この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:JURNAL ILMIAH KESEHATAN SANDI HUSADA

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

血中のコレステロールが高い状態(高コレステロール血症)は、心臓や血管の病気による死亡リスクを高めることが知られています。著者らは、加齢や食習慣、運動不足、肥満などがこの状態に関わると整理したうえで、薬以外の補助的な手段として注目されてきたバージンココナッツオイル(VCO)に目を向けました。VCOは化学薬品を使わずに搾油されるため、中鎖脂肪酸やポリフェノール、ビタミンEといった成分が壊れずに残るとされ、脂質の代謝を改善する可能性があると紹介されています。

ただし論文によれば、VCOがコレステロールを下げる効果については研究ごとに結果が食い違っており、一致した見解は得られていません。そこで研究チームは、インドネシア・ジョグジャカルタのパケンビナングン、テガルサリ地区に住む高コレステロール血症の人々を対象に、VCOの摂取が総コレステロール値に影響するかどうかを確かめることを目的としました。この地域の高齢者向け保健所では、VCOを使った取り組みがそれまで行われていなかったことも、研究の動機として挙げられています。

何を、どのように調べたか

研究チームが用いたのは「準実験デザイン」と呼ばれる方法です。これは、介入を受けるグループと受けないグループを比べ、それぞれで介入の前後の値がどう変わるかを見る進め方を指します。対象となったのは、総コレステロール値が180 mg/dLを超え、脂質を下げる薬や他の療法を受けておらず、参加に同意した66人でした。参加者は介入群33人と対照群33人に分けられました。

介入群には、殺菌したVCOを1日2回、1回20 mL(朝と夕)ずつ、14日間続けて摂ってもらいました。対照群には何も行っていません。総コレステロール値は、介入前と14日間の終了後に、指先などから採る末梢血で測定されました。摂取の記録は観察シートに毎日書き込んでもらい、研究チームがきちんと続けられているかを確認しています。データの分析にはマン・ホイットニー検定という統計手法を用い、有意水準は0.05としました。この研究は2021年10月3日から17日にかけて実施され、倫理審査委員会の承認と参加者全員の同意を得たうえで行われました。

報告された主な結果

参加者の特徴として、論文は高齢者が89.4%、女性が59.1%を占めたと報告しています。生活習慣の面では、揚げ物を毎日食べる人が46.96%、運動が週3回未満という人が46.96%と、コレステロール値を高めうる行動が広く見られました。一方、家族に高コレステロール血症の人がいると答えたのは16.7%にとどまり、喫煙習慣があるのは12.1%でした。

介入前の時点では、両群のコレステロール値に統計的な差はなく(p=0.326)、出発点は同程度だったと報告されています。しかし14日間のVCO摂取後も、両群のあいだに統計的に意味のある差は認められませんでした(p=0.200)。介入群では「非常に高い」区分(200 mg/dL超)に該当する人の割合が63.8%から増加し、対照群でも同様に増えています。介入群のうち2人(6.1%)は介入後に正常値に達しましたが、全体としては有意な低下には至りませんでした。

著者らは、この結果を受けて、2×20 mLのVCOを14日間摂る方法では高コレステロール血症の人の総コレステロール値を有意に下げられなかったと結論づけています。その理由として、参加者の年齢や性別に加え、高脂肪の食事や運動不足といった生活習慣が、介入よりも強く脂質の値に影響していた可能性を挙げています。

この研究が示すこと

著者らは、この研究にいくつかの限界があることも明記しています。主要な指標を総コレステロールに置いたため、先行研究が多く扱ってきたHDLなどの変化は捉えられていないこと、参加者の食事や運動を厳密に管理しなかったため交絡要因が残ること、介入期間が14日間と比較的短かったことなどです。したがって、今回の結果はVCOが脂質のすべての成分に影響しないことを直接示すものではない、と論文は注意を促しています。

そのうえで著者らは、脂質の管理には、栄養指導や定期的な運動、体重管理、脂質の定期的な測定を組み合わせた総合的な取り組みが欠かせないと述べています。短期間の補助的な摂取だけに頼るのではなく、生活習慣そのものに働きかける視点の重要性が、この研究から浮かび上がってきます。

著者:Fransisca Anjar Rina Setyani(STIKes Panti Rapih Yogyakarta)、Chatarina Setya Widyastuti(STIKes Panti Rapih Yogyakarta)、Hiasinta Anatasia Purnawijayanti(STIKes Panti Rapih Yogyakarta)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Fransisca Anjar Rina Setyani, Chatarina Setya Widyastuti, Hiasinta Anatasia Purnawijayanti. Effect of virgin coconut oil on total cholesterol levels in patients with hypercholesterolemia: A quasi-experimental study. JURNAL ILMIAH KESEHATAN SANDI HUSADA 2026-08-29. DOI: 10.35816/jiksh.v15i2.394. 原著ライセンス:CC BY.