著者の所属・活動拠点の国は、スウェーデンです。

掲載誌:Acta Agriculturae Scandinavica Section A – Animal Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の背景と目的

乳牛の飼育は主に牛乳の生産を目的としています。そのため、生まれた雄の子牛や、後継牛として残さない雌の子牛の扱いは、倫理面でも経済面でも課題になることがあると研究チームは述べています。こうした子牛を子牛肉や牛肉の生産用に育てることは、その選択肢の一つです。

この研究では、子牛の育て方の違いが、乳用種の雄子牛の成長、身体活動、と畜後の筋肉に含まれる代謝物、そして肉の加工・品質にかかわる性質(技術的肉質)にどう関係するかを調べました。比較したのは、生後早くに母牛から離して人の手で育てる「人工哺育」と、母牛との接触を保ちながら育てる「母子接触飼育」の二つの方式です。

どのように比べたか

比較した二つの方式は、母牛との接触の有無だけでなく、ミルクの与え方、離乳の進め方、牛舎の環境も異なっていました。つまり、この研究が比べたのは、こうした条件をまとめた飼育システム全体の違いです。

対象は乳用種の雄子牛で、人工哺育が7頭、母子接触飼育が6頭でした。子牛は生後およそ170日(前後7日程度)の時点で安楽死させ、成長の経過や筋肉の成分、肉の性質が調べられました。

主な結果

著者らの報告によると、母子接触飼育の子牛では、筋肉中のクエン酸合成酵素の活性が人工哺育の子牛より高くなっていました。この酵素は、細胞内のミトコンドリアで酸素を使ってエネルギーをつくる代謝にかかわるものです。筋肉中のブドウ糖も母子接触飼育の方が高かった一方、乳酸の量には差がみられませんでした。

肉の性質では、母子接触飼育の子牛の肉は、解凍後の筋肉のpHが高く、赤みの度合いを示す指標が低いという結果でした。そのほかの技術的な肉質の項目には、飼育方式による違いはみられなかったと報告されています。

成長については、体重が増えていく経過は二つの方式で異なっていましたが、と畜前の最終的な体重は両群で同程度でした。

研究が示すこと

この研究は、乳用種の雄子牛を母牛と接触させて育てる方式と、早期に分離して育てる方式とで、成長の道筋や筋肉の代謝にかかわる性質、肉の一部の性質に違いが表れうることを報告しています。一方で、最終的な体重や多くの肉質項目には差がみられませんでした。

比べられたのは母牛との接触、哺乳、離乳、牛舎を含む飼育システム全体であり、各群の頭数も少数です。乳牛の飼育で生まれる子牛をどのように育てるかを考える際に、飼育方式と子牛の成長や肉の性質との関係を示す一つの手がかりとなる報告です。

原著論文の著者・所属:Qasim Mashood(Swedish University of Agricultural Sciences)、Sigrid Agenäs(Swedish University of Agricultural Sciences)、Emma Nilsson(Swedish University of Agricultural Sciences)、Claire S. Wegner(Swedish University of Agricultural Sciences)、Anna Jansson(Swedish University of Agricultural Sciences)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Qasim Mashood, Sigrid Agenäs, Emma Nilsson, et al. Effects of cow-calf contact rearing on growth, activity, post-mortem muscle metabolites and technological meat quality of male dairy calves. Acta Agriculturae Scandinavica Section A – Animal Science 2026-09-23. DOI: 10.1080/09064702.2026.2737082. 原著ライセンス:CC BY.