著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。
掲載誌:Food Research International
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
アセロラはブラジルで広く栽培され、冷凍果肉やジュースなどに加工される熱帯果実です。加工の過程では、果肉の残りや皮、種子などの副産物が大量に出ます。これらにはポリフェノール(フェノール化合物)などの成分が残っていますが、十分に活用されていません。
ポリフェノールを含む抽出物を食品素材として使うには、課題があります。成分が加工や保存の途中で分解しやすく、消化の過程で性質が変わることもあるためです。そこで、成分を別の材料で包み込んで微粒子にする「マイクロカプセル化」という方法が研究されてきました。包む材料には、これまでマルトデキストリンやアラビアガムなどの多糖類が多く使われてきました。一方で、たんぱく質を包む材料にした場合の比較は、アセロラ副産物ではまだ十分に調べられていませんでした。
研究チームはこの点に着目しました。乳清(ホエイ)たんぱく質濃縮物(WPC)、卵白たんぱく質(EWP)、そして両者を半分ずつ混ぜたものの3種類を包む材料として使い、アセロラ副産物抽出物の微粒子を作りました。そのうえで、どのたんぱく質を使うかによって粉末の性質やポリフェノールのふるまいがどう変わるかを比較しています。
何を調べたか
研究チームは、乾燥させて粉砕したアセロラ副産物から、水とエタノールを1対1で混ぜた液で成分を抽出しました。この抽出物にたんぱく質を加え、スプレードライ(噴霧乾燥)で粉末状の微粒子にしています。スプレードライは、液体を霧状にして熱風で一気に乾かす方法です。作った微粒子は、ホエイたんぱく質のみ、卵白たんぱく質のみ、両者を半々で混ぜたものの3種類です。
得られた粉末については、水分量、水への溶けやすさ(溶解性)、湿気の吸いやすさ(吸湿性)、色などを測定しました。あわせて、ポリフェノールがどれだけ粒子の内側に包み込まれたかを示す「封入効率」も調べています。
さらに研究チームは、口、胃、腸での消化を試験管内で再現する国際的な標準手順(INFOGEST法)を用いて模擬消化を行いました。個々のポリフェノールについて、消化前と比べて腸での消化段階の後にどれだけ溶け出た状態で残っているかを調べ、「見かけのバイオアクセシビリティ」として評価しています。消化の前後では抗酸化能も測定しました。また消化前の試料を使い、でんぷんなど炭水化物の分解に関わる酵素であるα-アミラーゼとα-グルコシダーゼの働きを、どの程度抑えるかも試験管内で調べています。
主な結果
ホエイたんぱく質で作った微粒子は、溶解性が87.37%、封入効率が92.30%で、いずれも3種類の中で最も高い値でした。溶解性は、半々の混合で作ったものが71.09%、卵白たんぱく質のみで作ったものが61.02%と続きました。どの粉末も水分量と水分活性は低く、吸湿性も低い値でした。
粉末に含まれるポリフェノールの測定値は、もとの抽出物より大幅に低くなりました。これについて著者らは、たんぱく質が加わって粉末全体の重さが増えたことや、たんぱく質とポリフェノールの結びつきによって成分を取り出しにくくなったことが関係しうると説明しています。そのため、この結果をそのまま成分の分解や損失の証拠と解釈すべきではないとしています。
模擬消化の結果では、使ったたんぱく質によって個々のポリフェノールの回収のされ方や消化中のふるまいが異なりました。見かけのバイオアクセシビリティは、製剤の種類と化合物の種類によって違いが見られました。抗酸化能も消化によって変化し、その変わり方はたんぱく質の種類や測定方法によって異なっていました。
消化前の微粒子の比較では、α-アミラーゼを抑える働きは卵白たんぱく質のみで作ったものが最も高く、53.10%でした。α-グルコシダーゼを抑える働きは、卵白とホエイを半々で混ぜたものが最も高く、90.84%でした。なお著者らは、試験管内で酵素の働きが抑えられたことだけでは、ヒトの食後血糖への効果を示すことにはならないと述べています。
研究から伝わること
この研究は、同じアセロラ副産物抽出物を使っても、包む材料にどのたんぱく質を選ぶかで、粉末の溶けやすさや封入効率が変わることを示しました。ポリフェノールの回収のされ方や、模擬消化の中でのふるまいも、たんぱく質の種類によって異なっていました。
研究チームは、こうした比較が、農産加工の副産物に含まれるポリフェノールをたんぱく質で包んで届ける仕組みについて、新たな知見になるとしています。
原著論文の著者・所属:Jordania Candice Costa Silva(Post-Graduate Program in Bioactive Natural and Synthetic Products, Federal University of Paraíba (UFPB), 58051-900 João Pessoa, Paraíba, Brazil)、Luana Clementino Brito(Experimental Nutrition Laboratory (LANEX), Department of Nutrition, Health Sciences Center, Federal University of Paraíba (UFPB), 58051-900 João Pessoa, Paraíba, Brazil; Postgraduate Program in Food Science and Technology, Federal University of Paraíba (UFPB), 58051-900 João Pessoa, Paraíba, Brazil)、Raíssa Mirella de Moura Melo、Eike Guilherme Torres de Souza、Anaura Lima e Silva(Post-Graduate Program in Bioactive Natural and Synthetic Products, Federal University of Paraíba (UFPB), 58051-900 João Pessoa, Paraíba, Brazil)、Josean Fechine Tavares(Post-Graduate Program in Bioactive Natural and Synthetic Products, Federal University of Paraíba (UFPB), 58051-900 João Pessoa, Paraíba, Brazil)、Marcos dos Santos Lima、Marta Suely Madruga(Department of Food Engineering, Center of Technology, Federal University of Paraíba (UFPB), 58051-900 João Pessoa, Paraíba, Brazil; Postgraduate Program in Food Science and Technology, Federal University of Paraíba (UFPB), 58051-900 João Pessoa, Paraíba, Brazil)、Marciane Magnani(Department of Food Engineering, Center of Technology, Federal University of Paraíba (UFPB), 58051-900 João Pessoa, Paraíba, Brazil; Postgraduate Program in Food Science and Technology, Federal University of Paraíba (UFPB), 58051-900 João Pessoa, Paraíba, Brazil)、Angela Maria Tribuzy de Magalhães Cordeiro(Department of Food Technology , Center for Technology and Regional Development , Federal University of Paraíba (UFPB) , 58058-600 , João Pessoa , Paraíba , Brazil)、Maria Manuela Estevez Pintado(Catholic University of Portugal (UCP), School of Biotechnology/ Centre of Biotechnology and Fine Chemistry (CBQF), Brazil)、Jailane de Souza Aquino、Taliana Kênia Alencar Bezerra(Department of Food Engineering, Center of Technology, Federal University of Paraíba (UFPB), 58051-900 João Pessoa, Paraíba, Brazil; Postgraduate Program in Food Science and Technology, Federal University of Paraíba (UFPB), 58051-900 João Pessoa, Paraíba, Brazil)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jordania Candice Costa Silva, Luana Clementino Brito, Raíssa Mirella de Moura Melo, et al. Effect of protein matrices on spray-dried microparticles containing acerola (Malpighia emarginata) processing by-product extract: Phenolic bioaccessibility and bioactivity during simulated digestion. Food Research International 2026-10-21. DOI: 10.1016/j.foodres.2026.121000. 原著ライセンス:CC BY.