著者の所属・活動拠点の国は、ドイツです。

掲載誌:Frontiers in Physiology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

鶏の胸骨から突き出した部分である「竜骨」の損傷は、採卵鶏の動物福祉に関わる問題です。いくつかの危険因子は知られていますが、損傷が起こる原因や過程は十分には解明されていません。

研究チームは、産卵数が中程度の伝統的な2品種と、産卵数の多い採卵用交雑系統2種を比較し、竜骨の損傷と、骨の発達や血液成分などの特徴を調べました。過去の研究を踏まえ、交雑系統の方が伝統的な品種よりも竜骨骨折が多いと予想しました。

何を、どのように調べたか

対象は、伝統的な品種のロードアイランドレッド(RHO)とアメリカンレグホーン(AL)、採卵用交雑系統のローマンブラウンクラシック(LB)とローマンサンディ(LSA)です。研究チームは16週齢から72週齢にかけて、竜骨の状態や関連する身体・生理的指標の変化を追いました。

竜骨はX線画像で調べ、骨折または骨折の修復に伴う骨の盛り上がりが見えるかどうか、骨の曲がりの程度、長さ、骨化の進み具合、X線画像上の骨の濃さを評価しました。骨化とは、軟骨が骨へと置き換わる過程です。併せて、体重、産卵開始時期、産卵数を調べ、超音波で胸の筋肉の厚さや卵巣内の卵胞の状態を確認しました。血液ではカルシウム、リン酸、生殖に関わるホルモンなどを測定しました。

主な報告結果

研究チームは、採卵用交雑系統では伝統的な2品種よりも竜骨骨折が有意に多かったと報告しました。研究期間を通じて骨折が確認された割合は、RHOで0%、ALで9.1%だったのに対し、LBでは90.1%、LSAでは87.5%でした。16週齢ではどの群にも骨折は見られず、24週齢以降は加齢とともに骨折のある割合が増えました。一方、竜骨の曲がりの程度には、4群の間で有意な差はありませんでした。

最初の1年間の平均産卵数は、1羽当たりRHOで165個、ALで142個、LBで318個、LSAで327個でした。初めて卵を産んだ週齢も異なり、LBは18週齢、LSAは19週齢、ALは23週齢、RHOは30週齢でした。伝統的な2品種では、交雑系統よりも月ごとの産卵の変動が大きくなっていました。

竜骨の骨化の進み方には、AL、LB、LSAの間で有意な差がありませんでした。研究チームは、交雑系統がALより早く産卵を始めることと合わせ、産卵開始時には交雑系統の竜骨の骨化がALほど進んでいなかった可能性を示しました。また、産卵期に入ると血漿中の総カルシウムと生殖ホルモンの一つであるエストラジオールは明らかに増えましたが、産卵期のホルモン濃度は、産卵数の大きな違いに対応した明確な群間差を示しませんでした。

この報告が示すこと

著者らは、竜骨の骨折の起こりやすさを考えるうえで、産卵数だけでなく、産卵を始める時期と骨の発達の関係、季節的な産卵休止なども関わる可能性を論じています。今回の比較は、産卵や身体の発達の異なる鶏を調べることで、骨折に関連しうる特徴を捉えた報告といえます。

ただし、産卵開始時そのものには検査をしておらず、その時点の骨化の程度は確定していません。また、著者らは、群ごとに多くの特徴が異なるため、骨折に直接関わる要因と、それに伴って変わる要因を明確に切り分けるのは難しいと述べています。今回見られた差を、一つの特徴だけで説明することはできません。

原著論文の著者・所属:Lisa Hildebrand(Institute of Animal Welfare and Animal Husbandry, Friedrich-Loeffler-Institut)、Saskia Neukirchen(Institute for Animal Science – Farm Animal Ethology, University of Bonn)、Mareike Fellmin(Poultry Research Center, Bruno-Dürigen Institute, Rommerskirchen, Germany)、Julia Mehlhorn(Medical Faculty and University Hospital Düsseldorf, Institute for Anatomy I, Heinrich Heine University Düsseldorf)、Stefanie Petow(Chair of Animal Welfare, Ethology, Animal Hygiene and Animal Husbandry, Department of Veterinary Sciences, Faculty of Veterinary Medicine, Ludwig-Maximilians-University)、Lars Schrader(Institute of Animal Welfare and Animal Husbandry, Friedrich-Loeffler-Institut)、Jenny Stracke(Department of Animal Sciences, Animal Husbandry, University of Göttingen; Institute for Animal Science – Farm Animal Ethology, University of Bonn)、Steffen Weigend(Center for Integrated Breeding Research, University of Goettingen, Göttingen, Lower; Institute of Farm Animal Genetics, Friedrich-Loeffler-Institut)、Beryl Eusemann-Keller(Institute of Animal Hygiene and Veterinary Public Health, Faculty of Veterinary Medicine, Leipzig University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Lisa Hildebrand, Saskia Neukirchen, Mareike Fellmin, et al. Keel bone damage and associated physiological parameters in traditional chicken breeds and hybrid layers. Frontiers in Physiology(出版社:Frontiers Media) 2026-10-20. DOI: 10.3389/fphys.2026.1973493. 原著ライセンス:CC BY.