著者の所属・活動拠点の国は、カナダです。

掲載誌:Mental Health Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の背景と目的

ビタミンDが不足した状態は、骨粗しょう症や免疫機能の低下など、体のさまざまな健康上の問題と関連することが知られています。また論文によると、重い精神疾患では、ビタミンDの補充が一部の症状に良い影響をもたらしうることを示す研究も出てきています。それにもかかわらず、精神科医療ではビタミンDの検査は標準的には行われていないと著者らは指摘しています。

そこで研究チームは、長期入院の病棟で暮らす精神科の患者さんについて、血液中のビタミンDの状態を調べました。ビタミンD3製剤(コレカルシフェロール)を服用している人とそうでない人とでビタミンDの値に差があるか、さらに年齢や性別によって違いがあるかを検討することが目的です。

どのように調べたか

この研究は、ある時点での状態を観察して比較する「横断的観察研究」です。研究者が補充の有無を割り当てたのではなく、すでに服用している人と服用していない人の値を比べています。

対象は、2つの長期入院病棟で病院食をとっている患者さんの中から無作為に選ばれた53人です。参加者の多くは、統合失調症または統合失調感情障害(統合失調症の症状と気分の症状がともに現れる病気)の診断を受けていました。このうち23人がコレカルシフェロールを服用しており、30人は服用していませんでした。

ビタミンDの状態は、体内のビタミンD量の目安として用いられる血清25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)の濃度で評価しました。そのうえで、統計的な手法を用いて、ビタミンDの区分ごとの違いや、補充の有無・年齢・性別の影響とそれらの組み合わせによる違いを分析しています。

主な結果

参加者のビタミンDの状態は、低い人から高い人まで幅広く分布していました。そのうえで、コレカルシフェロールを服用していない患者さんでは、不十分なビタミンD値の人の割合が統計的に有意に高いことが報告されています。

具体的には、服用していない人の80%が、25(OH)D濃度が75 nmol/L未満の「最適とはいえない」水準でした。これに対し、服用している人では83%が最適とされる水準にありました。

さらに、補充の有無、年齢、性別の三つの要因の間に有意な相互作用が見られました。つまり、補充している人とそうでない人の差の大きさは、年齢と性別の組み合わせによって異なっていたということです。論文では、18〜64歳の男性と女性、そして65歳以上の男性で、補充との関連が特に顕著だったとしています。

研究が示すこと

著者らは、この結果が、長期入院中の精神科患者に対してビタミンDの定期的な検査と補充が役立つ可能性を示す根拠の一つになると述べています。また、より多く多様な入院患者を対象に世界各地で行われた研究とも一致する結果だとしています。

病院食をとる長期入院の環境でも、補充をしていない人の多くでビタミンDが十分でない水準にあったことは、精神科医療においてビタミンDの状態に目を向ける意義を示す報告といえます。

原著論文の著者・所属:G. N. Rustom(Queen's University Kingston Ontario Canada)、David Millson(Queen's University Kingston Ontario Canada)、Richard C. Millson(Queen's University Kingston Ontario Canada)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):G. N. Rustom, David Millson, Richard C. Millson. Vitamin D Supplementation for Adult Long‐Term Psychiatric Inpatients. Mental Health Science 2026-10-25. DOI: 10.1002/mhs2.70062. 原著ライセンス:CC BY.