著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Jurnal Kesmas dan Gizi (JKG)
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的
高血圧は、心臓病や脳卒中などにつながる身近な病気です。著者らは序論で、世界保健機関(WHO)の資料を引き、世界で約12億8千万人が高血圧を抱えている一方、血圧が十分に管理されている人は約21%にとどまると紹介しています。血圧を管理する手段の一つが、食塩(ナトリウム)の摂取を控える減塩食です。WHOやインドネシア保健省は、食塩を1日5グラム(小さじ約1杯)以下に抑えるよう勧めています。
ただし、減塩が大切だと分かっていても、実際の食事で続けるのは簡単ではありません。研究チームは、センビリン総合病院の入院病棟で、塩分制限の大切さを十分に理解していない高血圧患者や、塩分の多い食べ物を口にしたり病院食を残したりする患者がいることに気づきました。そこで、入院中の高血圧患者が減塩食をどの程度守っているか(遵守度)と、血圧が管理目標の範囲に収まっているかとの関係を分析しました。
どのように調べたか
調査は2026年4月から5月に、同病院の入院病棟で行われました。対象は、病院の栄養部門から減塩食を提供されていた18歳以上の高血圧患者60人です。重い合併症(急性の脳卒中や末期の腎不全など)がある人、意識障害のある人、質問票を最後まで回答できなかった人は除かれました。研究デザインは、ある一時点の状態を観察して項目同士の関係を調べる「横断研究」です。
減塩食の遵守度は、8項目の質問票(各項目を1〜5点で回答)に加え、栄養チームとともに実際の食事の様子を観察して評価しました。読み書きが難しい人には聞き取りで回答してもらいました。血圧は入院中の測定値と診療記録をもとに、140/90 mmHg未満を「管理されている」、それ以上を「管理されていない」と分類しました。遵守群と非遵守群で血圧管理の状況に差があるかは、カイ二乗検定という統計手法で確かめています。
主な結果
対象者60人のうち、女性が42人(70.0%)、60歳以上が31人(51.7%)でした。減塩食を守れていなかった人は43人(71.7%)、血圧が管理されていなかった人は39人(65.0%)と、いずれも半数を大きく上回りました。
二つの関係を見ると、減塩食を守っていた17人は全員、血圧が管理されていました。一方、守れていなかった43人のうち39人(90.7%)は血圧が管理されておらず、管理されていたのは4人にとどまりました。統計検定の結果、p値は0.000と報告されており、著者らは減塩食の遵守と血圧管理のあいだに統計的に意味のある関連があると結論づけています。
この研究が示すこと
この研究は、入院中の高血圧患者では、減塩食を守れている人ほど血圧が管理されている傾向がはっきり見られたことを報告しています。ただし、一時点の観察から関連を示したもので、減塩食を守ることが血圧を下げた、という因果関係を直接確かめたものではありません。
著者らは、7割を超える患者が減塩食を守れていなかった点を重く見ています。そのうえで、栄養士や看護師などの医療従事者による栄養教育、食事相談、遵守状況の継続的な確認を強めることが、入院患者の血圧管理を支えると考察しています。
原著論文の著者・所属:Batubara Winda Rizki Pebrina(Faculty of Public Health, Medistra Institute of Health Lubuk Pakam)、Fitriani(Institut Kesehatan Medistra Lubuk Pakam)、Iskandar Markus Sembiring(Institut Kesehatan Medistra Lubuk Pakam)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Batubara Winda Rizki Pebrina, Fitriani, Iskandar Markus Sembiring. Relationship Between Adherence to a Low-Salt Diet and Blood Pressure Control Among Hospitalized Hypertension Patients at Sembiring General Hospital. Jurnal Kesmas dan Gizi (JKG) 2026-10-28. DOI: 10.35451/jkg.v9i1.3971. 原著ライセンス:CC BY.