著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:iCirculation
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
塩分のとり過ぎは心臓や脳の血管の病気のリスクを高めます。中国では食塩の多くが家庭の調理から来ており、とくに研究の舞台となった山東省は、漬物などをよく食べる塩分の多い食習慣で知られています。中国には高血圧患者を地域で継続的に管理する公的な保健サービスがあり、減塩指導も含まれています。しかし研究チームは、二つの課題を指摘しています。実際にどれだけ減塩できたかを確かめる手段が乏しいことと、指導が誰に対しても同じ強さの一律な健康教育にとどまっていることです。
そこで研究チームが注目したのが、尿に含まれるナトリウム(食塩の成分)とカリウムの比率です。これまでの研究では、この比は尿中ナトリウムの量だけを見るよりも血圧との関連が強いと報告されています。24時間分の尿を集める方法は手間がかかるため、研究チームは随時に採った少量の尿(スポット尿)からこの比を求めました。そのうえで、この比を目安として見守りながら強さの異なる減塩支援を行い、その効果を確かめることを目的としました。
どのように調べたか
試験は2023年8月から2024年8月まで、山東省沂水県で行われました。無作為に選んだ15の村を、村単位でくじ引きのように三つのグループに分けました。このように個人ではなく集団ごとに割り付ける方法を「クラスター無作為化比較試験」と呼びます。対象は、公的保健サービスで管理されている35〜69歳の高血圧患者485人です。
対照グループは、従来どおりの公的サービスによる管理を受けました。低強度グループでは、村の診療所が2週間ごとに血圧を測って助言したほか、参加者と家庭で料理をする人に計量用の減塩スプーンを配りました。月1回は減塩の知識や調理の工夫を伝え、ポスターや村内放送でも呼びかけました。さらに、追跡中に測った尿のナトリウム・カリウム比の意味を説明し、その変化に応じて助言しました。高強度グループは、これらに加えて毎月3日間、スプーンを使って自分の食塩使用量を記録しました。1日5グラムを超える人には段階的な減塩目標を設け、2か月ごとに減塩の講習会も開きました。
開始時と1年後には、血圧、尿、生活習慣や減塩に関する知識・行動を調べました。食塩摂取量は、各村の参加者の2割について、3日間にわたり食塩や調味料の量を量る方法で算出しました。グループ間で年齢などの条件が異なる影響を取り除くための統計的な調整も行われています。最終的に471人が1年後の評価を終えました。
主な結果
研究チームの報告によると、対照グループと比べて収縮期血圧(上の血圧)は、低強度グループで8.45mmHg、高強度グループで12.32mmHg、より大きく下がりました。拡張期血圧(下の血圧)も、それぞれ4.67mmHgと6.18mmHg低下しました。なお、対照グループでは期間中に血圧が上がる傾向が見られています。
食塩摂取量は、対照グループと比べて低強度グループで1日2.78グラム、高強度グループで1日2.98グラム減りました。尿のナトリウム・カリウム比がはっきり下がったのは高強度グループだけで、低下幅は1.16でした。低強度グループでは統計的に明確な変化は確認されていません。
知識と行動の面では、どちらの支援グループでも減塩スプーンや低ナトリウム塩を知る人が増えました。家庭の料理で塩を減らす人や、漬物を控える人の割合も高まりました。一方、スプーンを正しく使う人と低ナトリウム塩を使う人の増加がはっきり認められたのは、高強度グループだけでした。1日の推奨食塩量や食品表示の塩分の読み方についての知識には、明確な改善は見られませんでした。
効果は年齢や性別によって大きくは変わりませんでした。ただし高強度の支援では、開始時の高血圧が中等度以上(2度・3度)の人で、より大きな血圧低下が見られました。
この研究が示すこと
研究チームは、尿のナトリウム・カリウム比を目安に見守る減塩支援が、地域の高血圧患者の食塩摂取量と血圧を下げたと結論づけています。とくに、自分で塩の量を記録するなど踏み込んだ支援を加えたグループで効果が大きく、スプーンの正しい使い方のような手間のかかる行動は、より手厚い支援で身につきやすいことがうかがえます。簡単に採れる尿の指標で減塩の成果を確かめながら、支援の強さを工夫する。著者らはこの組み合わせを、既存の公的保健サービスによる高血圧管理を強化する一つの方法として位置づけています。
原著論文の著者・所属:Rui Guo(Yantai Center for Disease Control and Prevention, Yantai 264003, China)、Junli Tang(Department for Chronic and Non-communicable Disease Control and Prevention, Shandong Center for Disease Control and Prevention, Jinan 250014, China)、Danru Liu(Department for Chronic and Non-communicable Disease Control and Prevention, Shandong Center for Disease Control and Prevention, Jinan 250014, China)、Jie Ren(Department for Chronic and Non-communicable Disease Control and Prevention, Shandong Center for Disease Control and Prevention, Jinan 250014, China)、Genzhao Yang(Department for Prevention Health Care, Liangcheng New Village Sub-District Community Health Service Center, Shanghai 200343, China)、Jing Dong(Department for Chronic and Non-communicable Disease Control and Prevention, Shandong Center for Disease Control and Prevention, Jinan 250014, China)、Xiaolei Guo(Shandong Center for Disease Control and Prevention, and Academy of Preventive Medicine, Shandong University, Jinan 250014, China)、Bingyin Zhang(Department for Chronic and Non-communicable Disease Control and Prevention, Shandong Center for Disease Control and Prevention, Jinan 250014, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Rui Guo, Junli Tang, Danru Liu, et al. Effect of Urinary Sodium-to-Potassium Ratio Monitored Intensive Salt Reduction Intervention in Community Hypertensive Patients: Cluster Randomized Controlled Trial. iCirculation 2026-09-22. DOI: 10.53941/icirculation.2026.100011. 原著ライセンス:CC BY.