この研究は、サウジアラビアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:PLOS Global Public Health

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

月経前症候群(PMS)は、月経が始まる前の時期にあらわれるいらだち、疲労感、気分の変動、不安、乳房の張り、腹痛、頭痛などの心身の症状を指し、月経の開始後まもなく治まるのが一般的です。症状の程度には個人差が大きいものの、日常生活や生活の質に影響しうる身近な不調として知られています。著者らによれば、世界の生殖年齢の女性におけるPMSの推定有病率はおよそ48%で、地域によって差があります。

研究チームは、PMSの成り立ちには生物学的・遺伝的・環境的な要因と生活習慣が複雑に関わっているとしたうえで、なかでも食習慣は変えられる可能性のある行動として注目されてきたと述べています。ただし食事とPMSの関係についての先行研究の結果は一致しておらず、またサウジアラビアや湾岸諸国のこれまでの研究の多くは有病率や限られた要因に焦点を当てたものでした。そこで本研究は、サウジアラビア東部州のキング・ファイサル大学に在籍する女子学部生を対象に、食習慣と生活習慣(身体活動、喫煙、BMI、水分摂取)が、自己報告による臨床的に意味のあるPMS症状とどう関連するかを、一つの統計モデルの中でまとめて検討することを目的としました。

調べ方

調査は横断研究として行われ、18〜30歳で月経周期が規則的な女子学部生502人が参加しました。妊娠中の人、糖尿病や子宮筋腫などの慢性疾患の既往がある人、精神疾患の診断を受けている人は除外されました。データは2024年2月から4月にかけて、自記式の紙の質問票によって集められました。横断研究とは、ある一時点で対象者の状態をまとめて調べる方法で、原因と結果の時間的な前後関係までは示せない設計です。

症状の評価には、検証済みの質問票である短縮版月経前評価フォーム(SPAF)が使われました。10項目を6段階で答え、合計点は10〜60点の範囲となり、点数が高いほど症状が重いことを表します。研究チームは先行研究にならって27点以上を「臨床的に意味のある自己報告のPMS症状」を示す目安とし、これは症状の負担を分類するための指標であって、PMSや月経前不快気分障害の臨床診断を下すものではないと説明しています。食事については食物摂取頻度質問票(FFQ)を用い、過去3か月間における果物、野菜、乳製品、飲料、間食、ファストフードなど各食品群の普段の摂取頻度を尋ねました。身長・体重は自己申告で、そこからBMIを算出しています。

解析では、単変量解析でp<0.10だった変数を多変量ロジスティック回帰モデルに投入し、年齢は交絡の可能性を考えてあらかじめ残されました。この手法は、複数の要因を同時に考慮したうえで、それぞれの要因が結果と独立して関連しているかを調べるものです。

主な報告結果

参加者の平均BMIは22.5±5.1 kg/m²で、定期的な運動をしていると答えたのは20.3%、現在喫煙していると答えたのは4.4%でした。週5日以上の朝食摂取は61.8%、カフェイン入り飲料を1日1〜2杯飲む人は80.7%と報告されています。

SPAFの基準点(27点以上)を満たしたのは502人中311人(62.0%)で、著者らはこの割合が先行するメタ分析の世界推定値である約48%より高いと述べ、研究対象集団、文化的背景、評価手段、診断基準、生活習慣の違いを反映している可能性を指摘しています。

多変量解析では、定期的な運動が基準点を満たす確率の低さと関連していました(調整オッズ比0.626)。一方、喫煙(同6.495)と自覚的な月経困難症(同2.393)は、基準点を満たす確率の高さと関連していました。食事に関しては、ハンバーガー、ハードチーズ、オレンジ、ポテトチップス、コーヒー、紅茶の摂取頻度の高さが、それぞれ独立して基準点を満たす確率の高さと関連していました(調整オッズ比は1.106〜1.166)。オリーブオイルは統計的に有意な関連には至りませんでした。

著者らは、個々の食品に関する関連の大きさは小さめであり、喫煙との関連は大きかったものの信頼区間が広いため慎重に解釈すべきだと述べています。また、BMIと症状スコアの間には統計的に有意な正の相関がみられたものの、その大きさは小さく(r=0.111)、統計的な有意性が臨床的に意味のある効果を必ずしも示すわけではないと注意を促しています。なお、1日のカフェイン入り飲料の総杯数は単変量解析では有意な関連を示さなかった一方、多変量モデルではコーヒーと紅茶の摂取頻度が有意でした。著者らはこれを、総量をまとめて測る方法と、個々の飲料の頻度を測る方法という解析アプローチの違いによるものと説明しています。

この研究が伝えること

研究チームは限界として、横断研究であるため因果関係を導けないこと、食事と症状がいずれも自己申告であり思い出しによる偏りを受けうること、栄養状態の評価がBMIに限られたこと、心理的ストレス、睡眠の質、総カロリー摂取量、社会経済的状況といった測定されなかった要因による交絡が残りうることを挙げています。また、食べ方が症状に影響するのか、症状が食べ方を変えるのか、その双方が働いているのかは、この設計からは区別できないと述べています。

そのうえで著者らは、運動・喫煙・いくつかの食品の摂取頻度といった変えうる行動が、自己報告による強めのPMS症状と穏やかに関連していたことを示し、これらがデータの乏しかった東部州という地域に根ざした知見であると位置づけています。あくまで関連の観察にとどまりますが、若い女性の月経に伴う不調を考えるうえで、日々の暮らし方に目を向ける手がかりを与える報告といえます。

著者:Mashael Abdulhalim Huwaikem(King Faisal University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mashael Abdulhalim Huwaikem. Linkages between lifestyle practices, dietary habits, and premenstrual syndrome among college students. PLOS Global Public Health 2026-09-15. DOI: 10.1371/journal.pgph.0007266. 原著ライセンス:CC BY.