著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Manajemen dan Pariwisata

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

巡礼地で営まれる食の商いに注目

インドネシア東ジャワ州グレシック県には、スナン・ギリの墓所群を中心とする宗教観光地があります。ここを訪れる人々は参詣(ジアラ)だけでなく、食事をとったり、グレシック名物の食べ物や土産を買ったりします。宗教観光は信仰の場であると同時に、周辺住民にとっては経済的な機会にもなっています。

著者らはこの地域で、飲食を扱う零細・小規模・中規模事業者(インドネシア語でUMKM)に注目しました。研究の目的は、イスラム教の戒律に適った食品を指す「ハラール」の飲食を扱う事業者が、スナン・ギリの宗教観光の発展にどのような役割を果たしているかを分析することです。あわせて、その役割を支える要因と妨げる要因も整理しています。

論文によると、これまでのスナン・ギリに関する研究は、地域の知恵を生かした地区開発や、交通の便、観光の魅力、来訪者の行動などを扱ってきました。一方で、事業者の経済活動、地元の産品、ハラールへの対応、地区の管理状況を結び付けて検討した研究は、まだ十分ではないと著者らは指摘しています。

現地観察と事業者への聞き取り

研究チームは質的な記述研究の手法を用いました。数値の統計分析ではなく、現場の様子や当事者の経験を詳しく描き出す方法です。現地では、商いの様子、売られている商品、店舗の状態や清潔さ、交通の便、来訪者の動線などを観察しました。さらに、飲食事業に直接関わる人を目的に沿って選び、詳しく聞き取りを行いました。文献や行政資料も参照しています。

論文に示された聞き取り相手は3人です。1人目は、40年ほど続く家族経営の土産店を継いだ2代目で、クパッ・クタックやプダッといった名物を扱っています。2人目は、肉団子料理プントルの露店で働く従業員です。3人目は、30年ほど続く店の店主で、ジュナン(伝統菓子)と礼帽を売っています。複数の情報源や手法から得た内容を突き合わせることで、情報の確かさを確認したとされています。

主な報告結果

著者らによると、事業者の多くは地元住民で、中には数十年にわたって代々受け継がれてきた商いもありました。自宅や自分の土地で営業し、定期的な家賃負担がない例もあります。参詣者が食事や名物、土産を求めることで、地元の人々が収入を得る機会が生まれていました。また、事業者はクパッ・クタックの由来をギリ地区の環境と結び付けて語っていました。著者らはこれを、食べ物が地域の個性を伝える役割も担っていることを示す現地での発見としています。

一方で、売り上げは参詣者の来訪パターンに強く左右されていました。にぎわう日は、週末や暦の上の特定の日など、事業者によって異なっていました。露店の売上高は1シフトあたりおよそ20万〜30万ルピアと報告されていますが、論文はこれが利益ではなく売上高であると明記しています。パンデミック後に売り上げが落ちたという声や、収入の浮き沈みが大きいという声もありました。若い来訪者が以前より増えたとも語られています。

ハラールへの対応については、3人とも自分の事業名義のハラール認証を持っていないか、勤め先の認証状況を知りませんでした。商品によっては、認証は再販売する店ではなく製造元に付いているものでした。著者らはこの点から、店頭レベルでのハラール情報の明確さがまだ十分ではないとしています。

地区の管理にも課題が見られました。参詣者の動線が変わり、住宅地にある従来の商業エリアを通らない人が出ていること、駐車場の問題、急な坂や遠回りの道が高齢の来訪者にとって負担になっていることが挙げられています。支援面では、パンデミック中に援助を受けた事業者もいましたが、その後の技術的な支援は広く行き届いていないと感じられていました。必要とされていたのは、ハラール認証の取得支援、資金管理、デジタルでの販売促進、営業場所の整備などです。

研究が示すこと

著者らは、飲食事業者が参詣者の体験を補い、住民の収入源にもなっていると結論づけています。ただし、聞き取りの範囲では、食べ物が参詣の主な目的になっているわけではありませんでした。現時点での役割は、観光客を呼び込む中心というよりも、参詣体験と地域経済を支える脇役に近いとしています。

そのうえで論文は、事業者の役割を強めるには、商品の販売だけでなく、ハラール情報の整備や地区の動線・駐車場の管理、継続的な支援が欠かせないと述べています。そのためには、事業者、行政、地区の管理者、住民の連携が必要だとしています。なお、この結果は3人への聞き取りに基づく初期的な見取り図であり、地域のすべての事業者にそのまま当てはまるものではないと、著者ら自身が明記しています。

原著論文の著者・所属:Qurrotul 'Ain(Universitas Islam Negeri Sunan Ampel Surabaya)、Lilik Rahmawati(Universitas Islam Negeri Sunan Ampel Surabaya)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Qurrotul 'Ain, Lilik Rahmawati Peran UMKM Kuliner Halal Terhadap Perkembangan Wisata Religi Sunan Giri Gresik. Manajemen dan Pariwisata 2026-10-30. DOI: 10.32659/jmp.v5i2.732. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。