著者の所属・活動拠点の国は、ブラジル、ウルグアイです。

掲載誌:Food Science and Biotechnology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

マテ茶(イェルバ・マテ)は、南米のいくつかの国で、温めたお湯でいれて金属製のストローで飲むシマホン、冷たい水でいれるテレレ、温かい煎じ茶などとして日常的に飲まれています。シマホンでは、成分が熱で分解されるのを避けるため、沸騰より低い温度のお湯が一般的に使われます。近年はヨーロッパ、北米、アジアでも、ティーバッグ、コーヒーマシン用のカプセル、そのまま飲める飲料などの形で広まっています。マテには、ポリフェノール類(フェノール酸やフラボノイド)、カフェインやテオブロミンといったメチルキサンチン類、サポニンなどの成分が含まれていることが知られています。

研究チームは、成分がどれだけ含まれるかだけでなく、飲んだ後の消化の過程で成分がどれだけ残るかにも注目しました。論文では、消化の途中で食品から溶け出し、腸で吸収されうる状態になっている割合を「バイオアクセシビリティ」と呼んでいます。これは、実際に吸収されて体内を巡る割合を指す「バイオアベイラビリティ」とは区別されます。研究チームは、いれ方の違いが消化中の成分の安定性やバイオアクセシビリティにどう影響するかについては、まだ情報が限られていると指摘しています。そのうえで、3つのいれ方を同じ条件のもとで比べることを目的としました。

何をどのように調べたか

試料には、ブラジルの農業研究公社エンブラパが育成した品種「カンボナ4」を使いました。比べたのは、加工していない葉を乾燥・粉砕してお湯に10分浸す通常の浸出(対照)、伝統的なシマホンを模した方法、そしてカプセル式マシンで高い圧力をかけて短時間で抽出する方法の3種類です。どの方法でも、試料の量(2.6グラム)、抽出液の量(55ミリリットル)、湯温(72℃)をそろえました。72℃は、シマホンのような実際の飲み方に近い温度として選ばれています。

研究チームは、抽出で得られた溶け出した成分の量(抽出収率)を測りました。さらに、総フェノール、フラボノイド、タンニン、ルチン、クロロゲン酸、カフェイン、テオブロミン、サポニンの量も調べました。次に、口から胃、十二指腸、回腸へと進む消化を試験管内で再現しました。その後の段階として、大腸菌を加えた簡易的な細菌培養を最長48時間行い、各段階でどれだけの成分と抗酸化活性が残っているかを追跡しました。

主な結果

抽出収率は、通常の浸出が19.67%で最も高く、シマホンを模した方法が16.46%、カプセル抽出が11.43%で最も低い結果でした。研究チームは、カプセル抽出は高圧でも水と茶葉が触れる時間が15秒と短いことが、収率の低さにつながった可能性を挙げています。一方で、収率の高かった通常の浸出が、抗酸化活性や消化中の安定性で一貫して優れていたわけではありませんでした。

消化の過程では、成分によって違いが見られました。シマホンを模した抽出液は、消化の初期段階で総フェノールが多く利用可能な状態にありました。ただし論文は、この方法を全体としては安定性が低めだったと位置づけています。カプセル抽出液は、消化の後期にはフェノールの残り方が少なかった一方で、フラボノイドやタンニンは腸の段階での減少が小さめでした。クロロゲン酸は、消化を通じて比較的高い割合で残りました。

カフェインは消化を通じて高い割合で残りました。テオブロミンも48時間後に初期量のおよそ70%が検出されました。サポニンは、どのいれ方でも48時間後に初期量の75%以上が残っていました。研究チームは、これらの成分はいれ方にかかわらず、今回の試験管内条件では消化中に安定していたと報告しています。

抗酸化活性は、口と胃の段階では95〜99%と高い値でした。しかし腸の段階に入ると大きく下がり、48時間後には21〜26%になりました。最も大きく低下したのは、胃から十二指腸へ移る段階です。この段階では、酸性の環境から酸性の弱い環境へ変わり、胆汁や膵臓の消化酵素が加わります。消化の終わりの時点での抗酸化活性は、タンニン、フラボノイド、総フェノールの量と強い相関を示しました。サポニンとの相関は弱いものでした。

この研究が示すこと

研究チームは、いれ方がマテの抽出量や成分組成だけでなく、消化中の成分の安定性やバイオアクセシビリティにも影響すると結論づけています。抽出された量が多いことは、消化を経た後の抗酸化活性や安定性が高いことを必ずしも意味しませんでした。つまり、いれた直後の成分量だけでは、消化の中での成分のふるまいは予測できないということです。

なお、この研究は試験管内で消化を再現したもので、体内での吸収そのものは測っていません。また後期の段階は大腸菌1種類だけで培養しており、人の腸内細菌の複雑さは再現していません。著者らは、今回の結果を腸内細菌による代謝や、それを介した体への作用の証拠として解釈すべきではないと明記しています。

原著論文の著者・所属:Sandra Maria Schenatto Palavicini(Departamento de Engenharia de Alimentos, Universidade Regional Integrada do Alto Uruguai e das Missões (URI), Erechim, Brazil)、Bruna Maria Saorin Puton(Departamento de Engenharia de Alimentos, Universidade Regional Integrada do Alto Uruguai e das Missões (URI), Erechim, Brazil)、Rosangela Assis Jacques(Instituto de Química, Universidade Federal do Rio Grande do Sul (UFRGS), Porto Alegre, Brazil)、Eunice Valduga(Departamento de Engenharia de Alimentos, Universidade Regional Integrada do Alto Uruguai e das Missões (URI), Erechim, Brazil)、Nelson Bracesco(Universidad de la Republica (UdelaR), Montevideo, Uruguay)、Natalia Paroul(Departamento de Engenharia de Alimentos, Universidade Regional Integrada do Alto Uruguai e das Missões (URI), Erechim, Brazil)、Clarice Steffens(Departamento de Engenharia de Alimentos, Universidade Regional Integrada do Alto Uruguai e das Missões (URI), Erechim, Brazil)、Rogério Luis Cansian(Departamento de Engenharia de Alimentos, Universidade Regional Integrada do Alto Uruguai e das Missões (URI), Erechim, Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sandra Maria Schenatto Palavicini, Bruna Maria Saorin Puton, Rosangela Assis Jacques, et al. Influence of traditional and emerging preparation methods on the gastrointestinal fate and antioxidant activity of yerba mate (Ilex paraguariensis) bioactives. Food Science and Biotechnology 2026-10-26. DOI: 10.1007/s10068-026-02347-x. 原著ライセンス:CC BY.