著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。
掲載誌:Supportive Care in Cancer
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
がんで入院している患者では、栄養不足に陥ることが少なくありません。特に消化器がん、頭頸部がん、肺がんの患者は、腫瘍そのものの影響や治療の副作用によって食欲が落ちたり、味覚が変わったりして、食事が十分にとれなくなりやすいとされています。こうした、食事量に影響する症状は「栄養に影響する症状」と呼ばれます。
著者らによれば、これまでの研究では入院中のエネルギーとたんぱく質の摂取量を、処方された栄養量と比べて具体的に調べたものは限られていました。そこで研究チームは、これら3種類のがんで入院した患者について、実際の摂取量が処方量に届いているかを確かめ、食欲や症状、がんの種類や治療との関連を調べました。さらに、食事量の不足が入院後数日のうちの体重や筋肉に関わる指標の変化と結びついているかも検討しました。
どのように調べたか
対象は、口から食べる食事のみ(栄養補助飲料の併用を含む)が処方された18歳以上の消化器がん、肺がん、頭頸部がんの入院患者77人です。救急や集中治療室への入院、管や点滴による栄養を受けている人、むくみのある人などは除かれました。患者は入院2日目、4日目、6日目の3回、ベッドサイドで調べられました。
食事量は、病院食をどのくらい食べたかを「ほぼ全部」「半分」「少し」「何も食べない」の段階で患者が答える方法で評価しました。その割合を処方された食事のエネルギー量とたんぱく質量に当てはめて、実際の摂取量を推計しています。3回の平均で75%未満を「食事量の低下」としました。食欲は0から100までの線上に印をつける尺度で測り、栄養状態や症状はがん患者向けに作られた評価票で調べました。加えて、体重、ふくらはぎの周囲長、上腕の周囲長、握力を測定し、筋肉量や筋力の目安としました。
主な結果
入院時点で、評価票により栄養不良のリスクがあるとされた患者は84.4%、中等度以上の栄養不良と判定された患者は80.6%にのぼりました。3回の評価の平均で病院食の75%以上を食べていた患者は44.2%にとどまりました。
推計されたエネルギーとたんぱく質の摂取量は、3回の評価日すべてで処方量を有意に下回っていました。不足分の中央値は、エネルギーで1日あたり867〜1012キロカロリー、たんぱく質で1日あたり35.2〜50.1グラムでした。
食事量が低下していた患者では、食欲不振、口の渇き、味覚の変化、においの感じ方の変化がより多くみられました。食事量の低下した患者の88.4%は食欲も低下していました。がんの種類も食欲や食事量と関連しており、肺がんがこの関連に寄与していた一方、消化器がんは逆向きの寄与を示しました。過去3か月以内の化学療法は食事量の低下と関連していましたが、食欲との関連はみられませんでした。
男性では、食事量が低下していたグループで入院2日目から6日目にかけて体重の推定平均が1.02キログラム減り、上腕の周囲長も0.21センチメートル減少しました。食事が十分とれていたグループではどちらも安定していました。一方、女性ではいずれの指標にも有意な変化はみられず、ふくらはぎの周囲長と握力は男女とも期間中に変化が検出されませんでした。著者らは、上腕の周囲長は筋肉だけでなく皮下組織の影響も受ける間接的な指標であり、この変化を筋肉量の減少の直接の証拠とみなすべきではないと述べています。
研究が示すこと
この研究は、がんで入院した患者の多くが、個別に処方された栄養量を入院初期から満たせていないこと、そして食欲不振や味覚・嗅覚の変化などの症状がそうした食事量の不足と関連していることを示しました。著者らは、観察期間が6日間に限られることや、食べた割合から摂取量を推計する方法には誤差が生じうることなどを限界として挙げています。そのうえで、入院中の食事量の不足はわずか数日のうちに体重などの変化を伴いうる早い段階の問題であり、食事量や症状を継続的に把握することの大切さを示す結果だと位置づけています。
原著論文の著者・所属:Camilla Horn Soares(Graduate Program in Food, Nutrition, and Health, Universidade Federal Do Rio Grande Do Sul, Porto Alegre, Rio Grande Do Sul, Brazil; Hospital de Clínicas de Porto Alegre, Porto Alegre, Rio Grande Do Sul, Brazil)、Larissa Farinha Maffini(Graduate Program in Medical Sciences, Endocrinology, Universidade Federal Do Rio Grande Do Sul, Porto Alegre, RS, Brazil; Hospital de Clínicas de Porto Alegre, Porto Alegre, Rio Grande Do Sul, Brazil)、Heloisa Jacques Friedrich(Department of Nutrition, Universidade Federal Do Rio Grande Do Sul, Porto Alegre, Rio Grande Do Sul, Brazil; Hospital de Clínicas de Porto Alegre, Porto Alegre, Rio Grande Do Sul, Brazil)、Giovanna Strapasson Faccin(Department of Nutrition, Universidade Federal Do Rio Grande Do Sul, Porto Alegre, Rio Grande Do Sul, Brazil; Hospital de Clínicas de Porto Alegre, Porto Alegre, Rio Grande Do Sul, Brazil)、Thais Steemburgo(Department of Nutrition, Universidade Federal Do Rio Grande Do Sul, Porto Alegre, Rio Grande Do Sul, Brazil; Graduate Program in Food, Nutrition, and Health, Universidade Federal Do Rio Grande Do Sul, Porto Alegre, Rio Grande Do Sul, Brazil; Graduate Program in Medical Sciences, Endocrinology, Universidade Federal Do Rio Grande Do Sul, Porto Alegre, RS, Brazil; Hospital de Clínicas de Porto Alegre, Porto Alegre, Rio Grande Do Sul, Brazil)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Camilla Horn Soares, Larissa Farinha Maffini, Heloisa Jacques Friedrich, et al. Insufficient dietary intake and symptom burden are associated with early nutritional decline in hospitalized patients with cancer. Supportive Care in Cancer 2026-10-23. DOI: 10.1007/s00520-026-11410-6. 原著ライセンス:CC BY.