著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Islamic Review Jurnal Riset dan Kajian Keislaman

ライセンス: CC BY-SA 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

ハラール認証とは、食品などがイスラムの教えに照らして口にしてよいもの(ハラール)であることを、定められた手続きに基づいて公式に保証する仕組みです。インドネシアでは政府がこの認証を推進しており、手続きのデジタル化も進められています。

一方、飲食業を営む零細・小・中規模事業者(論文ではMSMEsと呼ばれます)の多くは、認証をめぐってさまざまな壁に直面し続けているといいます。手続きの煩雑さ、デジタル機器や情報を使いこなす力の不足、支援の不十分さ、資金面の制約、認証が長期的に事業へもたらす利点への理解不足などです。論文は、こうした障壁が政府の取り組みの効果を弱め、急速に広がるハラール市場の機会を事業者が生かしにくくしていると述べています。

研究チームは、デジタル化されたハラール認証が飲食系事業者の競争力とどのように関わるのか、とりわけ制度や組織の条件が実施をどう左右するのかはまだ十分に理解されていないと指摘しました。そこで、インドネシア中部ジャワ州のデマク県を対象に、この関係を調べました。著者らは、売上や利益への直接的な因果効果を前提とせず、事業者や関係者が競争力をどう捉えているかを探ることを目指したと述べています。

どのように調べたか

研究は、数量的な測定ではなく、人々の経験や考えを詳しく聞き取って整理する質的な記述研究として行われました。調査対象には、飲食系事業の経営者、デマク県の宗教省の担当者、ハラール認証の手続きを支援する担当者、そして消費者が含まれ、ハラール認証について知識や経験を持つ人が意図的に選ばれました。

データは三つの方法で集められました。あらかじめ用意した質問を軸にしつつ柔軟に話を聞く半構造化インタビュー、研究者が加わらずに外から行う製造工程や認証手続き・事業運営の観察、そして認証書や営業許可、政府の規制や政策文書などの文書分析です。異なる情報源や方法を突き合わせ、参加者に内容を確認してもらうことで、結果の信頼性を高めたとしています。集めた記録はテーマごとに分類・整理され、繰り返し現れる傾向が読み取られました。

主な結果

参加者たちは、ハラール認証が消費者の信頼を高め、商品の信用を強め、市場の機会を広げると一貫して語りました。消費者からは、認証のない飲食品はイスラム法で禁じられた材料が含まれているかもしれず、口にしてよいか不安が残るという声が聞かれました。論文は、認証が作り手と買い手の間の情報の差を埋める役割を果たしていると解釈しています。

研究チームが強調するのは、認証そのものの価値と、そのデジタル化の価値を区別することです。認証は「ハラールの要件を満たしている」という公式な保証を与えます。これに対してデジタル化は、手続きを簡素にし、認証に関する情報へ近づきやすくし、消費者が認証の有無を確かめやすくする点に役割があるとされました。ただし、デジタル化しただけで市場が自動的に広がるわけではなく、その価値は、情報が実際に入手しやすく信頼でき、事業や販売の活動にうまく組み込まれるかどうかにかかっているといいます。

一方で、課題も明らかになりました。インタビューからは、デジタル活用能力の不足、認証手続きへの理解不足、支援体制の不十分さ、そして特に零細事業者における資金面の制約という四つの主な障壁が浮かび上がりました。これらは互いに強め合う可能性があるとされます。参加者は、認証を担う政府機関、宗教省、地方政府、大学、手続き支援者などが連携し、技術的な支援やデジタル研修を提供することが重要だと強調していました。

研究が示すこと

著者らは、デジタル化を、それ自体が競争力を決める要因ではなく、認証の手続きを支える「後押しの仕組み」として捉えるべきだと結論づけています。デジタル化された認証が競争力に役立つ可能性は、デジタルでの利用しやすさ、制度による支援、そして日々の確かなハラール管理が組み合わさったときに生まれる、というのが論文の見方です。

同時に著者らは、この研究が示したのは参加者の受け止め方や期待される機会であり、デジタル認証が売上や利益、市場シェアを直接増やすことを確かめたものではないと明記しています。また、デマク県の飲食系事業者に絞った質的研究であるため、結果はこの地域の文脈に根ざしたものだとしています。

そのうえで論文は、実践的なデジタル活用研修、認証の全過程を通じた利用しやすい技術支援、関係機関の連携強化の必要性を示しました。オンライン化された仕組みを用意するだけでなく、それを使いこなせる力と支える体制がそろって初めて、認証のデジタル化が小さな事業者にとって意味を持ちうる、というのがこの研究から伝わるメッセージです。

原著論文の著者・所属:Anita Rahmawaty(Universitas Islam Negeri Sunan Kudus, Indonesia)、Eni Kusrini(Universitas Islam Negeri Sunan Kudus, Indonesia)、Dwi Putri Restuti(Universitas Islam Negeri Sunan Kudus, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Anita Rahmawaty, Eni Kusrini, Dwi Putri Restuti Strengthening the Competitiveness of Culinary MSMEs through the Digitalization of Halal Certification. Islamic Review Jurnal Riset dan Kajian Keislaman 2026-10-29. DOI: 10.35878/islamicreview.v15i2.2388. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。