著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Pendas Jurnal Ilmiah Pendidikan Dasar

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

インドネシア西スマトラ州のパヤクンブ市は、西スマトラとリアウを結ぶ交通路にある商業の町です。中心市場の周辺やスカルノ・ハッタ通り/アフマド・ヤニ通り沿いには、夜になると飲食の屋台が並ぶ「夜の屋台市場」が広がります。午前2時まで営業する店や、明け方4時まで開いている店もあると紹介されています。

この市場は2016年に市が区域の整備と屋根(キャノピー)の建設を始めてから大きく変わりました。この期間、商人たちは競争の激化、客の好みの変化、食事の配達アプリの普及、そして2020〜2021年の新型コロナウイルス流行による営業制限にも直面しました。著者らは、2016〜2025年の商人たちの経済生活がどのように推移したのか、また市がこの市場の発展にどのような役割を果たしたのかを明らかにしようとしました。研究チームによれば、この市場の商人の経済生活を特定の期間に絞り、歴史学の手法で調べた研究はまだ少ないとのことです。

どのように調べたか

研究には歴史学の方法が用いられました。まず資料を集め、次にその資料が本物か、内容が信頼できるかを吟味します。そのうえで事実どうしの関係を読み解き、最後に時系列に沿って叙述するという4つの段階を踏む方法です。

資料は二種類あります。一つは書籍、学術論文、卒業論文、オンライン新聞、統計局のデータなどの文献です。もう一つは聞き取りで、屋台の商人と、市の協同組合・中小企業局で市場を担当する部署から話を聞きました。複数の話し手の証言を突き合わせることで、より信頼できる情報を得るようにしています。収入に関するデータは、20人の商人への聞き取りに基づいています。

主な結果

かつての商人たちは道路脇に散らばって店を出し、場所を移動することもありました。雨よけには傘やビニールシートを使っていました。市は2016年に屋根の建設と、商人を幹線道路から屋根の下へ集める計画を立てます。2017〜2018年には交渉や一部の移転が進み、2019年12月には18か所に防犯カメラが設置されました。2020年に予定していた段階的な移転はコロナ対策が優先されて延期され、商人が屋根の下へ移ったのは2021年初めでした。2025年の商人数は約175人と推定され、局の市場データに記録された場所の中で最も多い数です。

20人の商人の1晩あたりの売上(経費を差し引く前の金額)は、約25万ルピアから800万ルピアまで大きな幅がありました。約500万ルピア以上の人は3人、100万〜500万ルピアの人は4人で、残る13人は100万ルピア未満でした。多くの商人は低い売上の層に属しています。差を生む主な要因は、1食あたりの値段と売れた数です。名物のサテ(串焼き)の店は2万ルピアの料理を平均400食売ります。一方、1個1000ルピアの揚げ物の店は、70万ルピアを得るのに約700個を売る必要があります。売上は天候や休日、ラマダン(断食月)によっても変わります。また商人は、場所の広さに応じた1晩3000〜1万5000ルピアの清掃費と、1万ルピアの駐車料金を払っています。材料費やガス代もかかるため、著者らは売上をそのまま利益とみなすことはできないと指摘しています。

研究チームは、売上の規模が異なる3人の商人を例に取り上げました。高い層はサテ、中間層はマルタバ(具入りの焼き菓子・料理)、比較的小さい層はパステル(揚げパイ)の店です。コロナ禍では3人とも売上が大きく落ち込みました。サテの店は1か月間営業を休み、収入が完全に途絶えました。家族で1984年から続くマルタバの店も営業できませんでした。パステルの店は配達アプリで販売を試みましたが、売れたのは2〜3食にとどまりました。著者らは、客の多さに頼る大きな店も、蓄えの乏しい小さな店も、それぞれ打撃を受けたと説明しています。また、ネットでの販売は市場で直接売ることの代わりにまだなっていないと述べています。

屋根ができてからは、毎晩テントを張ったり片付けたりする必要がなくなりました。店が整い、飲食や駐車の場所も秩序立ちました。商人たちは働きやすくなり、売上も増えたと話しており、その実感は3つの層すべてに見られたといいます。マルタバの店は2店舗の支店を持つまでになりました。ただし、外の区域から移された商人の中には、客が新しい場所を知らなかったために一時的に売上が落ちた人もいました。著者らは、売上の増加は商人の証言に基づくものであり、継続的に測定した販売データによるものではないと明記しています。

行政の役割とこの研究が示すこと

研究チームは、市の役割を次の三つに整理しています。一つ目は、屋根のある売り場、防犯カメラ、ごみ箱といった場所と設備の提供です。二つ目は清掃費と駐車の管理です。三つ目は、段階的な配置の整理によって商人に決まった売り場を与えたことです。一方で、資金、材料の仕入れ、扱う品目、値段の設定、収入の管理は、それぞれの商人の責任のままです。著者らは、清掃費が売り場の広さで決まるため、売上が25万ルピアの人と800万ルピアの人で負担の差が小さいことも指摘しています。小規模な商人への経営支援や、ほとんど活動していない商人団体の立て直しは、得られたデータの中には見られませんでした。

この研究は、市場の整備が働く環境を改善し、商人たちに売上が伸びたという実感をもたらしたことを伝えています。その一方で、商売の浮き沈みは日々の客の数や個々の商人のやりくりに大きく左右されることも示しています。特に低い売上の層が多いことは、行政が整えた場の中でも、商人の暮らしの基盤がなお不安定であることを浮かび上がらせています。

原著論文の著者・所属:Arifah, Silvina(Universitas Negeri Padang)、Rusdi(Universitas Negeri Padang)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Arifah, Silvina, Rusdi. KEHIDUPAN EKONOMI MASYARAKAT PEDAGANG PASAR KULINER MALAM DI KOTA PAYAKUMBUH 2016-2025. Pendas Jurnal Ilmiah Pendidikan Dasar 2026-10-29. DOI: 10.23969/jp.v11i04.72393. 原著ライセンス:CC BY.