著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:JURNAL KEBIDANAN
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
経腟分娩では、会陰(腟と肛門の間の部分)に裂傷や切開による傷ができることがあります。この研究が対象とした「第2度」の会陰の傷は、皮膚だけでなくその下の筋肉にまで及ぶ傷です。傷の治りが遅れると、痛みや不快感、感染、傷が開くことなどにつながり、産後の生活にも影響しうるため、治り具合を確かめることは産後ケアの大切な一部とされています。
傷が治る過程では、組織の再生やコラーゲンの合成にたんぱく質などの栄養が必要です。研究チームが注目したのは、インドネシアで広く手に入る淡水魚、スネークヘッド(学名チャンナ・ストリアータ、現地名イカン・ガブス)です。著者らによると、この魚はたんぱく質が豊富で、これまでの実験研究では組織の修復に関わる働きが報告されていますが、出産後の第2度会陰裂傷を対象に、魚そのものを食事として決まった量で提供した臨床研究は限られていました。そこで研究チームは、調理したスネークヘッドを提供された産後の女性と、通常の産後ケアのみを受けた女性とで、傷の治り具合を比べました。
何をどのように調べたか
研究には第2度の会陰の傷がある産後の女性30人が参加し、15人が魚を提供される介入群、15人が対照群に分けられました。グループ分けはくじ引きのような無作為の方法ではなく、あらかじめ決めた人数を集める方法で行われました。このように無作為化を行わずに比較する研究は「準実験研究」と呼ばれます。
介入群には、研究チームが調理した300グラムのスネークヘッドが、1日3回に分けて7日間続けて提供されました。調理と配達は研究チームが担い、退院して自宅に戻った人にも届けられました。対照群は研究からの魚の提供を受けず、通常の産後ケアを続けました。なお、提供された分を実際にどれだけ食べたかは記録されていないと著者らは述べています。
傷の状態は「REEDA(リーダ)スケール」で評価されました。これは赤み、腫れ、皮下出血(あざ)、分泌物、傷口の閉じ具合の5項目をそれぞれ0〜3点で採点し、合計0〜15点で表すもので、点数が低いほど見た目の治りがよいことを意味します。評価は産後1日目、4日目、7日目に予定されていましたが、論文で数値が報告されているのは最終評価の結果のみです。
主な結果
最終評価で、REEDAスコアが0点、つまり評価項目のいずれにも異常が見られなかった人は、介入群で15人中14人(93.3%)、対照群で15人中2人(13.3%)でした。対照群の多く(80.0%)は1〜5点で、1人が6〜10点でした。両群とも11点以上の人はいませんでした。
スコアの中央値(値を小さい順に並べたときの真ん中の値)は、介入群が0点、対照群が4点でした。最高点は介入群が3点、対照群が6点でした。統計的な検定でも、最終スコアと治り具合の区分の両方で、両群の間に偶然とは考えにくい差が認められたと報告されています。
一方で、対照群でも傷の治癒は進んでおり、著者らは魚の提供を傷の治りを決める唯一の要因ではなく、支えとなりうる栄養面の手段の一つとして捉えるべきだとしています。
結果が意味すること
研究チームは、7日間のスネークヘッドの提供が第2度会陰裂傷のより良い治り具合と「関連していた」と結論づけています。ただし、グループ分けが無作為ではなく、職業の構成など両群の特徴に違いがあり、普段の食事や栄養状態、傷のケアといった他の要因は分析で調整されていません。そのため著者ら自身、この結果は魚が差を生んだ原因であることを証明するものではないと強調しています。また、調理済みの食事が届けられたこと自体が差に関わった可能性や、評価者が群分けを知っていたかどうかが記録されていない点にも触れています。
さらに、REEDAスケールが測るのは傷の見た目であり、痛みや生活の質など産後の回復全体ではありません。著者らは、身近に手に入るたんぱく質の豊富な食材としてスネークヘッドがバランスのよい産後の食事の一部になりうるとしつつ、標準的な会陰ケアや食事指導に代わるものではなく、それらを補うものとして位置づけています。
原著論文の著者・所属:NINING ISTIGHOSAH(UNIVERSITAS STRADA INDONESIA)、Bambang Budi Raharjo(Fakultas Kedokteran, Universitas Negeri Semarang, Semarang, Indonesia)、Hanik Mutholiah(UNIVERSITAS STRADA INDONESIA)、Dimitri M.R. Sudirman(Zaledhusip untuk Negeri Foundation)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):NINING ISTIGHOSAH, Bambang Budi Raharjo, Hanik Mutholiah, Dimitri M.R. Sudirman CONSUMPTION AND SECOND-DEGREE PERINEAL WOUND HEALING IN POSTPARTUM WOMEN: A QUASI-EXPERIMENTAL STUDY. JURNAL KEBIDANAN 2026-10-30. DOI: 10.35890/jkdh.v15i2.452. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。