100mLと最も高い値を示しました。一方、店頭で実際に販売されている製品を対象にした市場調査では、オーツ麦を原料とする飲料が平均0.91μg/100mLと最も高く、二つの調査で結果が異なっていました。

成分のばらつきについても統計的な検討が行われています。大豆、ナッツ類、ココナッツ、穀物、複数原料をブレンドしたものという五つの原料カテゴリーで比較したところ、炭水化物量・たんぱく質量・脂質量・カロリーはいずれもカテゴリー間で統計的に有意な差が認められました。ところがビタミンD含有量に関しては、原料カテゴリー間で統計的に有意な差は見られませんでした。つまり、原料が違えば栄養バランス全体は大きく変わる一方で、ビタミンDの強化量そのものは原料の種類とはあまり関係なく決められている可能性が示唆されています。

消費者調査では、これらの飲料を毎日飲むと答えた人の48.3%は『食の好み(ダイエット嗜好など)』を主な理由に挙げていました。これに対し、健康全般への配慮やビタミンD強化そのものを目的として選んでいるグループは、毎日ではなく週単位(33.3%)や不定期(42.8%)での利用が多いという結果でした。また、回答者が申告した一回あたりの平均摂取量は157.14mLでした。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究では、参加者の血液中のビタミンD濃度そのものは測定されていません。そのため、現在のような飲用量や頻度で、実際に体内のビタミンD状態が十分に保たれるのかどうかについては、この研究の範囲では判断できないと著者らは述べています。あくまで製品の成分表示データと消費者への聞き取りに基づく分析であり、健康効果を直接示すものではありません。

その上で著者らは、原料によって栄養成分に大きな差があるにもかかわらずビタミンD量にはばらつきが少ないという今回の知見を踏まえ、パッケージの正面に栄養密度や強化内容をわかりやすく表示する仕組みの必要性を指摘しています。

まとめ

植物性飲料のビタミンD強化は、原料の種類によって栄養成分全体は大きく異なる一方で、ビタミンD含有量自体には統計的な差が見られなかったと報告されています。また、消費者が飲料を選ぶ理由は必ずしも健康志向だけではなく、味の好みなど別の要因が日常的な摂取行動を左右している可能性が示されました。これは一つの研究であり、血液データに基づく健康への影響までは確認されていない点に留意する必要があります。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Daniela Cîrnaţu, Irina-Mihaela Stoian, Ioana Floarea, et al. Vitamin D-Fortified Plant-Based Beverages: Perspective on Nutritional Value and Consumers’ Perception. アプライド・サイエンシズ (2026). DOI: 10.3390/app16178817. 原著ライセンス: cc-by.