著者の所属・活動拠点の国は、ルクセンブルク、スペインです。

掲載誌:Food Chemistry Molecular Sciences

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

食べ物に含まれるマイクロRNAをめぐる問い

マイクロRNA(miRNA)は、遺伝子の働きの調節に関わる短いRNAです。著者らによると、食事は体の外から入ってくるmiRNAの供給源となり、こうした食事由来のmiRNAは人の体内でも検出されています。ただし、それがどこから来るのか、消化に耐えて残るのか、細胞に取り込まれるのかについては、議論が続いています。

研究チームは、カリフラワーに含まれるmiRNAを対象に調べました。調理や消化に対してどの程度安定なのか、腸の細胞モデルに取り込まれたり細胞から放出されたりするのかを検討しました。あわせて、植物がつくる細胞外小胞の役割も調べています。細胞外小胞とは、細胞から放出される膜に包まれた微小な粒子で、内部にRNAなどを含むことがあります。

調理・消化への安定性と細胞実験

研究チームは、調理として100℃・20分間の加熱を、また消化については、INFOGEST 2.0と呼ばれる標準化された手順(静的モデル)で再現した消化過程を取り上げ、それぞれに対するmiRNAの安定性を調べました。miRNAの量は、特定のRNAを増幅して測定するqPCRという方法で評価しています。

植物の細胞外小胞については、光の散乱から粒子の大きさを調べる動的光散乱法や電子顕微鏡、タンパク質を検出する免疫ブロット法を用いて調べました。細胞への取り込みと放出の検討には、腸の上皮細胞のモデルとして用いられるCaCo-2細胞を使っています。

大半は分解されたが、一部は検出された

論文によると、消化の後、RNAの大部分にあたる99.1%が分解されていました。一方で、細胞外小胞に含まれていたmiRNAのうち、bol-miR172a、bol-miR156a、bol-miR164b、bol-miR1030iの4種類は、消化後も検出可能な状態で残っていました。残っていた割合は0.05〜0.24%でした。

細胞外小胞そのものも消化後に検出されました。ただし消化によって小胞は凝集し、粒子の数は減っていました。

CaCo-2細胞を用いた実験では、ナノカプセル化、濃度、細胞にさらす時間が、miRNAの取り込みと関連しているようにみえました。取り込みは対照と比べて40倍だったと報告されています。一方、細胞からの放出については、データから結論が得られませんでした。

研究が示すこと

著者らは全体として、植物の細胞外小胞と結びついたmiRNAのごく一部が、消化をへても検出可能なまま残ることを示したとまとめています。再現された消化の過程でRNAの大半は分解される一方、細胞外小胞に含まれる一部のmiRNAはわずかながら検出されました。さらに、腸の細胞モデルではmiRNAの取り込みと関連しそうな条件が示されており、食事由来miRNAの行方をめぐる議論に具体的なデータを加えた研究といえます。

原著論文の著者・所属:Miguel Cifuentes-Acebal(Doctoral School in Science and Engineering, University of Luxembourg, Esch-sur-Alzette, Luxembourg; Nutrition and Health Research Group, Department of Precision Health, Luxembourg Institute of Health, Strassen, Luxembourg)、Adria Vilalta(Universitat Rovira I Virgili, Dept. Bioquímica I Biotecnologia, MobioFood Research Group, Tarragona, Spain)、Ximena Terra(Universitat Rovira I Virgili, Dept. Bioquímica I Biotecnologia, MobioFood Research Group, Tarragona, Spain)、Yvan Devaux(Cardiovascular Research Unit, Department of Precision Health, Luxembourg Institute of Health, Strassen, Luxembourg)、Torsten Bohn(Nutrition and Health Research Group, Department of Precision Health, Luxembourg Institute of Health, Strassen, Luxembourg)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Miguel Cifuentes-Acebal, Adria Vilalta, Ximena Terra, et al. A fraction of diet-derived microRNAs present in plant extracellular vesicles remain detectable after gastrointestinal digestion and shows epithelial uptake in a CaCo-2 cell model. Food Chemistry Molecular Sciences 2026-09-18. DOI: 10.1016/j.fochms.2026.100450. 原著ライセンス:CC BY.